東京地方裁判所 昭和46年(借チ)2044号・昭46年(借チ)2031号 決定
〔主文〕1 甲事件相手方(乙事件申立人)から甲事件申立人(乙事件相手方)に対し別紙目録(一)記載の土地賃借権および同目録(二)記載の建物を金一、七七三、〇〇〇円で譲渡することを命ずる。
2 甲事件相手方(乙事件申立人)は、前項の金員の支払を受けるのと引換えに、甲事件申立人(乙事件相手方)に対し、右建物を明渡し、かつ同建物の所有権移転登記手続をせよ。
3 甲事件申立人(乙事件相手方)は、前項記載の建物の明渡および所有権移転登記手続と引換えに、甲事件相手方(乙事件申立人)に対し金一、七七三、〇〇〇円の支払をせよ。
〔理由〕一 甲事件相手方(乙事件申立人。以下「相手方」という。)から別紙目録(一)の1記載の土地(以下「本件土地」という。)にかかる同目録(一)記載の土地賃借権譲渡許可の申立がなされたところ、賃貸人である甲事件申立人(乙事件相手方。以下「申立人」という。)から本件土地賃借権および右土地上に存する別紙目録(二)記載の建物(以下「本件建物」という。)の譲受けの申立がなされた。右各申立はいずれも適法であるので、借地法九条の二第三項により、右建物および土地賃借権の対価を定めて譲渡を命ずる。
(相手方は、本件賃貸借契約は、昭和四六年二月合意解除された旨主張するが、本件資料によれば、申立人相手方間において同月ごろから本件土地を返還する話合いがなされたが、建物および借地権の買収価額につき合意に至らなかつたことは認めうるが、右事実をこえて、合意解除がなされたと認めるに足る資料はない。)
二 譲渡の対価につき検討する。
鑑定委員会の意見の要旨は、「賃貸人が譲受ける借地権および建物の対価を金一、九七三、八八〇円を相当とする。すなわち、本件土地の建付地価格を二、七一九、八三〇円(一平方米当り金五三、八九〇円)と評価し、標準的借地権割合をその七〇%相当とするが、五年後に期限が来ることおよび更新料支払いの慣行を考慮し、更新料を建付地価格の五%とし、経過年数に応じ二〇分の一五を乗じ、更に年利六%期間五年の複利現価率(0.9705)を乗じると、本件借地権価格は、建付地価格の66.36%にあたる金一、八〇四、八八〇円とする。建物の対価は金一六九、〇〇〇円を相当とする。」というにある。
まず、賃貸人の譲受ける本件土地賃借権の対価について判断する。
当裁判所も本件土地の価格を、そのうえに建物が存することをも考慮し、金二、七一九、八三〇円(一平方米当り金五三、八九〇円)とし、近隣の借地権割合を、その七〇%とする鑑定委員会の意見を相当と認める。鑑定委員会は、本件土地の借地権価格を、右慣行的借地権割合から期間により減額する方法によつて求めている。当裁判所も、借地権価格は、期間の経過に応じ比例的に減額すべきものではないが、期間の満了に近い時点においては更新の危険に応じて減額すべきものであり、本件資料によれば、本件賃借権が五年後に到来する期間満了時に申立人において更新を拒絶する正当事由の存否を予測することはできないので、鑑定委員会の認める本件土地附近の慣行的更新料(土地価格の五%)の現価(年利六%、期間五年の複利現価率0.74726)である前記土地価格の3.7363%を減額するものと認め、結局本件土地賃借権の客観的価格は前記土地価格の66.2637%となる。
ところで、右借地権価格は、本件賃借権を第三者に譲渡する際の交換価格であるが、賃貸人が譲受ける借地権価格は、右の第三者への交換価格と当然に一致するものではなく、右交換価格を賃貸人に対しても主張できるか否かは、当該具体的な賃貸借関係による。けだし、賃貸人の譲受価格は、賃借人の賃貸人に対する権利義務関係全体の経済的評価であつて、その関係は、地代の支払を中心とする現契約条件のみでなく、権利金の支払等の賃貸借の経過など、第三者に対する関係とは異なる人的関係をも広く包含したものだからである。そして、借地権譲渡に伴い賃貸人に支払われる名義書換料につき慣行的割合が存する地域(東京地方では借地権価格の一〇%ないし一五%)にあつては、右割合は、第三者への交換価格と賃貸人への譲渡価格との平均的調整を示すものとして、賃貸人の譲受の対価を定めるにつき参考とされるべきである。これを本件についてみるに、本件賃貸借の経緯にてらし、なお鑑定委員会の意見も参考とし、賃貸人が譲受ける借地権の対価を前記第三者への交換価額から一一%を減じ金一、六〇四、〇〇〇円(千円未満切捨て)と定めるのが相当である。
建物価格については、鑑定委員会の意見に従い金一六九、〇〇〇円と定める。
そこで、申立人が譲受ける本件土地賃借権および建物の対価を金一、七七三、〇〇〇円とし、なお、本件建物には、鴇田洋俊が占有中であるが、右は相手方の留守番としての従たる占有であるので、相手方に本件建物の明渡義務を命じ借地法九条の二第三項により主文のとおり決定する。(筧康生)
目録 (一)
(賃借権の内容)
1 目的土地 東京都北区西ヶ原三丁目四四番五
宅地 50.47平方米(15.27坪)
2 賃貸人 申立人
3 賃借人 相手方
4 目的 木造建物所有
5 期間 昭和三七年一〇月一日から二〇か年
6 地代 一か月金一、〇六八円
目録 (二)
(建物)
東京都北区西ヶ原三丁目四四番地七
家屋番号 四四番八
木造瓦葺平家建 居宅
25.88平方米(7.83坪)