東京地方裁判所 昭和47年(借チ)20号 決定
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〔主文〕1 別紙目録(一)記載の借地契約の目的を堅固な建物所有に、借地期間を本裁判確定の日から三〇年に、賃料を本裁判確定の月の翌月分から一ケ月金六、〇〇〇円にそれぞれ変更する。
2 申立人らは各自相手方に対し金二、五〇〇、〇〇〇円を支払え。
〔決定理由〕一 本件の資料によれば、……本件土地について現に借地契約を締結するにおいては、防火地域の指定等土地の利用状況の変化により堅固な建物所有を目的とするのが相当であることが認められる。
……相手方は、本件土地と隣接の相手方所有土地とを一括利用してビル建設をなし、右土地を有効に利用するため、本件借地契約の期間満了時である昭和五一年八月八日には申立人らに対し本件土地の明渡を求める予定なので、本件申立は棄却されるべきであると主張する。よつて案ずるに、本件資料によれば、亡斉藤勝俊およびその妻申立人斉藤ミチらは昭和二六年頃から本件建物で中華食堂を営業し今日に至つており、今後もこれを継続するものと認められ、一方相手方は本件土地の隣接地で文具商を営んでおり、本件土地の明渡を受けるとより有効な土地利用が可能になることはうかがわれるが、前記申立人らの本件土地の必要性と対比すると、契約更新拒絶に必要な正当事由の存在の可能性は少ないといわざるをえない。また、右資料によつても、本件建物が現に朽廃し、あるいは朽廃時期が間近いとは認めがたい。そうすると、本件賃貸借契約はなお相当の年月存続する可能性が強く、本件土地付近の状況が前記のようである以上本件申立は認容されるべきである。
二 附随処分
借地条件変更の裁判により、賃借人は土地を従前より有効に利用できることとなりこれに応じて収益や、住の快適性、便利性の増加という利益を得ることとなり、一方賃貸人は、借地期間の延長、建物の耐用年数の延長による朽廃時期の延期等による土地返還の期待を減じられる不利益を受けることとなるので、右利害を調整するため申立人に財産上の給付を命ずべきであるが、右の利害はいずれも借地権の価格を構成する要素として考慮されるべきものであるから、給付額は条件変更前後の借地権の差としてとらえるのが相当である。しかして、本件借地権はその設定当時からいわゆる権利金等の援授のない自然発生的借地権であること、その借地権の存続期間は三年余りにすぎないこと等を考慮すると、本件借地権価格は近隣のそれよりやや低いものと考えられ、他方本件借地条件の変更にともない借地期間を本裁判確定の日から三〇年に延長するのを相当とするから、本裁判により借地権は強固となり、その価格は従前の決定例、鑑定委員会の意見を参酌すると更地価格の一五%程度上昇すると認めるのが相当である。そこで、申立人ら各自に対し、財産上の給付として、鑑定委員会の評価による本件土地の更地価格一六、六五七、〇〇〇円(一平方米当り三三五、九六二円)の約一五%に相当する金二五〇万円の支払を命ずる(申立人らの債務はその性質上不可分債務と解すべきである)。なお、鑑定委員会は更新料を財産上給額算定の基礎としているが、更新料の支払およびその金額についての慣行の成熟度ないしその合理性に疑問があるうえ、前示のとおり借地権価格の中の一要素として残存期間を考慮する以上重ねて得べかりし更新料の支払を命ずる必要はないと考える。また、財産上の給付額を二八〇万円とする鑑定委員会の意見は本件の特殊事情を考慮しても従前の裁判例に照らし、やや高額にすぎる。
賃料については鑑定委員会の意見に従い、本裁判確定の月の翌月分から一ケ月六、〇〇〇円に改める。
(河村直樹)
目録
(一) 賃貸借契約の内容
1 土地 東京都江東区門前仲町二丁目二番八
宅地 三〇四、二九平方米のうち 四九、五八平方米(一五坪)
2 当事者 賃貸人 相手方
賃借人 申立人ら
3 目的 木造その他の堅固でない建物所有
4 地代 一ケ月五、四〇〇円