東京地方裁判所 昭和47年(む)640号・昭47年(む)641号・昭47年(む)642号 決定
被疑者 丸山淳太郎 外二名
決 定
(被疑者氏名略)
右の者らに対する強盗致傷被疑事件につき、昭和四七年七月二五日東京地方裁判所裁判官がした各勾留の裁判に対し、同年八月一日、被疑者丸山淳太郎については弁護人木村壮、同長谷川幸雄、同庄司宏から、被疑者藤本芳樹については弁護人木村壮、同長谷川幸雄から、被疑者稲辺教夫については弁護人木村壮、同太田惺、同長谷川幸雄から、それぞれ準抗告の申し立てがあつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。
主文
本件各準抗告を棄却する。
理由
本件各準抗告は、いずれも「原裁判を取り消す。本件勾留請求を却下する。」との裁判を求めるというものであり、その理由の要旨は、「本件被疑者らに対する逮捕手続には重大な違法がある。すなわち、警察官らは、日比谷児童公園内の集会参加者を包囲し、被害者に首実験をさせ、被害者が本件被疑者らを犯人として指示するや、任意同行の名の下にその身柄を拘束し、護送車等で丸の内警察署に連行留置しているのであつて、右は実質的な逮捕行為にほかならず、しかも本件被疑者らには、罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がなく、刑事訴訟法二一〇条所定の理由の告知もなく、かつ、その後直ちに裁判官の逮捕状を求める手続もなされていないのであるから、右は違法な逮捕手続であり、これを前提とする本件各勾留もまた違法である。」というのである。
一件記録および本件申立書添付の諸資料によると、昭和四七年七月二二日午後二時五五分ころ、日比谷公園内児童遊園において行なわれた狭山裁判紛砕総決起集会を見ていた佐々木昭雄が、右集会参加者と思われる十数名の者から暴行を加えられたうえ、現金八〇〇〇円在中の小銭入れなどを奪われ、全治七日間の傷害を負わせられるという事件が発生したこと、右事件の通報により午後三時一〇分ころ、警視庁第九機動隊員らが、右事件の犯人らがまじつていると思われる右集会参加者約四〇〇名を包囲する態勢で配置につき右集会参加者に対し、前記強盗致傷事件の発生を告げて説得を行ない、あるいは阻止線をはるなどして、これを右遊園内にとどまらせたこと、同三時三六分ころから機動隊員が両側に立ち並ぶ間を集会参加者に通らせて検問を行なうとともに、被害者をその場に立ち合わせて、犯人と思われる者を指示させ、その指示により本件被疑者らを含む一三名の者を、検問が終つた同四時三〇分ころまでの間その場にとどまらせたこと、その後、これを車に乗せて丸の内警察署に同行し同署において再度被害者が犯人の確認を行ない本件被疑者らがいずれも同五時ころから同五時一五分ころまでの間に、右強盗致傷被疑事件の被疑者として逮捕されたこと、その後同九時一五分東京簡易裁判所裁判官に対し逮捕状の請求がなされ、そのころ右裁判官によつて逮捕状が発せられ、同一〇時四〇分までの間に、これが本件被疑者に示されたことが認められる。
右事実関係によると、本件被疑者らは、前記遊園内において被害者から犯人と指示されて、その場にとどめられた時にすでに実質的に逮捕されていたのではないかという疑いがある。しかしながら、かりにそうであつたとしても、本件被疑者らには右時点において、本件被疑事実を犯したことを疑うに足りる充分な理由および緊急逮捕の必要性があつたものであり、しかもそれ以前に被疑事実の内容が告げられ、かつ、右時点からまだあまり時間を経ていない時点で刑事訴訟法二一〇条所定の理由の告知および裁判官の逮捕状を求める手続がなされているのであるから、右逮捕手続に存する瑕疵は、本件事案の性質、態様、被疑者らと周囲の集合参加者との関係などの諸事情にかんがみ、本件各勾留を違法ならしめるほど重大なものとはいえない。
以上のとおりであつて、本件各準抗告はいずれも理由がなく原裁判は相当であると認められるので刑事訴訟法四三二条、四二六条一項により主文のとおり決定する。