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東京地方裁判所 昭和47年(借チ)2043号・昭47年(借チ)22号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕1申立人・相手方間の別紙目録記載の土地賃貸借契約の目的を堅固建物所有に変更する。

2 右土地賃貸借契約の借地期間を本裁判確定の日から三〇年に、賃料を本裁判確定の月の翌月分から月額一一、四七三円に各改定する。

3 申立人は相手方に対し、金五、六七二、四八〇円を支払え。

4 申立人が相手方に対し前項の金員とは別に金四、八八〇、〇〇〇円を支払うことを条件に、申立人が別紙目録記載の土地賃借権を東京都中央区京橋一丁目一番地有限会社淡路に譲渡することを許可する。

〔決定理由〕(当裁判所の判断)

一 本件の資料によれば、申立人は昭和二四年七月一六日相手方から本件土地(当時は北区赤羽一丁目一五〇番宅地七三〇、五七平方米のうち一九八、三四平方米であつたが、土地区画整理事業の施行による換地の結果本件土地に変更された)を木造建物所有の目的で期間を昭和四四年七月一五日までと定めて賃借し、同地上に本件建物を所有していることが認められる。相手方は、右借地契約には「賃借物は昭和四四年七月一五日限り返還すること」との特約が存し、右期日の到来をもつて契約は終了した旨主張するが、右約定が借地法所定の契約更新の規定を排除する趣旨であるとすれば同法一一条に照らし無効のものというべく、右は単に契約期間を定めたものと解するのが相当である。

そこで、更新拒絶の主張について案ずるのに、次の理由により、右拒絶の意思表示には借地法所定の正当事由が具備しているとは認めがたい。

1 相手方は本件土地をガソリンスタンドの営業所として自ら使用する必要があるというのであるが、本件土地が右営業に適当な土地であるか、やゝ疑問であり、一方申立人は従前から本件建物に居住し耳鼻咽喉科医院を開業してきた医師で、本件借地契約の期間満了時頃も医業を継続しており、その後昭和四六年頃に到り、病に倒れその継続が不可能になつたものであることからすると、満了当時における両当事者の本件土地利用の必要性は必ずしも甲乙つけがたいこと。

2 相手方は、本件手続において本件建物および賃借権を優先的に買受ける権利を有していたのにこの申立を取下げ、本訴を提起したものであること、もつとも優先買取権の行使は、借地権の存在を前提とするため相当の対価(鑑定委員会の意見によれば、本件建物および賃借権の価格は合計二四、五四七、〇〇〇円)の支払を要するが、本案の訴状によると、相手方は正当事由の補充として五〇〇万円の移転料の支払および代替地九九、一七平方米につき無償で借地権を設定することを通告している旨主張しており、これに加えて建物買取請求権が行使されればさらに大きな財産上の出捐を要することとなり、前記優先買受の対価と大差なくなると考えられ、また買受資金の調達についても相手方は少くとも処分可能な右代替地を所有していることからして必ずしも不可能ではなかつたこと、右各事情を総合すると、相手方が本件土地を自ら使用すべき緊急の必要性について疑問があること。

以上のとおり、本件借地契約は期間満了とともに法定更新されたものと認められる。

二 相手方は、借地権譲渡を目的とする借地条件の変更は許されないと主張するので案ずるのに、借地条件の変更の裁判は、附近の土地利用状況の変化等事情の変更により堅固建物所有の目的とすることが土地の利用上相当とするに至つた場合に許可されるもので、必ずしも借地人が堅固建物の建築を計画している必要はなく(したがつて、賃貸人からも申立ができる)、また、借地人が借地上の建物と借地権を譲渡しようとする場合に譲受予定者において借地条件の変更を希望しているときは、現借地人において譲渡許可および借地条件変更の各申立を同時になし得、これを併合して審理、裁判できると解するのが相当である。けだし、手続の経済の上から合理的であるし、申立の当否、財産上の給付等の附随処分について各別に判断、決定される以上、賃貸人に対し何ら不利益を与えないからである。

よつて、右の主張は採用できない。

三 本件の資料によると、本件土地附近は、準防火地域、商業地域の指定を受け、建物の高層化が進められ、現に借地契約を締結する場合は堅固建物所有の目的とするのが相当であること、および、有限会社淡路が本件借地権を譲り受けても相手方に不利となるおそれがないことが認められるので、本件各申立は、いずれも認容すべきである。

四 附随処分

1 借地条件変更申立事件について

借地契約の目的変更により、賃借人は土地を従前より有効に利用でき、土地利用による収益が増大する。よつて、契約当事者の利益の衡平を図るため、申立人に対し財産上の給付を命ずべきである。

鑑定委員会は、本件土地の更地価格を一平方米当り四四万円、合計五六、七二四、八〇〇円と評価し、借地目的の変更による借地権価格の上昇分は更地価格の一〇%と認めるのが相当であるので、右更地価格の一〇%に当る五、六七二、四八〇円をもつて本件の財産上の給付額とすべきとの意見書を提出した。

当裁判所も、目的変更による土地の利用価値の増加は借地価格に反映するものと考えるので、鑑定委員会の意見を相当と認め、本件の財産上の給付額を五、六七二、四八〇円と定める。

借地条件の変更にともない、本件契約の期間を本裁判確定の日から三〇年に、地代を鑑定委員会の意見に従つて、本裁判確定の月の翌月分から月額一一、四七三円に改める。

2 借地権譲渡許可申立事件について

借地人が借地を譲渡する場合、その利益の一部を賃貸人に支払う慣行があり、これは当事者の利益の衡平に適うと考えるので、本件においても申立人に財産上の給付を命ずべきである。

鑑定委員会の意見は、本件土地の更地価格一平方米当り四四万円、建付地価格はその67.5%で二九七、〇〇〇円、借地権価格はその七五%で二二二、七五〇円合計二八、七一六、九三〇円、財産上の給付額は借地権価格の一五%の四、三〇七、〇〇〇円をもつて相当とする、というにある。

当裁判所は基本的には鑑定委員会の意見に賛成であるが、本件手続において前記のように借地条件の変更を許可しているので、譲渡許可にともなう財産上の給付の算定については借地条件変更後の借地権価格を基礎とすべきものと考える。けだし、申立人と譲受予定者との間の借地権譲渡契約は、借地権が堅固建物所有を目的とするものであることを前提としてその代価が定まると考えられるからである。(申立人は、本件借地が普通建物所有の目的であれば売却できない旨の書面を提出している。)そして、借地の目的が非堅固建物所有から堅固建物所有に変更されると前記のとおり借地権価格は一〇%上昇するものと認められ、したがつて本件において財産上の給付額算定の基礎とすべき借地権価格は、前記鑑定委員会の意見による建付地価格の八五%、一平方米当り二五二、四五〇円合計三、二五四、五八五円となる。

よつて、財産上の給付額は、鑑定委員会の意見による借地権価格の一五%を相当と認め、その額は計算上四、八八〇、〇〇〇円(一万円未満切すて)となり、右額をもつて本件財産上の給付の額と認めるのが相当である。 (河村直樹)

目録

(借地権の内容)

1 目的土地

東京都北区赤羽町一丁目一五〇番

宅地  七三〇、五七平方米

のうち 一二八、九二平方米

2 当事者

賃貸人 相手方

賃借人 申立人

3 契約締結の日

昭和二四年七月一六日

4 目的

非堅固建物所有

5 賃料

一ケ月六、九〇〇円

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