東京地方裁判所 昭和46年(借チ)1013号 決定
〔主文〕1 申立人が別紙目録(一)記載の土地上に同地上にある同目録(二)記載の建物と別に同目録(三)記載の建物を建築することを許可する。
2 申立人は、相手方に対し、金三三万円の支払をせよ。
〔理由〕(申立の要旨)
1 申立人は、亡森居久蔵から別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という)を非堅固建物所有の目的で期間を定めずに賃借し、同地上に同目録(二)記載の建物(以下本件建物という)を所有している。
賃料は昭和四五年一月一日以降一ケ月
2 六四七八円である。賃貸人森居久蔵は昭和三七年二月二一日死亡し、相手方は相続により賃貸人の地位を承継した。
3 申立人は、主文記載の増築をしたいが、相手方の承諾が得られないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。
(決定理由)
1 本件の資料によると、申立の要旨として掲げた前記1、2の事実のほか、本件増築は土地の通常の利用上相当であることが認められ、本件借地契約上増改築の制限に関する特約の存否は不明であるので、本件申立は、これを許可すべきである。
2 附随処分
鑑定委員会は、本件増築により相手方が本件土地の返還を求めることが困難となるので、申立人に財産上の給付を命すべきであるとし、その額を期間満了時の更新料の現価に増改築承諾料を加えたものとする。本件増築により借地権の存続が強化され、本件土地所有権はそれだけ制限を受けることになるが、このことを財産上の給付の根拠とするのは、理由にならない。
公共の福祉の観点から土地所有権が制限を受け、これによる地主の損失を補償するにはその旨の明文が必要であり、借地法にはかかる明文がないからである。また、更新料の授受は当事者の自治に委ねるべきもので、賃貸人においてこれを請求しうる法律上の根拠はないので、更新料を給付額の算定に援用するのは失当である。
本件増築により、本件土地の利用価値が増加することになるので、右価値の増加分こそ財産上の給付の根拠であると考える。右価値の増加分をいかに金銭的に評価するかは困難な問題であるが、借地権価格を含む土地価格は、有効需要の存在、土地の相対的稀少性及び土地の効用の三者の相互関係によつて決定されるといわれているが、右三者のうち本件増築により影響を受けるのは土地の効用であるので、財産上の給付は土地の効用に着目すべきである。効用の増加は値地権価格に反映し、その価格を増大せしめるのであつたから、本件土地の利用加値の増加は、本件借地権価格の増加となつて現われてくる。当裁判所は、従来居住用建物の全面改築の場合の価値の増加分を更地価格の三%前後としているのであるが、増築の場合は、従来の建物がこれから先も存在し、いずれは改築されるのであり、その際承諾料を支払うか、財産上の給付を命ぜられるのであるから、増築の場合の財産上の給付は全面改築の場合より低額であつて然るべきである。本件建物の床面積は九坪であり、増築建物の床面積は二〇坪であつたので、給付額は、鑑定委員会の評価による本件土地の更地価格(3.3平方米二三万円)の三%に二九分の二〇を乗じた額三三万円(万円未満四捨五入)を相当とする。
(小山俊彦)
目録
(一) 東京都杉並区和泉一丁目一〇七番一
宅地 2463.80平方米
(七四五坪三合)
のうち 261.12平方米
(七八坪九合九勺)
(二) 右地上所在
家屋番号四九八番一三
木造古亜鉛葺平家建居宅
床面積 23.14平方米(七坪)
現況 29.75平方米(九坪)
(三) 木造二階建居宅
床面積 一階 39.66平方米(一二坪)
二階 26.44平方米(八坪)