東京地方裁判所 昭和47年(ワ)6855号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
一<証拠>によれば、群馬県北群馬郡吉岡村大字大久保字十二、一九一七番の山林九七一平方メートル(本件土地)は原告の所有であることが認められ、昭和四六年二月二三日ごろ被告佐藤がそのうちほぼ本件掘削部分に該当する部分の土砂を掘り取つたことは当事者間に争いがない。
二<証拠>によれば、右掘削に至る事情は次のとおりであるものと認められる。
1 被告金谷は昭和四五年秋、本件土地の西側に隣接する自己所有の山林(吉岡村大字大久保字十二、一九一六番の二)を整地して豚舎用地に充てることを計画した。
そこで被告金谷は、原告の姉の夫で吉岡村に居住する中島芳郎を通じて原告に対し、右金谷所有土地と原告所有の本件土地との境界を現地において明確にするために立会つてもらいたいと依頼した。そし昭和四五年一一月二三日、被告金谷、原告及び右中島芳郎が現地に立会の上、相互の了解の下に境界を確定し、境界線上三箇所に木杭を打ち込んだ。
その後被告金谷は自己所有部分の樹木等を伐採し、更にこれを現場で焼いて境界が誰の眼にも一見して明らかなような状態にした。
2 同年一二月被告金谷は砂利販売店を営む被告佐藤に対し、土砂を無償で提供することを条件に前記自己所有地の整地を依頼した。なお右工事に着手する前、被告金谷は被告佐藤に対し、現地において前記境界杭を示して原告所有土地との境界線を指示、説明した。工事開始後も時々出かけて現地を見廻つていた。
被告佐藤及びその使用人は同年一二月下旬からブルトーザーで山を掘削して土砂をトラツクで搬出する作業に着手したが、被告佐藤がその使用人に原告所有の本件土地との境界を明確に指示して充分な注意を与えておかなかつたため、昭和四六年二月二三日ごろ(遅くとも二月二五日以前)被告佐藤の使用人がブルトーザーを原告所有地内に侵入させ、これを掘削してしまつた。なお被告佐藤らはその付近に古墳が存在していることは全く知らなかつた。
3 原告所有地から掘削した土砂の量は二トントラツク二五台ないし三〇台分位であり、被告佐藤はこれを一台分三〇〇円で他に売却した。
以上の事実が認められる。<証拠判断略>
そして、右認定の事実によれば、原告所有土地の掘削につき被告佐藤に過失があつたことは明白であるが、被告金谷は工事の注文者として尽くすべきを尽くしており何ら過失は認められない。被告佐藤は不法行為責任を免れないが、被告金谷には不法行為責任はない。
(矢崎秀一)