東京地方裁判所 昭和46年(借チ)1073号 決定
〔主文〕1 申立人が別紙目録(二)記載の建物を同目録(三)記載の建物に改築することを許可する。
2 申立人は、相手方らに対し、金二四万円の支払をせよ。
3 別紙目録(一)記載の土地に関する申立人・相手方ら間の賃貸借契約の賃料をこの裁判確定の日の属する月の翌月分から3.3平方米当り一ケ月一七〇円に改める。
〔理由〕2附随処分
鑑定委員会は、本件改築を許可する場合は、借地期間を二〇年延長し、借地権価格の九%にあたる更地料相当額を財産上の給付とするのが相当であるとするが、借地期間を延長することにも、財産上の給付の根拠を更地料に求めることにも賛成することができない。借地期間を延長することは、借地法七条所定の賃貸人の異議権を奪うことになり、賃貸人に対する不利益処分であるが、増改築制限に関する特約のない場合に賃貸人が右異議権を有することと対比して権衝を失するばかりでなく、改築許可により借地法の所期する土地の合理的利用の目的が達せられた上に賃貸人に右の如き不利益を加えることは、その必要がないからである。また、更新料を財産上の給付に援用することの当否であるが、更新料の合理的根拠が明確でないばかりでなく、借地人としては、更新料を支払つて合意更新するか、更新料を支払わない法定更新を選ぶかの自由を有し、第三者から更新料を支払えと言える筋合のものではなく、更新料の授受は当事者の意思に委せるべきであるので、更新料を財産上の給付の根拠とするのは相当でない。本件改築により、借地上の建物を利用することによる申立人の収益は増加する。
本件の場合、申立人は、借地上の建物を自己の居住用に用いるので、現実の収益はないが、建物それ自体は収益を生み得る物であるので、帰属家賃というものが考えられ、その意味において収益の増加をもたらす。この収益の増加こそが土地の合理的利用の結果であるので、財産上の給付は、収益増に着目して考えるべきである。収益増は、一面において効用増となり、これが借地権価格の上昇となつて反映するが、他面において賃料増額の要因となる。
従つて、財産上の給付は、改築による借地権価格の増加分を相当とするが、不動産鑑定評価の現状においては、右増加分を求めることは困難であるように見受けられるので、当裁判所としては、裁判の公平の観点から一応の規準をつくつている。それによると、財産上の給付は、更地価格(鑑定委員会の意見により3.3平方米当り五〇万円とする)の三%にあたる二四万円を相当とする。
賃料は、鑑定委員会の意見を参考として3.3平方米当り一ケ月一七〇円に改めるのが相当である。 (小山俊彦)
目録<略>