東京地方裁判所 昭和46年(借チ)1063号 決定
〔主文〕申立人が、本裁判確定の日の翌日から三か月以内に相手方に対し金三七四、〇〇〇円を支払うことを条件に別紙目録(二)の2記載の改築を許可する。
前項の金員が支払われた場合、本件賃貸借の賃料を、右金員支払の日の属する月の翌月から一か月金五、六一六円(3.3平方米当り金一五〇円)に変更する。
〔理由〕一 本件申立の要旨
(一) 松村簡一は、昭和二四年一〇月一五日相手方から別紙目録(一)の1記載の土地(以下「本件土地」という。)を非堅固建物所有の目的、期間三〇年の約で賃借し、その後申立人が右賃借人たる地位を承継し、本件土地賃貸借の現借地条件は、同目録(一)記載のとおりである。
(二) 申立人は、本件土地のうえに、同目録(二)の1の建物を所有しており、これを同目録(二)の(2)のとおり改築すべく計画中であるが、相手方は、本件土地賃貸借には、増改築禁止の特約があると主張し、右改築の承諾料の合意ができないので、右承諾に代わる許可の裁判を求める。
二 当裁判所の判断
(一) 本件で取調べた資料によれば前記一の(一)の事実のほか、本件賃貸借契約には、増改築制限の特約の存否は不明であるが相手方はその存在を主張し本件改築につき争いが存する事実を認めることができ、右事実によれば、本件申立はその利益があり適法である。しかして、本件改築計画は、土地の利用上相当であり、法令の制限上適法である。他に本件改築を不当とする事由はない。そこで、本件改築は後記の条件の下に許可するのが相当である。
(二) 附随処分について判断する。
鑑定委員会は、本件改築許可に伴い、申立人に支払を命ずる納付金は、借地期間を二〇年に延長する場合は、金七八三、九三〇円(借地権価格の一〇%。更地価格の七%)、期間を延長しない場合は、金三七四、四〇〇円を相当とし、賃料を3.3平方米当り金二二五円に改訂するのが相当である、としている。
当裁判所も、本件改築許可に伴い、当事者間の利害を調整するため申立人に給付金の支払を命ずるのを相当とする。そして、当裁判所は、改築許可の裁判により、当事者の意思の推定ないしは擬制にもとづく借地法七条の適用はなく、附随処分により期間延長の裁判をしない以上、期間延長の効力を生じないと解するが、本件において、申立人は期間の延長を希望せず、本件賃貸借契約の残存期間を考慮すると、申立人の希望に反して期間を延長する必要はなく、期間を延長しない場合の給付金として、鑑定委員会は、近隣の慣行を基準にし、なお本件の事情を考慮し、3.3平方米当り金一万円(更地価格の約3.3%にあたる。)を支払わせるべきであるとし、当裁判所も右意見を相当と認める(ただし千未満切捨て)。
賃料につき、鑑定委員会は、年額底地価格の三%に値上げすべきものとしており、当裁判所も、本件改築許可に伴い、土地の最有効使用の程度の上昇分の一部を賃貸人に配分するため、従前賃料を相当増額するのはやむをえないが、前記給付金を慣行的比率を基準に決定する以上、増額賃料も同様な基準によるべきであり、鑑定委員会の前記増額賃料は、本件土地が居住用木造建物所有に使用されていることを考慮すると、都内の賃料水準に比し、やや高率にすぎぎるので、右の観点からこれを修正し、割合方式により求めた底地価格の年二%にあたる3.3平方米当り一か月金一五〇円をもつて改定賃料と定める。(筧康生)
目録(一)
(借地契約)
1 目的土地 東京都荒川区西尾久六丁目三一六番二
宅地 589.25平方米(178.25坪)のうち、123.76平方米(37.44坪)
2 目的 非堅固建物所有
3 成立 昭和二四年一〇月一五日
4 期間 昭和五四年一〇月一四日まで
5 現賃料 一か月金三、五一九円(3.3平方米当り金九四円)
目録(二)
1 現存建物
東京都荒川区西尾久六丁目三一六番地
家屋番号 三一六番二
木造スレート瓦葺平家建居宅
38.84平方米(11.75坪)
2 改築計画
1の建物を取りこわし、
木造瓦葺モルタル塗り二階建居宅
一階 45.54平方米
二階 37.26平方米
を建築する。