東京地方裁判所 昭和46年(特わ)239号 判決 1971年12月02日
被告人
本籍 東京都渋谷区本町一丁目四番地の三六
住居
同都同区本町一丁目五番七号
職業
医師
玉井芳幸
大正三年一一月一四日生
被告事件
所得税法違反
出席検察官
宮本喜光
主文
1 被告人を罰金八〇〇万円に処する。
2 右罰金を完納することができないときは四万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は東京都渋谷区本町一丁目四番一号において玉井病院の名称で内科、外科、産婦人科等の診療科目を有する病院を経営しているものであるが、自己の所得税を免れる目的で、診療収入の一部を除外して架空名義の預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ
第一、昭和四二年分の実際課税総所得金額が二六、〇二一、〇〇〇円あつたのにかかわらず、昭和四三年三月一五日同都渋谷区宇田川町一丁目三番地所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、同年分の課税総所得金額が八、七四八、〇〇〇円で、これに対する所得税額が一、五七三、三〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額一一、三一一、九〇〇円と右申告税額との差額九、七三八、六〇〇円を免れ
第二、昭和四三年分の実際課税総所得金額が三六、四〇五、〇〇〇円あつたのにかかわらず、昭和四四年三月一五日前記所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、同年分の課税総所得金額が一一、一一九、〇〇〇円で、これに対する所得税額が二、六九七、四〇〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額一七、七四五、二〇〇円と右申告税額との差額一五、〇四七、八〇〇円を免れ
たものである。(なお、右各所得の内容は別紙一、二の各修正損益計算書のとおりであり、税額の計算は別紙三の税額計算書のとおりである。
(証拠の標目)(かつこ内は立証事項であり、数字は別紙一、二の各修正損益計算書の各勘定科目の番号である。)
一、次の者の検察官に対する供述調書
1 伊東英雄(全般、特に一の1 9 10 11 15 20 21、二の1 8 10 11 16 21 22)
2 新井省策(全般)
3 玉井幸一(全般)
一、次の者に対する大蔵事務官の質問てん末書
1 伊東英雄(全般、特に一の1、二の1)
2 玉井みや子(一の28、二の29)
3 中川英成(昭和四五年二月一四日付)(一の3 5、二の3 5)
一、次の者の作成した上申書
1 玉井病院事務次長伊東英雄(家事関連費と病院経費に計上した明細について)(一の9 19 12、二の9 17 23)
2 右同人(入院、外来患者収入の内自費診療収入及び保検診療自己負担収入の期末未収金について)(一の1、二の1)
3 玉井病院事務長新井省策(従業員食事代収入について)(一の2、二の2)
4 玉井病院薬局長玉井幸一(市外電話、電報料収入及びガス代収入について)(1の2、二の2)
5 株式会社スミレ商会代表取締役鈴木清視(玉井病院との取引について)(一の2、二の2)
6 武村商事株式会社東京支店長洞ケ瀬勝正(玉井病院からの預り商品について)(一の3 5、二の3 5)
7 クラヤ薬品株式会社棚田幸久(玉井病院預り商品の件)(一の5、二の5)
8 東京医薬品株式会社経理部次長鈴木実(玉井病院との取引内容について)(一の3 5、二の3 5)
9 株式会社富士銀行新宿支店副長隅田一男(預金取引について)(一の32、二の33)
一、次の者の作成した玉井病院との取引についてと題する書面
1 キリンレモスサービス株式会社業務係吉田茂男(一の2、二の2)
2 田中商事株式会社代表取締役田中喜(一の2、二の2)
一、検察事務官の作成した捜査報告書(一の2、二の2)
一、大蔵事務官の作成した次の書面
1 仕入調査書(一の4、二の4)
2 簿外経費について(一の11 15 20、二の11 16 22 25)
3 簿外建物の減価償却について(一の16、二の24)
4 会費の否認について(一の21、二の22)
5 公表未払金明細表について(一の22、二の17)
6 渋谷税務署所在確認書(全般)
一、渋谷税務署長松岡勝二郎の作成した証明書(一の27 28、二の27 28 29)
一、押収してある次の証拠物(昭和四六年押九三五号)(いずれも全般)
1 総勘定元帳二綴(符号1 2)
2 所得税確定申告書二通(同18)
3 青色申告者書類綴二綴(同19)
一、被告人に対する大蔵事務官の昭和四五年六月二六日付質問てん末書(一の2、二の2)
一、被告人の検察官に対する供述調書および当公判廷における供述(全般)
(法令の適用)
各事実につき所得税法二三八条(いずれも罰金刑選択)。刑法四五条前段、四八条二項。
刑法一八条(主文2)。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 松本昭徳)
別紙一 修正損益計算書
玉井芳幸
自昭和42年1月1日
至昭和42年12月31日
<省略>
<省略>
別紙二 修正損益計算書
玉井芳幸
自昭和43年1月1日
至昭和43年12月31日
<省略>
<省略>
別紙三 税額計算書
<省略>