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東京地方裁判所 昭和47年(ワ)159号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

三慰藉料請求について

1 被告渡辺がした本件工事による震動及び地盤掘削が一因となつて原告宅の土台が沈下し、その結果原告宅が若干傾斜し、各処に二、2記載の被害<編注――原告宅は昭和五三年五月の時点において壁がひび割れ、玄関の戸の建て付けが悪くなつており、鴨居が下つて、勝手口の戸及び天窓が開かない状態となつていることが認められる。>が生じたことはさきに認定したとおりである。

また<書証>の記載によれば、本件工事の施行の過程において被告渡辺の被用者が原告宅の表戸や二階のガラス戸或いは屋根や庇を一再ならず損傷しながら、直ちに修復しようとせず、原告の妻ナヲの再三の催促によつてようやく修復するに至つたことが認められる。

2 なお、被告渡辺が本件工事において被告土地を掘削した際掘り上げた土を通路部分に積み上げたことは当事者間に争いないが、<書証>の記載によると右は昭和四五年一月二七日頃のことであつたが、原告の妻ナヲの抗議で同月二八日被告渡辺においてこれを取り除いたことが認められる。また、<証拠>には、同年三月五日被告渡辺が原告宅の前にビル建築用の足場を丸太で構築したので、用材の下をくぐつて通らなければ頭につかえる程であり、被告渡辺に是正措置を求めても同被告の応じるところでなかつた旨の記載があり、右足場が通路部分にも突き出していたことは被告らの認めるところであるが、右甲第二一号証の記載によつても、足場の構築場所、規模、構築された態様等が明らかでなく、ひいては通行妨害の具体的情況が明らかでなく、他に、これを認めるに足りる証拠はない。

3 ところで、既存建物に隣接して新築建物の建築工事をする者は、既存建物に損傷を与えたり、その居住者に危害を及ぼすことのないよう万全の措置をとるべき注意義務があるところ、原告は原告宅に昭和二三年以来居住しているものであつて、本件工事による1のような原告宅の損傷、その修復請求、交渉等において心痛軽からざるものがあつたことは容易に推測でき、被告渡辺は原告に対し、慰藉料を支払う義務があるものというべきである。

4 次に被告渡辺徳次および被告会社代表者高橋芳雄の各尋問の結果によると被告会社代表者高橋芳雄と被告渡辺とはいとこの関係にあり、昭和三一年頃以降被告会社はその発注する建築工事はもつぱら被告渡辺に請負わせており、同被告も特段見積書を作成することなく、工事原価に生活費を加算した程度の代金で受注してきたこと、本件社屋の建築工事は、建築士の訴外山崎某作成の設計図に基づいて被告渡辺がその施行を請負つたものであるが、鉄筋コンクリート造の建物の建築を請負つたのは始めてであるにも拘わらず、見積書を作成していないこと等の事実が認められる。

右の事実によると被告渡辺は、被告会社従属し、使用人的立場にあつたと認められるから、被告会社もまた民法七一五条により被告渡辺の行為につき原告に対して損害賠償の責任を負担するものというべきである。

5 そして、被告らが原告に対して支払うべき慰藉料の額は被害の内容、程度、態様その他諸般の事情を考慮して金一五万円をもつて相当と考える。

(佐藤安弘 島田周平 高林龍)

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