東京地方裁判所 昭和47年(借チ)24号 決定
〔主文〕別紙目録記載の土地賃貸借契約の目的を堅固建物所有に変更し、存続期間を本裁判確定の日から三〇年延長する。
申立人は相手方に対し金一七八万円を支払え。
〔理由〕(申立の要旨)
一 申立人と相手方間には別紙目録2記載の土地(以下本件土地という)について同目録記載のとおりの賃貸借契約が締結されており、申立人は本件土地上に木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建倉庫兼共同住宅一階一五四、二四平方米、二階一五四、二四平方米を所有している。
二 本件土地附近は、昭和四五年頃から鉄筋等の高層建築が建設されるようになり、現在相手方は本件土地に隣接する相手方所有土地上に七階建建物を建築中で、申立人としても本件土地に高層建物を建築しないと借地を有効に利用できない状態となつた。そこで、本件借地契約の目的を堅固建物所有に変更したいが、相手方との協議が調わないので、右変更の裁判を求める。
(当裁判所の判断)
一 本件の資料によれば、申立の要旨一記載の事実のほか、本件土地附近は建物の高層化が進められていることが認められるので、本件申立は、これを認容すべきである。
二 附随処分
申立認容の裁判に伴い、申立人は本件土地を従前よりはるかに効率的に利用することができるようになり、また借地期間や借地上の建物の耐用年数の延長という利益を受ける。そこで、当事者間の利益の衡平を図るため、申立人に対し相手方に対する財産上の給付を命ずるのが相当であり、その額は、鑑定委員会の意見、同種事件の従来の鑑定委員会の意見、当裁判所の裁判例等を参考にし、本件土地の更地価格一、七八九万円(鑑定委員会の意見による)の約一〇%に当る金一七八万円をもつて相当とする。
申立人は、本件申立が必要となつたのは相手方において本件土地の隣接地に高層建物を建築したがためであり、財産上の給付額算定に当り右の事情を参酌すべきであると主張する。しかしながら、本件申立が認容されるのは単に隣接地に高層建物が建築されたがためではなく、本件土地附近が客観的にみて高層建物建築に適する場所として事情の変更があつたためであり、また本件申立がなされるに至つた事情はともあれ、本件借地目的の変更により申立人が前記のような利益を受けることは明らかである。本件の全資料をもつてしても、相手方が本件土地の隣接地に建物を建築することが、申立人に対する関係で不法行為あるいは債務不履行となり、申立人がこれと因果関係にある損害を蒙つたとは認むべくもなく、かりに右のような問題があるとしてもこれは借地非訟手続において解決すべき事柄ではない。借地非訟の裁判とすれば、申立人が前記のような利益を受ける以上それに応じた財産上の給付を命ずべきである。
なお、本件借地期間を本裁判確定の日から三〇年延長し、地代については鑑定委員会の意見に従い増額をしない。
(河村直樹)
目録<略>