東京地方裁判所 昭和46年(借チ)1015号 決定
〔主文〕申立人が本裁判確定の日の翌日から三か月以内に相手方に対し金九五、〇〇〇円を支払うことを条件に、別紙目録(二)の2記載の改築を許可する。前項の金員が支払われた場合、本件賃貸借の賃料を右金員支払の日の属する月の翌月分から一か月金九一〇円(3.3平方米当り金七〇円)に変更する。
〔理由〕一 本件申立の要旨
(一) 申立人は、昭和三六年五月一〇日相手方から別紙目録(一)の1記載の土地(以下「本件土地」という。)を非堅固建物所有の目的、期間昭和五六年五月一〇日までの約で賃借し、その現賃貸借条件は、同目録(一)記載のとおりである。
(二) 申立人は、本件土地のうえに同目録(二)1記載の建物を所有しており、これを同目録(二)の2のとおり改築すべく計画中であるが、本件賃貸借には増改築制限の特約が存し、右改築につき相手方の承諾が得られないので右承諾に代わる許可の裁判を求める。
二 当裁判所の判断
(一) 本件で取調べた資料によれば、前記一の(一)の事実のほか、本件賃貸借契約には増改築制限の特約が存することを認めることができる。相手方は、右賃貸借は、西井幸子に対する無断譲渡により解除されたと主張し、前記資料によれば、本件土地上の現存建物は、申立人が賃借した時から西井幸子名義で登記され、申立人が本件土地の賃料を支払つているが、同人は、申立人と同居している妻であつて、現存建物を買受けた際資金の一部を同人の母が出した等の関係上同人名義で所有権移転登記がなされたものであつて、土地の使用関係は申立人が使用するのと全くかわらない関係が賃借以来続けられてきたことが認められ、右事実によれば、本件土地上の建物が西井幸子名義になつていることが同人への土地の転貸にあたるとしても、これをもつて、賃貸人に対する信頼関係を破る背信的行為とはいえず、したがつて、これを理由とする契約解除は理由がなく、申立人は、本件土地の適法な賃借人である。
しかして申立人の改築計画は、土地の利用上、法令の適用上相当である。相手方は、本件土地は、東京都建築安全条例三条により、適法な改築ができず、また申立人の改築予定建物は、堅固建物に該当すると主張するが、前記資料によれば、本件改築計画については、建築物の配置、用途および構造により安全上支障がないとして、建築主事による適法な建築確認が与えられており、当裁判所もこれに従うを相当とする。また、改築予定建物の設計図をみるに、右建物の主要材質は、いわゆる軽量鉄骨に属し、非堅固建物に該当するものとみられる。相手方の主張は理由がない。他に本件改築を不当とする事由はない。
(二) 附随の処分について検討する。
鑑定委員会は、申立人に対し金九五、〇〇〇円(更地価格の約4.68%にあたる)の支払を命じ、地代を一か月3.3平方米当り金七〇円に改訂するのが相当であるとしている。
ところで、増改築許可の裁判により、建物の朽廃時期を延長させ、建物買取価額の増額等による更新拒絶権の制限等により賃貸人に借地返還への期待的利益を減少させる不利益を与え、借地人にこれに応じた利益を与えるのであるから、右利害を調整するため申立人に給付金の支払を命ずべく、本件における現存建物の状況、改築後の建物の耐用年数および後記改訂賃料等を考慮し、申立人に支払を命ずる給付金につき鑑定委員会の意見を相当と認める。
賃料については、鑑定委員会の意見を相当と認める。また、当裁判所は、本件改築許可により当事者の意思の擬制ないし推定による借地法七条の期間更新の効力は生じないが、本件において、期間満了時における相手方の更新拒絶権を奪うのは相当でないので期間についての附随処分はしない。 (筧康生)
目録(一)
(借地条件)
1 目的土地 東京都北区岩淵町一丁目五一〇番一七
宅地 89.94平方米(26.3坪)のうち、42.97平方米(13坪)
2 目的 非堅固建物所有
3 成立 昭和三六年五月一〇日
4 期間 昭和五六年五月一〇日まで
5 現賃料 一か月金七一五円(3.3平方米当り金五五円)
目録(二)
1 現存建物
家屋番号 一九八番一九
木造瓦葺平家建 居宅
24.79平方米(7.50坪)
現況
28.09平方米(8.50坪)
2 改築計画
1の建物をとり毀したあとに、
軽量鉄骨造り瓦葺二階建居宅(主要鉄骨の材厚3.2粍以内)一・二階とも各23.20平方米を建築する。