東京地方裁判所 昭和47年(行ウ)139号 判決 1974年7月19日
原告
有限会社深山商店
右代表者
深山勇吉
右訴訟代理人
藤本猛
被告
日本専売公社
右代表者
北島武雄
右指定代理人
押切瞳
外五名
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 申立て
一、原告
被告が原告に対し昭和四七年六月二三日付をもつてした塩小売人指定不継続処分を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、被告
主文同旨
第二 主張
一、原告の請求原因
(一) 原告は、酒類・塩類等の小売を業とする会社であるが、被告から昭和四四年七月一日付で塩専売法二三条にもとづき期間を三年とする塩小売人の指定を受け、塩小売業を営んできた。
(二) しかるに、被告は、原告に対し昭和四七年六月二三日付をもつて右塩小売人指定の期間満了に伴なう不継続処分をし、同処分の通知は同月二六日原告に到達した(以下、本件不継続処分という。)。
(三) しかしながら、原告については塩小売人の指定期間満了の場合に引き続き指定することを適当と認めるべき場合(塩専売法二六条三項)に該当するのに、被告はこの点の判断を誤り裁量の範囲を著しく逸脱して本件不継続処分をしたものであつて、同処分は違法である。
(四) よつて、本件不継続処分の取消しを求める。
二、請求原因に対する被告の答弁および主張
(一) 請求原因(一)および(二)の事実は認めるが、同(三)の主張は争う。
(二) 本件不継続処分の適法性について
1 塩小売人の指定は、塩の専売権を有する国からその権能を与えられた被告が塩の小売をすることができる者を定める行為であるから(塩専売法二条、三条、二三条一、二項)、本来、被告の裁量によつて行なうことのできるものであるが、その裁量が恣意に流れるのを避けるため、塩小売人の指定について一定の裁量の基準が定められている(塩専売法二五条、塩販売人指定事務取扱手続、同細則。以下、右取扱手続を本件取扱手続、右細則を本件細則という。)。ところで、塩小売人の指定は三年以内の期間を定めて行なわれるが、その期間満了の場合に引き続き指定することが適当と認められるときは、申請をまたないでその指定をすることができると定められている(塩専売法二六条三項。以下、指定更新という。)。指定更新の性質は、同法条の規定の仕方、位置からして新規の指定と基本的には異ならないと考えられるから、前記の新規の指定についての裁量の基準がこの場合にも基本的には妥当する。しかし、指定更新は、すでに塩小売の実績を持つ者に対し引き続き塩の小売をさせるのが適当かどうかの判断によつてなされるものであるから、その判断の基準は新規指定の場合のそれとおのずから異なつてくる面がある。そこで、被告は、指定更新についての裁量の基準を更新期(ほぼ全小売人について一定している。)のつど塩小売人指定更新実施要領によつて定めているのであつて、昭和四七年六月三〇日を指定の終期とする塩小売人の指定更新についての実施要領(以下、本件実施要領という。)は、昭和四六年度の塩販売数量が本件取扱手続二五条にもとづいて設定した地域区分(都道府県ごとにABCDの四地域に区分されている。)ごとの販売標準数量の三分の一に達しない場合には原則として継続して指定しない旨を定め、ただ、消費者の利便その他特殊な事情を考慮して、(1)最寄りの小売人との距離が地区分ごとに定められている距離(原告が入つている地域区分Bの場合は一五〇メートル)以上の場合、(2)交通不便な山間へき地、その他需給上必要と認められる地域にある小売人である場合であつて、かつ、不継続とすることにより消費者の便益を著しく損なうと認められる場合には、その販売数量が販売標準数量の三分の一に達しない場合にも継続して指定することができる旨を定めている。
2 原告は遅くとも昭和三八年七月一日以降塩小売人の指定を受けていたが、被告は、原告について、昭和四七年六月三〇日を終期とする指定期間満了に伴なう指定更新にあたり、本件実施要領によつて審査したところ、原告の営業所所在地の地域区分はBであり、その販売標準数量は四、七〇〇キログラムと定められているのに、原告の昭和四六年度における塩販売数量は1,281.8キログラムであつて、右販売標準数量の三分の一である一、五六六キログラムに達しないこと、原告の最寄りの小売人である増田源太郎との距離はわずか約六〇メートルにすぎず、また、地域の状況や他の小売人の配置状況等からみて原告を不継続処分にすることにより付近消費者の利便が著しく損なわれることはないことが認められ、他に原告を継続して指定しなければならない特殊な事情も認められないところから、本件不継続処分をしたものである。なお、増田源太郎も昭和四六年度の塩販売数量が地域区分ごとの販売標準数量の三分の一に達しなかつたが、指定更新の要件を充足する最寄りの小売人である有限会社日野屋と原告との距離は約一四〇メートルであり、右日野屋と増田源太郎との距離は約二〇〇メートルであつたので、増田源太郎は本件実施要領中の例外的指定更新の要件である前記(1)に該当するが、原告はこれに該当せず、かつ、原告と増田源太郎とを同時に不継続処分にすることによつて付近消費者の便益を著しく損なうことが認められたので、被告は増田源太郎に対し指定更新をしたものである。
したがつて、本件不継続処分は、被告が被告に与えられた裁量権を適正に行使して行なつたものであつて、適法である。
三、被告の主張に対する原告の答弁および反論
(一) 被告の主張(二)の1のうち、指定更新の性質が新規の指定と基本的には異ならないとの点は争うが、その余は認める。同(二)の2のうち、原告を不継続処分にすることにより付近消費者の利便が著しく損なわれることがないとの点は争い、日野屋との関係において原告には不継続処分をし、増田源太郎には指定更新をしたことに関する部分を除き、その余は認める。
(二) 本件不継続処分の違法性について
1 被告が本件不継続処分の理由とする指定更新の基準について、販売標準数量を過去三か年の当該地域における平均販売数量により決定するのに対し、右基準に適用されるべき当該塩小売人の販売見込数量を前年度のみの実績によつて判定するのは不当である。とくに、本件不継続処分の前年度において店主(原告代表者深山勇吉)の病気や交通事故による負傷など不慮の事故の重なつた原告の場合においては、単に右前年度の実績のみを標準とすることにより原告に対し著しい不利益を強いることになるものであつて、不当である。
2 被告が指定更新の基準となる販売見込数量および販売標準数量等を原告に告知しないで本件不継続処分をしたのは、不当である。もし、右告知がなされていたとすれば、原告は伝票上の操作をすることにより容易に売上実績を伸ばすことができたはずである。
3 本件不継続処分により付近消費者の利益を著しく損なうことは明らかである。
4 以上1ないし3において述べた点において本件不継続処分は裁量の範囲を著しく逸脱しているので、違法である。
四、原告の反論に対する被告の再反論
(一) 販売標準数量は、その他域(人口の密疎、塩消費数量の地域較差等を考慮して都道府県ごとにABCDの四地域に区分されている。)における小売人が一年間に販売すべき塩量の標準を示すものである。この販売標準数量の算定は、地域区分ごとに定められている標準供給人口(原告の属するB地域においては一、〇〇〇人)に一人あたりの消費量(各都道府県ごとにその地域内の年間小売人販売実績数量を人口で除したものの三か年平均の数量)を乗じて行なわれるが、ここにおいて一人あたりの消費量が過去三か年の平均を基礎として算定されることになつているのは、一般的には一人あたりの消費量は毎年あまり変動するものではないが、販売標準数量が塩小売人指定の期間三年間にわたつて一律に適用されるものであるところから、単年度のみの実績を基礎とする場合にありうるある程度の起伏をも避ける意味からのものである。他方、販売標準数量と対照すべき当該申請者等の予定営業所において見込まれる販売数量については、継続して指定される小売人の場合には過去の実績が存在するところから、過去の販売実績のなかでは将来的販売見通しに関する判定の基礎としてもつとも妥当と考えられる直前一年間の当該小売人の実績を用いることとされているのである。
しかも、新規の指定の場合には販売見込数量が販売標準数量に達することを要求しているのに対し、指定更新の場合にはその基準を大幅に緩和し、販売見込数量が販売標準数量の三分の一に達すればよいのである。これは、各小売人の営業事情により一時的に実績をあげられなかつた場合をも考慮して、塩販売数量が販売標準数量の三分の一まで落ちこむことをとくに許容したものである。すなわち、ほぼ全小売人について一定している更新期において、大量に指定更新をする必要上、各小売人の個人的事情のすべてを把握考慮していたのでは更新事務に支障をきたし、また、右事情の認定について各出先機関の恣意に委ねられてはかえつて不公平をきたすこととなるため、一律に販売標準数量の三分の一に達しない場合は原則として指定更新をしないこととし、例外的に消費者に不便をきたす場合に塩専売の社会的使命から塩小売人を存続せしめることとしているのである。
そもそも、塩は国民生活に必要欠くべからざるものとしてその供給を確保し、かつ、価格を低廉に保つことをその使命として専売となつているものであるから、塩小売人の配置は消費者の利便を考えて行なわれるべきである。ところで、塩小売人が多いほど消費者にとつて便宜であると考えられるが、小売人が多くなると流通経費が増大し、ひいては小売価格の上昇につながることとなるため、販売実績があがらず消費者の利用度の少ない小売人を存続せしめることは、かえつて消費者の利益にならないのである。
したがつて、被告の定めた指定更新の基準にはなんら不合理な点はない。
(二) 原告に対する販売標準数量等の告知の有無は、本件不継続処分の適法性についてなんら影響を与えるものではないが、参考のために付言すれば、昭和四四年に実施された指定更新の後に行なわれた同年七月二一日の中央区日本橋小網町東栄ホールでの日本橋塩販売組合員を対象とした集合指導に際して、被告は同月一日以降に適用される「塩小売人指示事項ならびに営業心得」を配布して解説をしたが、そのなかで、指定更新にあたり塩販売数量が被告の定める塩販売標準数量に達しないときは不継続となる場合があるので注意されたい旨とくに注意を促し、かつ、原告の属する地域区分Bの地区における右同日以降の販売標準数量は四、七〇〇キログラムであることを告知し、さらに、その時の指定更新にあたり日本橋塩販売組合員のなかからも二名の不継続処分を受けたものがあることおよびその際塩販売標準数量の三分の一をもつて判定の基準にしたことを付加説明している。そして、原告は右集合指導に出席していたのであるから、当該地域の販売機準数量が四、七〇〇キログラムであることおよび販売数量が被告の定める基準の数量を下廻る場合の不継続の可能性について十分知つていたはずである。
(三) 原告の営業所の周囲の塩小売人としては、東南約六〇メートルに増田源太郎、北東約一四〇メートルに有限会社日野屋、西方二七〇メートルに有限会社庄勢商店が配置されており、原告を不継続処分にしても、付近の消費者の便益を著しく損なうとは認められない。
五、被告の再反論に対する原告の答弁
被告の再反論(一)のうち、販売標準数量および販売見込数量が被告主張のようにして定められることは認めるが、その余は争う。同(二)のうち、昭和四四年七月二一日中央区日本橋小網町東栄ホールにおいて原告が「塩小売人指示事項ならびに営業心得」の配布を受けたことは認めるが、その余は争う。
第三 立証<略>
理由
一請求原因(一)および(二)の事実は当事者間に争いがない。
二そこで、本件不継続処分の適否について判断する。
(一) 塩小売人の指定は、塩の専売権を有する国からその権能を与えられた被告が塩の小売をすることができる者を定める行為であるから(塩専売法二条、三条、二三条一、二項)、本来、被告の裁量によつてこれを行なうことのできるものであるが、その裁量が恣意に流れるのを避けるため、塩小売人の指定について一定の裁量の基準が定められている(塩専売法二五条、本件取扱手続、本件細則)。ところで、塩小売人の指定は三年以内の期間を定めて行なわれるが、その期間満了の場合に引き続き指定することが適当と認められるときは、申請をまたないでその指定をすることができると定められている(塩専売法二六条三項)。この指定更新の性質は、同条項の文言、趣旨等にかんがみ、新規の指定と基本的に異なるところはなく、被告の裁量処分に属するものと解すべきであり、指定更新の基準は新規指定についての前記裁量の基準に準じて考えるのが相当である。そして、塩専売法二五条一項六号によれば、被告は、塩の販売予定数量が被告の定める標準に達しない場合には塩小売人の指定をしないことができるものとされているが、指定更新は、新規の指定の場合とは異なり、すでに塩小売の実績を持つ者に対して行なうものであるから、そのような実績を持つ者について引き続き塩の小売をさせるのが適当かどうかという観点からこれを判断するのが相当であり、したがつて、その判断の基準は新規指定の場合のそれとはおのずから異なつてくる面があるのである。
そこで、被告が指定更新についての裁量の基準を更新期(それはほぼ全小売人について一定している。)のつど塩小売人指定更新実施要領によつて定めており、昭和四七年六月三〇日を指定の終期とする塩小売人の指定更新についての実施要領(本件実施要領)においては、昭和四六年度の塩販売数量が本件取扱手続二五条にもとづいて設定した地域区分(都道府県ごとにABCDの四地域に区分されている。)ごとの販売標準数量の三分の一に達しない場合には原則として指定更新をしない旨を定め、ただ消費者の利便その他特殊な事情を考慮して、(1)最寄りの小売人との距離が地域区分ごとに定められている距離(原告が入つている地域区分Bの場合には一五〇メートル)以上の場合、(2)交通不便な山間へき地、その他需給上必要と認められる地域にある小売人である場合であつて、かつ、不継続とすることにより消費者の便益を著しく損なうと認められる場合には、その販売数量が販売標準数量の三分の一に達しない場合にも指定更新をすることができる旨を定めていることは当事者間に争いがない。
そして、本件実施要領における指定更新に関する右基準は、被告が塩専売法二五条一項六号に則り定めたものであつて、被告に与えられた裁量の範囲を逸脱しているとはとうてい認められないので、当該塩小売人の販売数量が本件実施要領所定の基準数量(すなわち、販売標準数量の三分の一)に達せず、かつ、前記例外事由にもあたらない場合には、被告は塩専売法二六条三項に定める「引き続き指定することを適当と認めるとき」にあたらないとして指定更新を拒むことができるものというべきである。
ところで、この点に関し、原告は、被告が販売標準数量を過去三か年の当該地域における平均販売数量によつて算出するのに、指定更新を希望する塩小売人の売買数量を前年度のみの実績によつて算定するのは不当である旨主張する。しかし、販売標準数量を地域区分ごとの過去三年間の平均販売数量をもつて算定することにはなんの不合理もない。他方、指定更新を希望する小売人の将来の販売見込数量を判定するのに、当該小売人の直前一年間の実績を基礎にして判定するのがもつとも適切かつ合理的であるのか、それとも過去二年間あるいは三年間の実績を基礎にして判定するのが適切かつ合理的であるのかは容易には決しがたいが、被告は、各小売人の営業事情により一時的に実績をあげられない場合のあることをも考慮して、指定更新の基準を新規指定の基準よりも大幅に緩和し、塩販売数量が販売標準数量の三分の一に達すれば足りるとしているのであつて(新規指定の場合には販売見込数量が販売標準数量に達することが要求される。)、このことを考え合わせれば、被告が指定更新を希望する塩小売人の販売数量を算定するにつき当該小売人の直前一年間の販売実績を基礎にして判定するという方法を採用したことには、不合理な点はなく、被告に与えられた裁量の範囲内にとどまるものと解するのが相当である。なお、原告は、原告の場合には店主の病気や病気事故による負傷等の不慮の事故が重なつているので、指定更新直前の一年間の実績のみを基礎とすることにより著しい不利益を強いられることになり不当である旨主張するが、右に述べたように、被告はそのような不慮の事故をも含めて各小売人の営業事情により一時的に実績をあげられない場合のあることをも考慮し、指定更新の基準を新規指定の場合の基準よりも大幅に緩和しているのであり、そもそも指定更新のように一定の時期に大量的に行なわれる処分にあつては、これを迅速かつ公平に行なうため、一律の基準を設け、各小売人の個人的事情が捨象される結果となることもやむをえないことといわなければならない。
してみれば、原告の前記主張は理由がない。
(二) 次に、原告は、被告が指定更新についての基準等を原告に告知しないで本件不継続処分をしたことは不当である旨主張する。
しかしながら、すでに塩専売法二五条一項六号の規定が存在し、その運用に関する基準が右(一)に述べたように適法なものである以上、右基準に則つて行なわれた不継続処分は、このような基準が被処分者に告知されたかどうかにかかわらず、適法というほかない(のみならず、被告主催の昭和四四年七月二一日の中央区日本橋小網町東栄ホールでの集合指導において、原告が「塩小売人指示事項ならびに営業心得」の配布を受けたことは当事者間に争いがなく、<証拠>を総合すれば、右「塩小売人指示事項ならびに営業心得」には「塩専売法第二六条第三項にもとづいて実施される指定更新にあたり、塩販売数量が公社の定める塩販売標準数量に達しないときは、不継続となる場合がありますので注意して下さい。」との記載があるうえ、右集合指導において被告の社員が出席した日本橋塩販売組合員に対し日本橋塩販売組合の位置している地域の販売標準数量は四、七〇〇キログラムであること、今回の指定更新にあたり販売数量が販売標準数量の三分の一に達しないため右組合からも二名の不継続者が出たことなどを具体的に説明したこと、右集合指導には原告代表者の妻が出席したことが認められ、原告代表者尋問の結果中右認定に反する部分は前掲各証拠に照らして信用できない。)。
してみれば、原告の右の点に関する主張も理由がない。
(三) 原告が遅くとも昭和三八年七月一日以降塩小売人の指定を受けていたこと、原告の営業所所在地の地域区分はBであり、その販売標準数量は四、七〇〇キログラムと定められているのに、原告の昭和四六年度における塩販売数量は1,281.8キログラムであつて、右販売標準数量の三分の一である一、五六六キログラムに達しなかつたこと、原告の最寄りの小売人である増田源太郎との距離はわずか約六〇メートルにすぎないことは当事者間に争いがなく、増田源太郎の営業所は原告の営業所の東南に位置すること、原告の営業所の周囲には右増田のほか、北東約一四〇メートルに有限会社日野屋が、西方約二七〇メートルには有限会社庄勢商店がそれぞれ位置していて、塩小売人の指定を受けていること、増田源太郎も昭和四六年度の塩販売数量が地域区分ごとの販売標準数量の三分の一に達しなかつたが、指定更新の要件を充足する最寄りの小売人である有限会社日野屋との距離約二〇〇メートルあつたこと、そこで、被告は、増田源太郎は本件実施要領中の例外的指定更新の要件である前記(一)の(1)の場合にあたるが、原告はこれにあたらず、かつ、原告と増田源太郎とを同時に不継続処分にすることにより付近消費者の便益を著しく損なうとして、増田源太郎に対して指定更新をしたものであること、以上の事実を原告は明らかに争わないので自白したものとみなす。
右事実によれば、原告は本件実施要領において定められた指定更新の要件(原則としての塩販売基準数量および例外としての指定更新事由)に該当しなかつたために本件不継続処分を受けたものであるというべく、増田源太郎は例外としての指定更新事由に該当したために指定更新を受けたものというべきである。
してみれば、増田源太郎との対比において原告が不公平に取り扱われたと解すべき根拠はなく、また、原告を不継続処分にすることにより付近消費者の利便を著しく損なう旨の原告の主張も理由がない。
(四) 以上のとおりであるから、本件不継続処分は適法になされたものというべきである。
三よつて、本件不継続処分の取消しを求める原告の請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(高津環 牧山市治 上田豊三)