東京地方裁判所 昭和46年(借チ)2001号 決定
〔主文〕申立人が、本裁判確定の日から三月以内に相手方に金四二万円を支払うことを条件に、東京都世田谷区北沢五丁目一六番一六号安達タマに別紙目録記載の土地賃借権を譲渡することを許可する。
〔理由〕(申立の要旨)
1 申立人は、相手方から別紙目録2記載の土地(以下本件土地という)を非堅固建物所有の目的で賃借中にして、同地上に家屋番号八五八番木造瓦葺平家建居宅床面積一一坪八合三勺(以下本件建物という)を所有している。
2 申立人は、本件建物及び本件土地賃借権を主文掲記の安達タマに譲渡したいが、相手方の承諾が得られないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。
(決定理由)
1 本件の資料によると、申立の要旨として掲げた前記1の事実のほか、本件借地契約の存続期間及び賃料は別紙目録記載のとおりであること、申立人は本件建物を譲受予定者安達タマに賃貸中であること、同人が本件借地権を譲り受けても相手方の不利になるおそれがないことが認められるので、本件申立は、これを許可するのが相当である。
2 附随処分
鑑定委員会は、申立人に対し、財産上の給付として、残存期間分の差額賃料(適正賃料と契約賃料との差額)を支払わしめるのが相当であるとするが、借地権譲渡の場合の財産上の給付は、いわゆる名義書替料に求めるのが通例であり、従来の鑑定委員会の意見によれば、東京都内における慣行的名義書替料は借地権価格の一〇%ないし一五%とするのが圧倒的に多い。本件でも財産上の給付を通例に従つて名義書替料に求めることとする。借地法の改正により借地人は賃貸人の意思に反しても借地権を譲渡することができるようになり、それだけ借地権は強化されたわけであるので、改正後の名義書替料は改正前の名義書替料より下廻つて然るべきものと考えられ、前記慣行名義書替料は改正前からのものであるので、財産上の給付はその最低限をとり、本件借地権価格(鑑定委員会の評価により3.3平方米当り一三万二、〇〇〇円とする)の約一〇%に当る四二万円とする。
申立人は、相手方から従前本件土地を含む七一坪二勺を賃借していたところ、右のうち本件土地を除く三九坪一合三勺の借地権を昭和四五年八月他に譲渡したが、その際、相手方に右七一坪二勺全部の借地権譲渡承諾料として一五〇万円支払つたと主張し、或は右一五〇万円は本件土地を除く部分の借地権譲渡の承諾料であるとしても、右承諾料は高額であるので、本件財産上の給付を定めるにあたり考慮すべきであると主張する。本件の資料によると、申立人が従前相手方から本件土地を含む七一坪二勺を賃借し、昭和四五年八月右借地のうち本件土地を除く三九坪一合三勺の借地権を他に譲渡し、その際、相手方に譲渡承諾料一五〇万円を支払つた事実は認められるが、右承諾料が本件土地賃借権の譲渡をも含めた趣旨であることは、これを認める証拠がない。右一五〇万円は、本件土地を除く三九坪一合三勺の借地権の譲渡承諾料としては、特別の事情のないかぎり高額であると思われるが相手方に対し右承諾料の全部ないし一部の返還を求める請求権があれば格別、右の如き請求権があることは認められないので、高額の点を考慮して本件において申立人に支払を命ずべき正当の給付額を減ずることは、返還請求権を命ずるのと同じ結果となり、このことは、承諾料を定めた当事者の合意を裁判所が故なく変更することであり、その許されないことは論をまたない。(小山俊彦)
目録
土地賃借権
1 当事者
賃貸人 相手方
賃借人 申立人
2 借地権の目的たる土地
東京都世田谷区北沢五丁目七九七番一
宅地 1298.44平方米(392坪7合8勺)
のうち 105.42平方米(31坪8合9勺)
3 使用目的
非堅固建物所有
4 存続期間
昭和五四年五月四日まで
5 賃料
昭和四五年七月一日以降3.3平方米当り七五円