東京地方裁判所 昭和46年(ワ)6190号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕3 慰藉料 金一〇〇万円
<証拠>によれば、原告真弓は、桐朋学園卒業時に特別の紹介で、無試験で文学座の研究所に入つたこと、その際文学座側からは研究所を卒業したらアメリカの大学を紹介し留学させる約束と、同研究所を卒業後無試験で研究生とするとの保障があつたこと、同人のアメリカ留学の話は事故当時ある程度具体化していたが本件事故発生のため破談となつたこと、原告真弓は前記したようなそれまでの経歴を買われて、右研究所において演技練習の際には主役を演じるべく命ぜられることが多く、さらには演出の助手的手伝いまで行つていたが、事故後は出席率も悪くなつたばかりか、演技中に眩暈をしたり、頭痛や疲労感や情緒不安定のため、長時間の演技や激しい演技は全くできなくなつたこと、このような状態になつた原告真弓は先輩や同僚の助言により、一応俳優としての道を断念し、昭和四六年二月右研究所を中途で退所するにいたつたことが認められ、これに反する証拠はない。
このような、俳優になるべくホステス等をして自活しながらその道を歩んできた原告真弓が、本件事故による受傷のため一応その道を断念せざるを得ず、しかも留学の機会を逸するにいたつたことにより、著るしい精神的苦痛を受けたことは容易に推認できるところであり、そのような事情の他、本件受傷の部位・程度、治療経過および後遺症状等諸般の事情に鑑みると、本件事故により原告真弓の受けた精神的損害を慰藉すべき額は少なくとも金一〇〇万円を超えるものと認めるのが相当である(原告真弓の場合にも、通院実日数は少ないが、それが前記したような事情による場合には、日数の少ないことを重要視すべきでないことは前記原告稔の場合と同一である。)。
(田中康久)