東京地方裁判所 昭和47年(特わ)940号 判決 1972年12月19日
本店所在地
東京都港区南青山二丁目六番一九号
有限会社
北川象牙店
(右代表者取締役 北川重吉)
本籍
東京都港区南青山二丁目一三番地
住所
東京都港区南青山二丁目六番四号
会社役員
北川重吉
大正三年六月一一日生
被告事件名
法人税法違反、物品税法違反各被告事件
出席検察官
西岡幸彦
主文
1. 被告有限会社北川象牙店を罰金八〇〇万円に、被告人北川重吉を懲役五月にそれぞれ処する。
2. 被告人北川重吉に対し、本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
第一、被告会社有限会社北川象牙店は、東京都港区南青山二丁目六番一九号に本店を置き、象牙材料の輸入販売、象牙製品の製作販売等を目的とする資本金一〇〇万円の有限会社であり、これらの卸売販売のかたわら昭和三四年五月から同四五年七月二八日ころまでは右本店内に、同月二九日ころから昭和四六年七月六日までは東京都港区南青山二丁目六番四号に、同月七日以降は前記本店内にそれぞれ販売所を設け、物品税法一条別表掲記の第一種課税物品である象牙製品等の小売販売をも行つているもの、被告人北川重吉は被告会社の取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人北川は被告会社の業務に関し
一、法人税を免れようとして、売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどして所得の秘匿工作を施したうえ
(一) 昭和四三年八月一日から同四四年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額は別紙第一記載のとおり二九二〇万二九九一円であつたのに、昭和四四年九月三〇日東京都港区麻布六本木六丁目五番二〇号所在の所轄麻布税務署において同税務署長に対し、所得金額が八二九万八九七七円でこれに対する法人税額は二五八万六八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度の正規の法人税額九九〇万三二〇〇円と右申告税額との差額七三一万六四〇〇円を法定の納期限までに納付せず、
(二) 昭和四四年八月一日から同四五年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額は別紙第二記載のとおり六一〇七万四五二一円であつたのに、昭和四五年九月三〇日前記麻布税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一五七七万〇三九二円でこれに対する法人税額が五四五万一一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二二一〇万〇三〇〇円と右申告税額との差額一六六四万九二〇〇円を法定の納期限までに納付せず、
もつて、(いずれも偽りその他不正の行為により右各法人税を逋脱し(右各事業年度の法人税額の算定は別紙第三記載のとおり)、
二、物品税を免れようと企て、
(一) 別紙第四記載のとおり、昭和四四年六月、同年七月、同四五年三月、同年四月、同年五月、同年七月の各月において、前記被告会社本店内の販売場で小売販売した象牙製品等は輸出免税分を除いては各月分合計一九個で、その小売販売金額は合計一四九万一八〇〇円、その課税標準額は合計一二四万一〇〇〇円であり、これに対する物品税額は合計二四万八二〇〇円であるのに、これらを卸売し、あるいは非課税の箸などを販売したように帳簿に虚偽の記載をなしたうえ、昭和四四年六月分および同四五年三月分については所轄税務署長に申告書を提出せず、昭和四四年七月分、同四五年四月分、同年五月分についてはその各翌月いずれも前記麻布税務署において同税務署長に対し、象牙製品等で小売販売したのは輸出免税分のみである旨の、昭和四五年七月分については同年八月同税務署において同税務署長に対し象牙製品等で小売販売したのは一個でその課税標準額は六万二〇〇〇円であり、これに対する物品税額は一万二四〇〇円である旨の、いずれも虚偽過少の物品税納税申告書合計四通を提出し、各法定の納期限までに正規の物品税額と右申告税額との差額合計二三万五八〇〇円を納付せず、
(二) 別紙第五記載のとおり昭和四五年八月、同年一〇月、同年一一月、同年一二月、同四六年一月の各月において、前記港区南青山二丁目六番四号所在の販売場で小売販売した象牙製品は輸出免税分を除いて各月分合計五六個で、その小売販売金額は合計一三二〇万円、その課税標準額は合計一〇九九万九〇〇〇円であり、これに対する物品税額は合計二一九万九八〇〇円であるのに、これらを卸売し、あるいは象牙材料、非課税の箸などを販売したように帳簿に虚偽の記載をなしたうえ、昭和四五年八月分については所轄麻布税務署長に申告書を提出せず、その余の前記各月分については、その各翌月いずれも前記麻布税務署において同税務署長に対し、同販売場で小売販売した象牙製品等は輸出免税分のみである旨の虚偽過少の物品税納税申告書合計四通を提出し、法定の各納期限までに正規の物品税額合計二一九万九八〇〇円を納付せず、もつて、いずれも偽りその他不正の行為により右各物品税を逋脱し、
第二、被告人北川重吉は取締役として前記有限会社北川象牙店の業務に関し物品税を免れようと企て、別紙第六記載のとおり昭和四二年九月、同四三年三月、同年七月、同年一一月、同四四年五月の各月において、前記本店内の販売場で小売販売した象牙製品は輸出免税分を除き各月分合計八個でその小売販売金額は合計四五万八〇九六円その課税標準額は合計三八万一〇〇〇円であるのに、これらを外国商人に卸売したように帳簿に虚偽の記載をしたうえ、昭和四二年九月分、同四三年三月分、同年七月分については所轄麻布税務署長に対し申告書を提出せず昭和四三年一一月分および同四四年五月分についてはその各翌月、いずれも前記麻布税務署において同税務署長に対し、同販売場で小売販売した象牙製品は輸出免税分のみである旨の虚偽の物品税納税申告書合計二通を提出し、法定の各納期限までに正規の物品税額合計七万六二〇〇円を納付せず、もつて偽りその他不正の行為により右各物品税を逋脱したものである。
(証拠の標目)
一、判示各事実全般について
1. 被告人の当公判廷における供述、検察官に対する供述調書二通、大蔵事務官の被告人に対する質問てん末書一四通
2. 検察官田中豊作成の電話聴取書
3. 登記官吏認証の登記簿謄本
4. 高橋郁夫の検察官に対する昭和四七年六月八日付供述調書
二、判示各法人税逋脱の事実につき
1. 大蔵事務官の高橋郁夫に対する昭和四六年八月三日付、同月一〇日付、同年九月六日、同月七日付、同月八日付、同年一一月二六日付、同年一二月一七日付、同月一四日付、同年一一月二二日付、同年一〇月一一日付、同年一一月二六日付、同年一二月二一日付、同年一〇月一日付、同年一一月二五日付各質問てん末書
2. 大蔵事務官の北川マサヨ、若林容子、川岸治太郎(二通)、末松博、長島武、藤沢信仁に対する各質問てん末書
3. 大蔵事務官高田泰作成の「公表外預金と受取利息について」と題する報告書
4. 大蔵事務官仲光義継の「仮名定期預金の帰属について」と題する報告書
5. 大蔵事務官の花咲清、成田正太郎、平井禧守、平田栄一郎、浅井栄一に対する各質問てん末書
6. 高橋郁夫作成「社長仮払金について」と題する上申書
7. 大蔵事務官高田泰作成の「社長仮払金明細表について」と題する報告書
8. 大蔵事務官の北川晃一郎に対する昭和四六年一一月一一日付、同年一二月八日付、同四七年一月一〇日付各質問てん末書
9. 北川晃一郎作成の上申書七通
10 吉田孝太郎、藤城欽一、大野儀明各作成の「売買伝票写の提出について」と題する書面
11 塩田正作成の「弥生会および弥生会と北川との関係について」と題する書面
12 藤城欽一作成の「緑美会および緑美会と北川との関係について」と題する書面
13 大野万里作成の「金港会と北川象牙店との取引について」と題する書面
14 大蔵事務官高田泰作成の「個人預金明細表」「個人収支計算書」の各調査書
15 大蔵事務官佐竹定美作成の証明書
16 大蔵事務官高田泰作成の法人税額計算書
17 押収にかかる左記証拠物(いずれも昭和四七年押第一八二二号のうち、括孤内は枝番号)
昭和四一年七月期法人税確定申告書一袋(一)、昭和四四年七月期法人税確定申告書一袋(二)、昭和四五年七月期法人税確定申告書一袋(三)、元帳一冊(四)、売上仕入帳三冊(五、六、七)、代金取立手形預り通帳一冊(一一)、総勘定元帳二冊(一四、一五)、売上仕入帳一冊(一八)、源泉徴収簿一綴(一九)、決算資料綴一綴(二〇)、源泉徴収簿一綴(二四)、決算資料一綴(二五)、総勘定元帳三冊(二六、二七、二八)、ルーズリーフ式ノート十枚(三一)、棚卸表等一袋(三二)、買掛金元帳一綴(三四)、御用立金計算書等一袋(三五)、売掛帳一綴(三六)、加工帳一綴(三七)、請求書納品書一綴(三八)、納品書一葉(三九)、仕入帳一綴(四〇)、納品書二葉(四一)、仕入帳三葉(四二)
三、判示各物品税逋脱の事実について
1. 高橋郁夫の検察官に対する昭和四七年六月六日付供述調書
2. 高橋郁夫の作成にかかる申述書三通
3. 大蔵事務官の高橋郁夫に対する昭和四六年八月一九日付、同年一二月二四日付、同月一六日付、同月二〇日付同月一〇日付、同月一五日付、同年一一月一五日付、同年八月六日付、同月九日付、同月一〇日付、同月一一日付各質問てん末書
4. 大蔵事務官の武田正、森戸房江、尾本秀為、ミカエル・ジエイ・フローシヤイム、柏原享、福田公雄、横瀬昌康、金子忠雄(三通)、矢満田富勝、エズラエル・サスーンに対する各質問てん末書
5. 新井健治、岩本孝祐、河野清、杉田正行、イスラエル・アイ・サスーン各作成の申述書
6. 杉田正行作成の「納品書謄本等の送付」と題する書面
7. 大蔵事務官佐竹定美作成の証明書
8. 麻布税務署長作成の物品税納税申告書謄本
9. 押収にかかる左記証拠物(押収番号は前記のとおり、括孤内は枝番号)
売上仕入帳三冊(五、六、七、いずれも前掲)、納品書一綴(八)、輸出業者用インボイス綴一冊(九)、納品書控綴一冊(一〇)、納品書輸出綴一綴(一二)、商品出納帳一冊(一三)、売上日計表一綴(一六)、入金伝票綴一綴(一七)、受注控一綴(二二)、ノート一冊(二三)、売上仕入帳二冊(二九、三〇)、請求明細書一葉(四三)、領収証一葉(四四)、納品書三葉(四五、四七、四九)、請求書二枚(四六、四八)、領収書一葉(五〇)
(法令の適用)
一、判示第一の一の(一)、(二)につき法人税法一五九条、被告会社についてはさらに同法一六四条一項
一、判示第一の二の(一)、(二)の各月分の物品税逋脱につき物品税法四四条一項一号前段、被告会社についてはさらに同法四七条
一、判示第二につき物品税法四四条一項一号前段、四七条
一、被告人の各罪につきいずれも懲役刑選択
一、併合加重につき刑法四五条前段、被告人については同法四七条本文、一〇条(刑および犯情の最も重い判示第一の二の(二)別紙第五の3の罪の刑に法定の加重)、被告会社については刑法四八条二項
一、被告人の執行猶予につき刑法二五条一項
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 池田真一)
別紙第一 修正貸借対照表
有限会社北川象牙店 昭和44年7月31日
<省略>
<省略>
別紙第二 修正貸借対照表
有限会社北川象牙店 昭和45年7月31日
<省略>
<省略>
別紙第三 法人税額計算書
<省略>
別紙第四
<省略>
(注) 申告額欄の空欄は無申告
別紙第五
<省略>
(注) 申告額欄の空欄は無申告
別紙第六
<省略>
(注) 申告額欄の空欄は無申告