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東京地方裁判所 昭和47年(借チ)2108号・昭46年(借チ)2060号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕1 申立人に対し、別紙目録(一)記載の土地につき相手方に対して有する賃借権及び同目録(二)記載の各建物の所有権を相手方に譲渡することを命じ、その対価を金二〇三〇万円と定める。

2 申立人は、相手方に対し、前項の対価の支払と引き換えに、別紙目録(二)記載の各建物につき所有権移転登記手続をし、かつ、右各建物の明渡をせよ。

3 相手方は、申立人から第二項の建物所有権移転登記手続義務及び建物明渡義務の履行を受けるのと引き換えに、申立人に対し、第一項の対価の支払をせよ。

【決定理由】……鑑定委員会は、近隣及び画地の状況並びに公法上の規制(住居専用地区、第九種空地々区、第一種高度地区)を考慮し、本件土地の最有効使用を専用住宅ないし共同住宅の敷地と判定し、更地価格を一平方米当り一一万二、〇〇〇円と評価し、借地権価格を取引事例、土地残余法による収益価格(但し、計算内容を示さない)、借地権割合(更地価格の七〇%)による三者の価格を比較考量して一平方米当り七万五、六五〇円と評価し、本件建物全部の価格を八四万一、〇〇〇円と評価し、本件土地の最有効使用の程度、建物の配置の適否を検討した上建物及び借地権の双方につき二%の建付減価をするのを相当とし、譲渡対価を右建付減価による建物価格及び借地権価格の合算額から名義書替料相当額(建付減価をしない借地権価格の一〇%とする)を控除した金二、一一一万一、〇〇〇円をもつて相当であるとする。

これに対し、相手方は、申立人は相手方と同じ会社に勤務し、同会社の常務取締役の口添えにより本件土地を申立人に好意的に賃貸したものであり、賃貸にあたり権利金、礼金等賃料以外の金銭は一切受領しなかつたし、また、賃料も近隣に比較して低額であるので、譲渡対価はこれらの事情を斟酌して通常の対価より低額にすべきであると主張する。相手方が申立人に本件土地を賃貸するにいたつた経緯に関する右主張事実及び相手方が本件土地賃貸に関し申立人から権利金等賃料以外の金銭を受領していない事実は、本件の資料によつて認めることができるが、相手方が申立人に本件土地を賃貸した昭和二六年当時本件土地附近において権利金等を徴するのが一般的であつたかどうか疑わしいばかりでなく、権利金等は、借地権設定の対価であり、借地権設定の後にいたり、このような金員を借地人に対して当然請求しうるものではないので、もし、権利金等の授受がなかつたことを斟酌して譲渡対価を通常の対価より減額するとすれば、借地権設定の後に、権利金のうち右減額分を賃借人の意思によらずに徴求する権利を認めるのと同じことになり、肯認しがたい見解といわなければならない。しかし、賃料が通常の賃料に比較して低額であるならば、譲渡対価の決定の上で考慮するのが相当である。鑑定委員会の意見によると、本件土地に相応しい賃料は一ケ月一万三、七一四円とのことであり、これと較べ、現行賃料一ケ月七、〇〇〇円は著しく低額である。賃料が低額であることは譲渡対価に如何に反映すべきであるか。賃貸人が借地権付の土地所有権を第三者に売る場合、買主が投資する代金は、投資額に見合う利潤によつて決せられるであろう。この場合の利潤は、年間の実際支払賃料(契約賃料)から借地に課せられる公租公課等の年間諸経費を控除した額であり、資本利回りを年六%とすれば、代金は、年間実際支払賃料から年間諸経費を控除した額を六%で除して得られる額とするのが経済的に合理的である。そこで、本件土地を借地権付のまゝ第三者に売る場合、現行賃料を基礎とする代金と鑑定委員会が示した前記相当賃料を基礎とする代金との間にどれほどの差額があるかを見るに、諸経費は、賃料の高低に拘らず、一定のものと見るべきであるので、諸経費をNとすると、右の差額は、(13,714円×12−N)÷0.06−(7,000円×12−N)÷0.06

の計算式によつて求められる一三四万二、八〇〇円となる。右のように、賃料の高低により借地権付土地の売買代金に差異があるということは、現実の賃料という賃貸人・賃借人間の内部事情が地価に反映することを意味し、本件土地の価格は、賃貸人・賃借人の内部関係においては更地価格から右差額分を控除した価格であると見るのが相当である。本件土地の借地権割合は67.54%(鑑定委員会の評価による借地権価格一平方米当り七万五、六五〇円を更地価格一平方米当り一一万二、〇〇〇円で除すと0.6754となる)であるので、現行賃料の下における借地権価格は、鑑定委員会の評価する更地価格から右差額を控除したものに0.6754を乗じた二、二一四万六、五〇一円〇銭となるので、万円未満を切り捨て二、二一四万と評価するのが相当である。右借地権価格と鑑定委員会の評価する本件建物の価格(八四万一、〇〇〇円)の合計は二、二九八万一、〇〇〇円であるが、鑑定委員会の意見に従い二%の建付減価をすると二、二五二万一、三八〇円となる(不動産鑑定評価基準は、借地権には建付地を認めない立場を採つているが、その理由が必ずしも明らかでなく、また、建付減価する場合、土地と建物のいずれから減価するのか、あるいは、土地と建物の双方から減価するのか問題があるようであるが、ここらのところはよく判らないので、鑑定委員会の意見を尊重することとする)。賃貸人が賃借人から借地権と借地上の建物とを譲り受ける場合の対価は、借地権価格と建物価格の合算額から借地人が借地権を第三者に譲渡するに当り賃貸人に支払うべき名義書替料(譲渡承諾料)相当額を控除した額とするのが相当である。名義書替料は、借地権に一時的にもせよ譲渡性を付与することによる借地権価格の変動差と見るのが理論的には正しいと考えるが、不動産鑑定評価の現状は、右の変動差を求めることを困難視しているように見受けられるので、止むを得ず、巷間の慣行を参考として、前記借地権価格二、二一四万円の一〇%とし、右により本件の譲渡対価を計算すると二、〇三〇万七、三八〇円となるが、不動産の取引であるので万円未満を切り捨て、譲渡対価を金二、〇三〇万円と定める。

本件の場合、譲渡対価の支払と建物所有権移転登記手続義務及び建物明渡義務の履行とを同時履行の関係とするのを相当とする。 (小山俊彦)

目録<略>

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