東京地方裁判所 昭和47年(ワ)2839号 判決
一 本案前の申立について
被告らは、本訴請求が、一定期間にわたる被告らの本件甲、乙両特許権の侵害行為により原告が蒙つたと主張する各損害の一部賠償請求として、一括して金一〇〇〇万円を請求するものであるところ、右請求にかかる金一〇〇〇万円がどの期間における損害に対するものか、また、いずれの特許権侵害に対する損害賠償請求権の一部なのかが不明確であるから、結局訴訟物の特定を欠くものとして、本件訴えの却下を求める。
しかしながら、数量的に可分な債権の一部請求は、その請求部分が全体の中のどの部分にあたるかを特定できる標識がある場合はもちろん、かかる標識がない場合にも可能であることは、すでに判例の認めるところである。そのうえ、本件においては、別紙計算表(一)及び(二)を比較対照すれば、原告が本件甲特許権のみに基づいて損害賠償を請求する期間(昭和三〇年一月一日から昭和四〇年二月一一日までの間)については、全損害額金五四億六六〇〇万円のうち一部金三〇六万円を、本件甲及び乙両特許権に基づいて請求する期間(昭和四〇年二月一二日から昭和四四年七月二七日までの間)については、全損害額金四三億二二〇〇万円のうち一部金三〇一万円を、本件乙特許権のみに基づいて請求する期間(昭和四四年七月二八日から昭和四七年三月三一日までの間)については、全損害額金四二億六二〇〇万円のうち一部金三九三万円をそれぞれ請求するものであること、換言すれば、本件甲特許権に基づく一部請求としては金六〇七万円を、本件乙特許権に基づく一部請求としては金六九四万円を請求するものであり、うち金三〇一万円については選択的併合の関係にあることが認められるから、審判の対象は特定しているものということができる。
したがつて、本件訴えの却下を求める被告らの本案前の申立は、いずれも理由がない。
二 請求の原因について
原告は、昭和二九年一一月八日から昭和四四年七月二七日までの間、本件甲特許権を有し、昭和四〇年二月一二日から本件口頭弁論の終結時現在において本件乙特許発明につき、仮保護の権利又は特許権を有すること、本件甲、乙各特許発明の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の項の記載がいずれも原告主張のとおりであること、昭和三〇年一月一日から昭和四七年三月三一日までの間、被告アイシンが手編機を製造して被告トヨタに販売し、被告トヨタは被告アイシンから仕入れた右手編機(しばしば設計変更がなされたが、これらを一括して、以下「被告ら製品」という。)を販売したことは、いずれも当事者間に争いがない。
そこでまず、被告ら製品が、原告主張のように、被告第一構造又は被告第三構造を有し、かつ、被告第二構造又は被告第四構造を有するかどうかについて検討するに、本件全証拠によるも、これを認めるに足りない。すなわち、成立に争いのない甲第七号証(被告ら製品のカタログ)には、被告ら製品(K―四五〇型)を斜め上前方から撮影した写真が二葉掲載されているのみで、その具体的な構造を知ることができないし、また、成立に争いのない乙第一ないし第四号証(被告ら製品のカタログ)によつてもこれに示されている被告ら製品(K―五〇六型、K―六〇〇型、K―六〇一型及びK―七〇〇型)が、原告が主張する構造のすべてを具備していると認めることはできないことは、これら各乙号証と別紙第一ないし第四目録とを比較検討すれば、おのずから明らかであり、他に、原告の右主張事実を認めるに足りる資料はない。
三 そうすると、進んでその余の点につき判断するまでもなく、原告の被告らに対する本訴請求は、いずれも理由がないものに帰するから、これを棄却する。