大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和48年(ヨ)764号 判決 1973年10月30日

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

選定者の表示 別紙選定者目録(一)ないし(三)記載のとおり

主文

一  債権者ら及び別紙選定者目録(一)ないし(三)記載の選定者らが共同して金七億円の保証を立てることを条件として、次のとおり定める。

債務者は、債権者ら及び右選定者らが別紙物件目録記載の土地をゴルフ場として利用するのを妨害してはならない。

二  申請費用は、債務者の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  債権者ら

主文第一項後段と同旨の判決。

二  債務者

「債権者らの本件仮処分申請を却下する。申請費用は、債権者らの負担とする。」との判決。

第二  当事者の主張

一  申請の理由

(一)  被保全権利

1 ゴルフ場利用権に基づく妨害差止請求権

(1) 債権者らのゴルフ場利用権取得その他

関東文化開発株式会社(本件仮処分申請手続において、債務者小松地所株式会社とともに共同債務者とされていたが、債権者らの本件仮処分申請を認諾したものである。以下、同会社を「関文」と略称する)は、ゴルフ場事業を営む会社である。東京都八王子市川口町所在の通称GMG八王子ゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」と略称する)は関文の経営するゴルフ場の一つであつて、別紙物件目録記載の計六〇筆合計五万二四八〇坪の土地(以下「本件土地」と略称する)は、二七ホールある本件ゴルフ場のうち西コースの九ホールをなしているものである。

債権者ら及び別紙選定者目録(一)ないし(三)記載の選定者ら(以下、債権者ら及び右選定者らを一括して、「債権者ら」と呼称することにする)は、いずれも、昭和四三年一〇月二七日までに、関文の定めた本件ゴルフ場規定を承認のうえ、関文所定の、金一八万円ないし金四五万円の一定額の入会金と称する金員を関文に対して無利息、据置期間一〇年の特約で預託することにより、前記規定にいう東京グループメンバーズ・ゴルフクラブ(以下「GMG」と略称する)の正会員となつた者若しくはかかる正会員となつた者から、関文の承諾のもとに正会員の地位を譲受けた者である(以下、右正会員の地位に基づき関文に対して有する権利を「本件会員権」と呼ぶことにする。)。債権者らは右のようにして本件ゴルフ場規定にいうGMGの正会員となつたことにより、関文に対して本件会員権の一内容として、本件ゴルフ場を、一般の利用者に比し、利用料金の点でも、利用の機会の点でも、有利な条件で継続的にゴルフを行なうために利用する権利を取得し、又、本件ゴルフ場でプレーすると否とを問わず、関文に対して一定額の年会費(現在は一万二〇〇〇円)を支払うべき債務を負うことになつたものである。(以下、本件会員権のうちの右の権利を「本件ゴルフ場利用権」と呼ぶことにする。)。

他方、債務者は昭和四七年三月一日商号変更により、現商号となつたものであるが、右商号変更前は、小松伊藤忠地所株式会社と称していた。小松伊藤忠地所株式会社は昭和四五年七月八日に小松道路開発株式会社を合併したものである(以下、債務者という場合、昭和四五年七月七日以前の事実にかかるときは小松道路開発株式会社を指し、同年同月八日以降の事実にかかるときは、小松伊藤忠地所株式会社ないし小松地所株式会社を指するものとする。)。

(2) 債務者者の妨害行為ないし妨害の恐れ

債務者は、本件土地が債務者の所有なりと称して、昭和四六年二月一四日午前二時頃、本件土地上のグリーンをブルドーザーで掘り起し、ゴルフ場として使用不可能な状態にした。更に、昭和四八年二月一六日午後一一時頃、本件土地上にゴルフ場利用を禁ずる旨の立看板を設置するとともに、本件土地の周囲に鉄線を張りめぐらせて、債権者らがゴルフのために利用することを妨害した。

前段の事実に徴すると、債務者が今後も本件土地を掘り起すなどして債権者らが本件土地でゴルフプレイするのを妨害する挙に出ることは必至である。

(3) ゴルフ場利用権の性質

ⅰ 物の利用を目的とする債権の中には、第三者に対する対抗力を認めることが社会的に要請されるものがある。かかる債権にあっては、たとえ債権ではあっても、その存在が外形的表象を具有し、公示性を有するものであれば取引の安全を害する恐れはないから、これに第三者に対する対抗力ないし排他性を認めるのが相当である。本件ゴルフ場利用権のような債権は、まさにかかる債権に当るものであつて、債権者らは本件ゴルフ場利用権に基づき第三者たる債務者に対し前叙妨害行為の差止を求めることができるものといわなければならない。

ⅱ 以下、本件ゴルフ場利用権が右のような債権に当る所以を述べる。なお、以下において単にゴルフ場利用権というときは、本件ゴルフ場利用権のようなゴルフ場利用権すなわちゴルフ場事業を営む会社に対し名目のいかんを問わず、一定額の金員を預託することによつて当該ゴルフ場事実を営む者に対して取得した権利のうち、その者の経営する特定のゴルフ場を一般の利用者よりも利用料金の点でも利用の機会の点でも有利な条件で継続的にゴルフプレイをするために利用できる権利を指するものとし、預託金制会員又は単に会員というときは、ゴルフ場事業を営む会社に対して名目のいかんを問わず一定額の金員を預託することによつて該会社の営む特定のゴルフ場の利用権を伴う一定の地位を取得した者を指するものとし、会員権というときは、右一定の地位に基づき当該ゴルフ場事業者に対して有する権利を指すものとする。本件会員権もかかる会員権である。

(ⅰ) ゴルフ場利用権の用益権的、支配権的性質

凡そ物の利用を目的とする債権契約は請求権のみを発生せしめるものではなく、請求権の行使により一定の状態が作出される場合、その目的物に対する支配権をも発生せしめるのである。

これをゴルフ場利用権についてみれば、以下のとおりである。すなわち、会員は、ゴルフ場完成前には、ゴルフ場経営者に対し契約条件にかなつたゴルフ場を完成し、オープンするよう請求しうるに過ぎないが、ゴルフ場が完成され、オープンされたときは、会員は入会契約(会員になろうとする者がゴルフ場事業を営む者との間に締結する契約をいう、以下同じ)の本旨に従つて、有利な条件で、優先的かつ継続的に、いつでもゴルフ場を利用することができるようになるのである。かような優先的地位は、具体的には、次のような事実によつて明らかである。会員制ゴルフ場においては、ゴルフ場を利用できる者は原則として会員に限られる。会員以外のいわゆるビジターは、会員の同伴がある場合かまたは会員の紹介がない限り、ゴルフ場を利用することを認められていない。また、会員はロッカー、ロッジ等のゴルフ場施設の利用の点でも優先権が認められる。会員は、平日は予約なしに到着順でプレイすることが可能であり、日曜、祭日でも一人であれば予約なしで行つても、補欠メンバーとしてコースへ出られる。月例競技会への参加も認められる。ハンデキャップの査定を受けられる。更に、会員のゴルフ場施設利用料金(グリーン・フイ)は、ビジターの利用料金に比べはるかに低廉である。本件ゴルフ場の右料金は、会員は、平日二〇〇円、日曜・祝日四〇〇円であるのに対し、ビジターは平日四五〇〇円、土曜六〇〇〇円、日曜・祝日八〇〇〇円である。

次に、会員はゴルフ場を占有しているといえる。これを本件ゴルフ場についていえば次のとおりである。すなわち、本件ゴルフ場の会員は、七三二九名であるが、これら会員による昭和四二年八月オープン後のゴルフ場の利用状況をみると、同年九月一日以降昭和四八年二月末日まで六六カ月間の会員の利用数は、延べ一三万八四五二名であり、一カ月平均二〇〇〇名以上である。又、会員とビジターの利用率を比較してみると、昭和四五年度までは、会員よりビジターの利用が多いが、昭和四六年度以降は、逆に会員の利用数がビジターのそれを超えている。昭和四七年度以降は、一カ月平均三〇〇〇名以上の会員に利用されている。定休日、雪または台風等によつてゴルフ場がクローズされる日を除き、連日会員によるゴルフ場の利用が継続しているのである。会員によるゴルフ場の利用状況は右のとおり反覆的、継続的、共同利用的であつて、あたかも入会部落民個々人がその有する用益物権としての入会権に基づき、入会地に入ることによりこれに対して直接の支配権を有するのと類似している。

このような利用状況からすると、本件ゴルフ場は社会観念上、会員らの事実的支配、すなわちその所持のもとにあると認めるのに充分である。占有意思の点については、これは所持による事実上の利益を自己に帰せしめようとする意思であつてその有無は客観的な権原の性質のみによつて決せられるべきもののところ、これを会員についてみれば、会員は会員であること自体によつて、ゴルフ場の事実的支配につき自己のためにする意思を有するものということができるからこれをゆうに認めることができる。なお、ゴルフ場において、多数の会員が前述のように反覆的継続的にプレイするにあたり、会員相互間のプレイを円滑にするため事業者ないしはゴルフクラブの運営管理に従い相互の利用を合理的に制限しあつているので多数会員によるゴルフ場占有は一種の共同占有関係にあるものというべきである。

以上の事実からすれば、ゴルフ場利用権は、単なるゴルフ場の使用請求権ではなく、ゴルフ場に対する占有を伴つた支配権ないし用益権たる性質を有するものというべきであり、不動産の賃借権に準ずる権利であるといわなければならない。

(ⅱ) ゴルフ場利用権を物権化すべき社会的必要性

ゴルフ場利用権については、以下述べるとおり、これに物件的効力を付与するのを必要とするような社会的基礎がある。

イ ゴルフ場施設の信託財産性

預託金会員制のゴルフ場を経営する会社はその殆んどが僅かな自己資本しかなく、ゴカフ場用地買収、ゴルフ場の造成、クラブハウス建築等のゴルフ場建設諸費用を基準として会員から入会金を集めるのが通例である。会員一人当りの入会金は会員を少くとれば高くなり、会員を多くとれば、安くなるという関係にあるが、いずれにせよ、預託金会員制ゴルフ場は会員の預託する入会金によつて建設されるものであるといつて過言でない。これを本件ゴルフ場についてみると、関文の資本の額は僅か一五〇〇万円であるのに、ゴルフ場建設に要した費用の合計額は金二一億三三八七万四〇五二円であり、これをまかなつた預託金の合計額は金二一億三五一三万円である。預託金合計額は建設費を超えているのである。これによつて明らかのように、本件ゴルフ場はまさに会員からの入会預託金によつて建設されたものであるが、入会預託金がゴルフ場用地の買収、造成その他の建設資金に充当されることは、入会契約締結のときに会員とゴルフ場経営との間に了解し合つていたものであるから、本件ゴルフ場の施設については、全会員が潜在的な所有権を有するものであり、本件ゴルフ場経営者たる関文は、債権者らを含めた全会員から本件ゴルフ場施設を信託されているものということができる。

ロ 会員権の財産性

会員は、すべてその有する会員権を第三者に自由譲渡することが認められている。本件ゴルフ場の会員権も例外ではない。これは、ゴルフ場経営者がゴルフ場建設のため巨額の資金を調達するに当つて入会金支払の名目で長期間据置かれる資本を投下する会員に、その投下資本の回収を容易ならしめることによつて、会員募集ないし資金調達を容易ならしめようとする趣旨に由来するものであるが、この特質は会員権が不動産賃借権よりも更に用益物権に近い性質の権利であることを意味するものである。もつとも、会員権譲渡に伴い、ゴルフ場事業者に対し、名義書換料の支払がなされるが、これは名義書替手数料であつて、会員権譲渡に対する承諾料ではない。

また、本件ゴルフ場規定第五条によれば、債権者らの有する預託金返還請求権は、一〇年間据置かれるのであるが、会員の側から任意に退会しない以上、一〇年間を超えて無期限に会員権を存続せしめることができるものである。その意味において債権者らの本件会員権は恒久性を有するものである。

以上述べたように会員権に自由譲渡性、恒久性が認められるために、会員権は取引の客体となる一つの価値ある財産として認識されている。本件ゴルフ場の会員権についていえば、昭和四八年三月頃現在で一〇〇万ないし一三〇万円という高価な市場価格が形成されていた。

ハ 会員クラブの非団体性ないしクラブ規定上の会員権保護規定の欠如

本件ゴルフ場の会員は、GMGと称する任意団体の構成員であるとされているが、GMGなるものは法人格を有しないこと明白であるのみならず、その構成員とされる会員の総体意思を形成すべき会員総会その他の議決機関がなく、団体意思を執行すべき機関や代表機関についてもその権限が明確に規定されていない。又、独自の財産も有せず、従つて社団としての団体性もない。GMGの理事は、ゴルフ場経営者たる関文が、会社役員及び会員の中から委嘱することになつているが、理事に委嘱される会員は関文の社員であるから、結局、クラブの理事会は、会社の利益を代表する組織であり、会員にとつてはたかだが親睦団体に過ぎない。それ故、会員の権利がGMGによつて保護されるというようなことは全く期待できないことである。

ニ ゴルフの大衆性と会員権を物権的に保護しないことによる社会的影響

ゴルフが一部有産階級の特権的スポーツであると認識されていた時代は過去のものとなり、昭和三五年以後の商業主義的な預託金会員制ゴルフ場の急速な増加により、ゴルフは大衆化された。昭和四八年六月一日現在において、わが国における開場ゴルフ場は六七二か所であり、建設中または計画中のゴルフ場は一一八四か所となつており、ゴルフ人口は現在二五〇〇万人ともいわれている。一か所のゴルフ場の会員数を三〇〇〇名と仮定してみても、七〇〇ゴルフ場で延べ二一〇万人の会員を数えることができる。今後この会員数は数十倍になることが予想されるのであるが、会員となる者の大部分は今や一般庶民であり、大衆である。本件ゴルフ場の場合も、会員は中小企業主、一般サラリーマンであり、店員、工員にまで及んでいる。このことは会員権の法的保護を考える場合に忘れてはならないことである。若しゴルフ場利用権につき、物権的保護が与えられず、債務者によつて本件土地の宅地造成が行われ、本件ゴルフ場の二七ホール中、西コース九ホールが失われることになれば、債権者らを含めた七〇〇〇余名の会員は残された一八ホールに殺到してプレイしなければならなくなる。それのみならず、関文は会員に対する西コース九ホールの喪失の補償を全く用意していないので、そのようになつた場合会員がいかなる反応に出るかは逆賭し難いところであり、更に全国の預託金会員制ゴルフ場の会員に与える影響も甚大なものがあると思われる。他方、全国の預託金会員制のもとにゴルフ事業を営む者の中から、会員に対する会員権の補償をなさずに、ゴルフ場施設を第三者に譲渡して暴利をむさぼろうとする者が出てこないとは限らず、昨今のゴルフブームが衰退した時には必ずやそのような悪徳業者が多発する恐れがある。

(ⅲ) ゴルフ場利用権の公示性

イ 会員権ないしゴルフ場利用権には登記等の公示方法が認められていないが、前述のとおり、ゴルフ場利用権の行使の状況が入会権行使の状況と類似している以上、入会権と同様にゴルフ場利用権についてもゴルフ場の継続的共同利用状況そのものに公示性を認めることができるというべきである。

ロ 物の利用を目的とする権利の存在を外部から認識できる一定の表象があるときは、これを該権利の公示方法とみることができる。登記によらなければこれを公示できないものではない。その物につき債務者と取引しようとする第三者が不測の損害を被る恐れのないような外部的表象があれば、これを該権利の公示方法とみてよい。

ところでゴルフ場利用権については、次のような外部的表象が存在する。第一に、ゴルフ場がオープンされ、ゴルフ場として現に利用されていることである。これは誰が見ても明白である。本件ゴルフ場の場合、西コースは、昭和四三年六月二日オープンされており、後述の本件売買契約締結の時においても現にゴルフ場として利用されていたものである。第二に、ゴルコ場がいわゆる会員制ゴルフ場であることがゴルフ関係雑誌等に記載されていることである。日本においては、全ゴルフ場の九〇パーセント近くが預託金会員制ゴルフ場であるから、本件ゴルフ場もかかるゴルフ場であることは、容易に推測がつくのである。第三に、ゴルフ場の会員はすべて会員名簿に会員として登録され、会員証および入会金預り証等を交付されていることである。債権者らも会員として関文の会員名簿に登録され、関文からそれぞれ会員証および入会金預り証の交付を受けているのである。

(4) 債務者の無権原ないし権利濫用等

ⅰ 債務者と関文との間には、かつて後述のような取引関係があつたが、現在、債務者は本件土地につき関文との間になんらの有効な取引関係に立つているものではなく、本件土地に対し(2)で述べたようなゴルフプレイの妨害となるような行為をなし得る権原は、関文に対する関係においてもこれを全く有しないものである。仮に右の主張が理由がないとしても、債務者の前叙のような妨害行為は後述のような事情のもとにおいては、権利の濫用として許されないものである。関文としても、現在債務者は本件土地になんらの権原を有しないものとし、今後も、債権者らに対して本件土地すなわち本件ゴルフ場西コースを債権者らのプレイに利用させようとしているものである。右のとおりである以上、債権者らは、本件ゴルフ場利用権に基づき、たとえ債務者が第三者であるにせよ、債務者に対して前叙妨害行為の差止を求めることができるものというべきである。

ⅱ 債務者と関文との間にかつて存した取引関係とは、次のようなものである。

(ⅰ) 債務者は、昭和四三年一〇月二一日、関文との間で、債務者が関文から本件土地を代金二億六二四〇万円で買受ける旨の売買契約(以下、これを本件売買契約という)を締結した。

本件売買契約締結の当時、本件土地のうち、八王子市上川町二〇七〇番の土地は関文と田中武司の共有であり、同所二〇七七番、二〇八七番、二〇九〇番の各土地は関文と岩崎真吉の共有であり、同所二〇七一番、二〇七二番、二〇七三番、二〇七四番の各土地は熊野神社、同所二一一六番、二〇四一番、二〇六三番の各土地は円福寺、同所二〇四八番の土地は秋山伸一郎の各所有であつて、関文が右各所有者から右各土地を賃借し、借地権を有していた。その余の土地はいずれも関文の所有であつた(以下、右その余の土地を「関文所有地」と略称する)。

(ⅱ) 商法第二四五条違反による本件売買契約の無効

本件土地は本件ゴルフ場の全コースの三分の一にあたり、関文の存立の基礎をなす重要な営業用財産の一部である。従つて関文が本件土地の譲渡をなすには商法第二四五条第一項第一号の規定により同法第三四三条所定の株主総会の特別決議を要するものであるが、関文は、本件売買契約の締結につき右の特別決議を経由していない。その故本件売買契約は無効である。

(ⅲ) 弁済供託による本件売買契約の失効

イ 本件売買契約は、本件土地の所有権を確定的に債務者に移転してしまう趣旨でなされたものではなく、実質上は、関文が運転資金に窮し、債務者から融資を受けることになつた際、融資金を本件土地の売買代金の形とし、その返済債務の担保として本件土地所有権を債務者に移転するためになされたものであつて、実質上はこれによつていわゆる売渡担保を設定したものである。このことは、以下述べる事実によつて明らかである。

(イ) 買戻持約の存在

本件売買契約には、その締結の際に、関文は昭和四四年三月末日までに本件土地を債務者から、三億一四八八万円で買戻すことができる旨の特約が付せられた。

右特約の買戻期限は、関文の実質上の借入金の返済期限を意味するものである。右買戻期限が本件売買契約締結の日から僅かに五か月余で到来するものとされたが、これは本件売買契約が売渡担保の設定であつたからにほかならない。

(ロ) 買戻特約の未登記

関文所有地の所有権並びに関文と田中との前記共有地及び関文と岩崎との前記共有地についての関文の各持分権については、昭和四三年一〇月二八日までに債務者のための所有権移転登記がなされた。右各共有地についての田中及び岩崎の各持分権については、関文がその後田中及び岩崎からこれを取得し、関文名義の登記はこれを省略して田中及び岩崎から直接に債務者に対してその移転登記がなされた。前記熊野神社所有地については、関文が同年一二月二五日所有権を取得して昭和四四年三月二五日債務者に対して所有権移転登記がなされ、前記円福寺所有地については、関文が昭和四三年一一月二〇日所有権を取得して同年一二月一一日債務者に対して所有権移移登記がなされ、前記秋山伸一郎所有地については、昭和四四年八月一九日債務者に対して所有権移転登記がなされた。しかるに、前記買戻特約については、本件土地のいずれについてもその旨の登記がなされていない。

右の事実は本件売買契約の締結が売渡担保の設定であつたことの証左である。

(ハ) 売買代金額の低廉

本件売買契約二億六二四〇万円は本件土地を一坪当り五〇〇〇円と評価して決められたものである。

しかしながら、本件売買契約締結当時の本件土地の価格は一坪当り二万円を越えるものであつた。すなわち、右売買代金は、本件土地の時価に較べ、著しく低廉なものであつた。右の事実は本件売買契約が売渡担保の設定であつたとの証左である。

(ニ) 他人所有地を含む売買

本件土地は、関文の所有地四万二二一〇坪、第三者所有地一万二七〇坪合計五万二四八〇坪から成るが、前述のとおりいずれも坪当り五〇〇〇円とされている。しかしながら、他人の所有地が全体の約四分の一の割合となつているから、両者は各別にその単価が定められるのが不動産売買の常である。しかるに本件売買契約ではこの点に配慮がされていない。また、本件契約においては、関文は関文と本件土地のうちの一部を共有していた者に対して代替地を提供してその持分地を取得のうえ、債務者に対しその移転登記をなすべきものと定められているが、その期限は本件売買契約締結の日から一〇日足らずであるから、関文にとつてその履行が不可能なことは明白であつた。更に、関文が、昭和四三年一一月一五日までに本件土地のうちの他人所有地の所有権移転登記を行なわないときは、関文の有する借地権を債務者に譲渡するものと定められているが、賃貸人の承諾が得られるか否か未定であり、従つて売買の目的が達成されるか否か不確定であつた。以上一連の事実も本件売買契約が売渡担保の設定であつたことの証左である。

(ホ) 売買除外土地の未実測

本件売買契約においては、本件ゴルフ場の西コース及び南コースの両コースにまたがる関文所有地八王子市上川町二〇九二番原野七七五三坪中、南コースに含まれる部分を概算三〇〇〇坪とみなしてこれを売買の対象から除外しているが、土地の売買において、坪単価が数千円ということになれば、原則として実測の上取引するのが通常であり、繩延びの多い山林原野においてはなおさらのことである。しかるに本件売買契約においては債務者の買受けるべき土地の特定も実測も行われず、南コースに含まれる部分を概算三〇〇〇坪とみなしこれを控除して取引している。かかる取引の仕方は真実の土地売買としては殆んど考えられないことである。

(ヘ) 会員権排除の配慮の不存在

債務者は本件土地を、宅地に造成する目的で買受けたと主張している。現に預託金会員制ゴルフ場として利用されている土地を右のような目的で買受ける場合これを買受ける者は、会員権ないしゴルフ場利用権の行使によつて宅地造成が阻害されないようにするため、予め売主と協議して目的土地に対する会員権ないしゴルフ場利用権を消滅させることについて配慮するのが当然である。勿論この場合、売主が買主に対して会員権を消滅させるための処置をとる義務を負うものと考えられるが、買主としても、そのことに無関心でおられる筈はなく、売買契約条項にこれについても規定するのが当然である。しかるに本件売買契約においては債務者がかかる配慮をした形跡は全くない。なお、ゴルフクラブとしてのGMGは、会員の親睦団体に過ぎず、その理事会の構成ないし実態は前述のとおりであるから、たとえGMG理事会が本件売買契約についてどのような決議をしようと債権者ら会員としては全く与り知らないことである。

(ト) 債務者による会員権の承認

債務者関文に対して前記買戻特約で定めた買戻期限経過後も会員が本件ゴルフ場西コースでプレイすることを承認していた。このことは債務者が会員権を排除してまで本件土地所有権を取得する意思がなかつたことの証左であり、引いては本件売買契約が売渡担保であつたことの証左でもある。

ロ 以上のとおり、本件売買契約は、売渡担保の設定であるから、債務者は関文が買戻期限内に買戻をしないときは、担保物件である本件土地を換価処分し換価代金の中から債権の元利金相当額を取得し、それを超過する部分はこれを関文に返還して清算すべきであり、他方関文としては債務者の右清算がなされるまでは債務者に対し買戻代金の名における借受金債務を弁済して本件土地を取戻すことができるものである。

ハ 弁済供託

そこで、関文は、昭和四七年一〇月二〇日、前記の実質上の借受金(売買代金額)二億六二四〇万円及びこれに対する昭和四三年一〇月二一日以降の年一割五分の割合による利息、損害金と費用を加算した合計金四億三一六万三六三六円を債務者のため東京法務局に供託した。右金員は、関文がこれを債務者に弁済のため提供しても、債務者がその受領を拒否することが明白であつたので右のように供託されたのである。

よつて、本件売買契約は右同日をもつて失効し、本件土地は関文に復帰した。

ⅲ 債務者の前叙妨害行為が権利濫用とみられるべき具体的事情は次のとおりである。

(ⅰ) (1)権利行使方法の非常識性

債務者の前叙妨害行為は、いずれも夜陰に乗じて数十名の人夫が、ブルドーザーで敢行しており、極めて悪質で非常識な暴力行為である。

(ⅱ) 債務者の害意

債務者は本件土地を関文から買受けるにあたり、本件ゴルフ場がいわゆる預託金会員制ゴルフ場であつて、債権者らを含む数千名の会員が本件土地を使用してプレイをしていることを知りながら、債権者らのゴルフ場利用権に対抗力がなく、本件土地の所有権さえ取得すれば当然に債権者ら会員を排除し得ることを奇貨として本件土地を譲受けたものである。換言すれば、本件土地契約は、民法第四二四条第一項の詐害行為として取消の対象となり得るような悪質な行為である。

(ⅲ) 本件土地取得経緯の不明朗性、非倫理性

本件土地売買契約は債務者が関文の財政的窮迫に乗じて、関文の意に反して強引かつ計画的に本件土地所有権を取得するために締結したものである。しかも、右契約締結に際しては、前述のように会員に対する配慮を全くしなかつただけではなく、かえつて会員に本件土地売買の件を秘匿しながら交渉を進め、他方会員権につき全く権限のないGMG理事会の決議書等を関文に作成せしめて、右の件発覚後の会員から非難攻撃を回避しようと策したものである。

そして債務者の本件土地取得目的は、その主張によれば、本件土地を宅地に造成してこれを第三者に分割販売することにあるという。営利会社が宅地を造成販売することは一般的には正当な業務といえようが、既にゴルフ場として完成し、数千名の会員が現にプレイしている土地につき、その地価の高騰に目をつけ、会員権を侵害したうえ、自己の利益追求のためにこれを利用しようとする行為は、もはや社会的に正当とされる営利追求行為の範囲を逸脱するものであつて、企業経営の倫理性に著しく反するものというべきである。

(ⅳ) 損失の比較衡量及び本件土地に対する必要性の比較

債務者が本件土地取得のために支出した金員は二億六二四〇万円であり、他に宅地造成販売をして得べかりし利益を失うことがあるのみである。関文は既に借受金の元金利息損害金合計四億三一六万三六三六円の弁済供託をしているから、債務者が本件土地所有権を関文に返還しても全く損害はない。仮に、本件に関して、債務者が他に何らかの支出をしたとしても、それは不当な利益追求のために自ら招いた損害であるから、自ら負担すべきである。それはともあれ、債務者としては、損害さえなければ本件土地を必ず取得してこれを宅地として開発しなければならない必要はないのである。これにひきかえ、もし債権者らが本件士地すなわち本件ゴルフ場の西コース九ホールを失うこととなれば債権者らの被る損害は計り知れない。本件ゴルフ場の会員権は現在市場価格で金一二〇万円余りとされているが、若し現在の二七ホールが僅か一八ホールになるとすれば、本件ゴルフ場の会員数が多いだけに右市場価格は半値以下に下がり、債権者ら会員の被る損害の合計額は数十億円にものぼることになり、まことに甚大である。また、本件ゴルフ場の会員は、七三二九名であり、これら会員が本件ゴルフ場の東、南、西の三コース合計二七ホールを利用してプレイを利用してプレイしているが、具体的な利用状況はすでに述べたとおりであり、会員の一日当りの最大利用者数は三六〇名を超えている。これだけの人数の者が一日に二七ホールを利用するだけでも過密といえるのに、その三分の一を占める西コース九ホールがなくなれば、会員がプレイする機会を得ることは非常に困難となる。このことはゴルフを愛好する債権者ら会員にとつては耐え難いことである。

2 占有保全の訴権による妨害差止請求権

(1) 債権者らは本件土地すなわち本件ゴルフ場西コースを直接に占有するものである。詳しくは前記1の(3)のⅱの中で述べたとおりである。仮に、右の事実が認められないとしても、関文が会員のためにする意思をもつて本件ゴルフ場を支配し所持するものである以上、債権者らは、本件ゴルフ場を、関文を占有代理人として間接占有しているということができる。

(2) 債務者の妨害行為ないし妨害の恐れ

この点については、1の(2)で述べたとおりである。

よつて債権者らは、占有保持の訴権により、債務者に対し前叙妨害行為の差止を求める権利を有する。

(二)  保全の必要性

債権者らは、前叙のような被保全権利にもとづき債務者に対し、債務者の前叙のような妨害行為の差止を求める訴訟を提起すべく準備中であるが、債務者は、市街化調整区域内に在る本件土地につき昭和四五年一二月二二日東京都より宅地造成の許可を得て、造成工事に本格的に取り組もうとしており、いつまた本件土地にブルドーザーを入れ本件土地をゴルフコースとしての原形を止めないものに変形させてしまうやも知れない。若しかような工事が行われれば、本件土地のゴルフ場用地としての機能は完全に失われてしまい、本件土地が他に分譲されたり、本件土地上に建物が建てられたりしてしまえば、もはやゴルフ場用地として復旧の可能性は失われてしまう。このようになつてしまつては、債権者らが後日本案訴訟で勝訴判決を得ても無意味に帰し、債権者らが物心両面において甚大な損害を被るべきことは必至である。債権者らとしては、かかる事態に陥るのを未然に防止するため緊急に適切な保全処置を必要とする。

二  申請の理由に対する債務者の答弁

(一)  申請の理由(一)(被保全権利)について

1 申請の理由(一)の1(ゴルフ場利用権に基づく妨害差止請求権)のうち、

(1)(債権者らのゴルフ場利用権取得その他)の事実はすべて認める。

(2)の前段の事実は認める。但し、債務者が昭和四六年二月一四日に本件土地にブルトーザーを入れたのは午前二時頃ではなく、午前六時頃である。

(3)(ゴルフ場利用権の性質)のⅰの主張は争う。

ゴルフ場における会員権が利用請求権である以上、これにつき排他的効力が認められない限り、これをもつて第三者に対抗することができないことは、借地権の場合と同様であつて、会員権についても対抗要件が具わらない限り、これをもつて第三者に対抗することはできないのである。そして、債権は、特別の規定がない限り、排他性を有しないから、会員権についてもこれに排他性を認める方法はない。排他性の有無は、物権と債権とを分別する基本的要素であるから、債権に排他性を認めてこれを物権化するためには、立法的借置によらざるをえない。従つて、ゴルフ場会員権が仮に不動産賃貸権に類似した債権であるとしても、これにつき法が特に対抗要件具備の方法を定めていない限り、これをもつて第三者に対抗できないのであつて、これはあたかも建物所有を目的としない土地賃借権に照応する。

(3)のⅱうち、

(ⅰ)(ゴルコ場利用権の用益権的、支配権的性質)について、

会員はゴルフ場経営者に対し、その所有するゴルフ場施設を利用する権利を有するが、これは、単に、経営者と会員との間に締結されたゴルフ場施設利用についての債権的な契約にもとづく対人的請求権に過ぎず、ゴルフ場に対し支配権を及ぼすものでない。このことは、右債権契約の内容、ゴルフ場利用の実態からみて明らかである。ゴルフのプレイを現実に行なつているときでも、それは施設を利用しているにすぎず、ゴルフ場に対し支配を及ぼしているとはいえない。仮にゴルフのプレイを現実に行なつている時には、プレイをしている部分にかぎり支配があるといえるにしても、ゴルフ場施設全体に対し、常時、支配を及ぼしているとはいえない。従つて、ゴルフ場利用権は、不動産賃借権のように、常時、対象物件を独占的に占有して支配している用益的権利とは権利の性質を全く異にしているのであつて、不動産賃借権に準ずる権利ではない。以上のような利用権の性質は、ビジターと会員の場合との間になんらの差異は存しない。すなわちビジターの場合は一時的な債権契約によるにすぎないのに対し、会員の場合は継続的債権契約によるという相異があるにとどまり、会員もビジター同様ゴルフ場施設に対し支配権を有するものではない。又、会員はゴルフ場を占有しているものではない。本件ゴルフ場の会員数および会員の利用状況についての債権者の主張事実は知らないが、会員がゴルフ場施設を継続的に利用することは利用契約からいつて当然のことで、日々、多数の会員の利用がみられるにしても、それは単にゴルフ場施設を会員それぞれが交互継続的に経営者から利用させてもらう関係がみられるだけで、ゴルフ場に対する会員の直接支配などは存しない。又、会員には占有の要件としての占有意思も欠く。占有意思は、純粋に客観的に判断すべきものとされているのであるが、預託金会員制ゴルフ場の会員募集に応じて会員になる者は、優先的条件でプレイできる権利を取得する目的ないし意識しかもたず、ゴルフ場施設に支配を及ぼしうる権利を取得する意思など持ち合わせていないのである。

(ⅱ)(ゴルフ場利用権を物権化すべき社会的必要性)のうち、冒頭の事実は否認する。

イ(ゴルフ場施設の信託財産性)について

ゴルフ場経営にあたつては、企業採算的見地からゴルフ場の建設過程において逐次会員を募集し、入会金を企業資金として取得しているのが通例であるが、ゴルフ場敷地の買収費は、尨大であつて、預託金だけで賄えるとは限らないだけでなく、土地の買収は早急に行なわなければならないのに反し、会員の募集は多く数次にわたつて行なわれるから、ゴルフ場経営者は、多く、銀行からの融資によつて土地を買収し、預託金その他ゴルフ企業の収益をもつて逐次借入金を返済するのである。従つて、土地買収が全部預託金によつて賄われているものではない。仮に、ゴルフ場建設諸費用を基準に入会金を集めるとか、会員数と入会金の金額とが反比例するとかの事実が認められるとしても、それは企業採算的見地からの計算上そうなるに過ぎず、ゴルフ場施設に対し会員が潜在的所有権を有するようになるとか、経営者が会員からゴルフ場施設を信託される地位にあるとかいうことはできない。

ロ(会員権の財産性)について

預託金会員制においては、会員権の譲渡は、譲渡、会員の脱退、譲受会員の加入手続およびこれに伴う名義書換料の支払という一連の手続によつて行なわれているが、この場合に支払われる名義書換料は、書換手数料ではなく、譲渡承諾料の性格を有し、本件ゴルフ場においても同様である。のみならず、債権であつても、自由譲渡性を有する債権は多数存在するのであり、会員権もその人的色彩が極めて乏しく債権として自由譲渡性を有すること当然のことである。次に、会社によつてゴルフ場が経営されている限り、会員は、自ら退会するか、会員権を譲渡するか或は除名されない限り会員としての権利を失うことはないが、会社がゴルフ場経営をやめたとき、或はゴルフ場経営に破綻をきたしてゴルフ場を他に処分したときは、会員は、ゴルフ場利用権失うこととなる。他方、会員はいつでも会員権の譲渡をして会員たることをやめることができ、預託金の据置期間後は自由に退会することができる。このことは、会員がゴルフ場利用契約を継続的に維持できるということを意味するだけであつて、そのことをもつて、会員権に恒久性があるなどといえるものではない。次に、会員権が財産権として現実に市場価格を有していることは疑いないが、それは会員権に用益権性、恒久性が認められているためではなく、優先的かつ継続的ゴルフ場利用権がレジャー産業の発達した今日の社会において経済的価値が認められたことによるものである。殊に最近における市場価格の高騰は多分に投機的作用に基づくものである。会員権に財産性が認められるからといつて、そのことが会員権ないしゴルフ場利用権の法的性質に影響を与えるものではない。

ハ(会員クラブの非団体性ないしクラブ規定上の会員権保護規定の欠如)について

ゴルフ会員になる契機は、人の生活の基礎に影響のないレジャーの選択の問題にすぎないから、会員の権利関係は会員とゴルフ場事業者との間の契約内容にまかされてよいものであり、仮令、会員の権利関係を規定しているクラブ規定が不明確で経営者とクラブと会員相互の法律関係或はクラブの法的性格を明瞭にすることが望ましいことであつても、それは当事者の自治にまかされるべきものである。

ニ(ゴルフの大衆性と会員権を物権的に保護しないことによる社会的影響)について

ゴルフが一部有産階級の特権的スポーツでなくなつたとはいえ、国民全体からみれば、庶民的なスポーツといえるものでない。ことに会員制ゴルフ場の会員となつてゴルフを行ないうるのは、入会金の高額なことからいつて、極く少数の経済的に恵まれた者に限られており、大衆的スポーツというには程遠い。ゴルフ場の会員数にしても、一人でいくつかのゴルフ場の会員となつている者が多く、実人員は、債権者らの主張する数には到底のぼらない。土地建物の賃借権の場合は、その殆んどの賃借権が賃借人の生活上不可欠のものであり、社会的経済的見地から賃借人の保護をはからなければならないので賃借権を物権化して賃借人の地位を強化するための立法がなされているのであるが、ゴルフ場利用権にあつては、いかにゴルフが大衆化したとはいえ、社会生活の上では単なるレジャーにすぎず、不動産賃借権にみられるような社会的経済的見地からする保護の必要性ないし物権化すべき社会的基盤は存しない。本件ゴルフ場利用権についても、その例外ではない。しかも本件ゴルフ場のうち、西コースは、もともと予備コースであつて、あまり良好なゴルフコースではなく、会員にも好まれていなかつたのであり、本件ゴルフ場はたとえ西コースを失つても東、南各コース計一八ホールを残すのであるからゴルフ場として充分に利用できる。たしかに二七ホールに比べれば多少不便になるだろうが、本件土地売買契約当時、関文は倒産して全コースを失つてしまいかねない危機にさらされていたものであり、債務者の本件土地買受けによりこの危機を救済された経緯からすれば、ある程度の不便は、債権者ら会員も甘受しなければならない筋合である。預託金会員制ゴルフ場の会員は、会社のゴルフ場経営が財政的に破綻し、財産を処分せざるをえなくなつた場合には、自己の会員権にも当然影響してくることを充分認識している筈である。

(ⅲ)(ゴルフ場利用権の公示性)のうち、

イについて

ゴルフというスポーツを対象とし債権契約に基づいて発生するゴルフ場利用権と、自然経済を営む農村住民がその生活の基礎確保のために秣草、肥料、薪炭材料を入会地において共同収益することを目的とし、歴史的、慣習的に発生してきた入会権とを対比してその行使状況の類似性を論ずることは、右のような社会的基盤の相違を無視したものであつて的はずれである。

ロについて

ゴルフ場がオープンされていれば、それがゴルフ場として利用されていて、多くの場合、会員制ゴルフ場であることを推測できるが、これは単なる事実的な推測にすぎない。公示方法は、登記、占有或は立木などの限定されたものを対象とする明認方法のごとく定型化されているのであつて、単なる事実的な推測に公示方法としての機能を持たせることはありえない。また、会員名簿への登載は、ゴルフ場事業者と会員との間で誰が会員であるかを明らかにして、会員の取扱いを受けうる者を特定することにあつて、外部に対して公示する機能を有するものではない。

(4)(債務者の無権原ないし権利濫用等)のⅰの主張はすべて争う。

(4)のⅱのうち、

(ⅰ)の事実はすべて認める。

(ⅱ)(商法第二四五条違反による本件売買契約の無効)については、本件土地が関文の重要なる営業用財産の一部であること及び本件売買契約の締結につき、関文が株主総会の特別決議を経ていないことは認めるが、その余は争う。

商法第二四五条第一項第一号にいう「営業ノ…譲渡」は、有機体としての営業の譲渡を意味し、単なる営業用財産の譲渡を含まない。仮に、同条の営業の譲渡には、営業用財産の譲渡のうち、それによつて譲渡会社の存続が不可能となるような場合を含むと解するとしても、本件売買契約の対象たる本件土地は、本件ゴルフ場の全ホールの三分の一の土地であつて、重要な営業用財産の一部にすぎないのみならず、関文は、本件ゴルフ場以外に長瀞ゴルフ場をも経営しており、本件売買契約によつて、関文の会社としての存続ないしゴルフ場経営の存続を不可能にするような事態となることは全く考えられない。それ故本件売買契約は商法第二四五条第一項第一号にいう「営業ノ…譲渡」には該当せず、株主総会の特別決議は要しない。

(ⅲ)(弁済供託による本件売買契約の失効)のうち、

イの冒頭の事実は否認する。

債務者は、本件土地を含む西コース九ホールを、宅地造成して転売する目的をもつて譲受けたものであつて、債務者の関文に対する融資金の担保のために本件土地を取得したものではない。形式的にも実質的にも売買である。

イの(イ)(買戻特約の存在)の前段の事実は認めるが、同後段の事実は否認する。

買戻の特約がつけられた理由は、当時、関文が多額の負債の支払いに追われ、金融逼迫の状態にあつたため、西コース九ホールの土地を手離すことを決意し、債務者に売却することとしたが、関文が数か月間のうちに右西コースを他に高額で売却できるかもしれないという一縷の望みをもつて債務者に懇請してきたため、債務者としてはこれを容れて買戻の特約をなすことを承諾したことによる。ところが、買戻期限は昭和四四年三月三一日であるにもかかわらず、他により高額な買主がなかつたため、関文は、右期限までに買戻ができず、そこで債務者は、右契約に基づき同年末頃までに関文から西コースの引渡を受けたものである。

イの(ロ)(買戻特約の未登記)前段の事実は認めるが、同後段は争う。

本件売買契約は、前記のとおり実質的にも宅地造成のための売買であり関文の懇請により特に買戻特約が附された経緯緯があつて、買戻期限が比較的短かく、当時、他に更に高額に売却できる見通しに乏しかつたことなどの事情が存したため、買戻特約につき登記がなされなかつたにすぎない。

イの(ハ)(売買代金の低廉)前段の事実は認めるが、同後段の事実は否認する。

本件土地の坪当り五〇〇〇円の単価は、契約当時の適正な価格である。

イの(ニ)(他人所有地を含む売買)のうち、本件契約の中に債権者ら主張のような約定のあつたことは認めるが、その余は争う。

関文は本件土地のうち借地部分および共有地につき比較的短期間に所有権移転登記義務を負うことになつていたが、これは右土地部分はすでにゴルフ場の一部として造成されているので、その所有権ないし持分権の買収は比較的容易に行なえる見通しがあつたためであり、たとえ買収ができなくとも関文の借地権の譲渡については第三者たる地主の承諾を得ることが極めて容易な見通しがあつたからである。

イの(ホ)(売買除外土地の未実測)のうち、本件売買契約において、債権者ら主張の地番の土地のうち、南コースに含まれる部分約三〇〇〇坪が売買対象から除外されたこと及び右契約締結の当時右部分の実測をしなかつたことは認めるが、その余は争う。

本件売買契約当時、関文を緊急に救済する必要から、債権者ら主張にかかる原野のうち南コースに含まれる部分を実測する余裕がなかつたので、これを概算三〇〇〇坪とし、後日の実測に従い増減分を坪当り五〇〇〇円で精算することとしたのである。これは土地売買としてなんら異例のことではない。

イの(ヘ)(会員権排除の配慮不存在)のうち、債務者が本件土地を宅地に造成する目的で買受けたと主張していること及び本件売買契約の中に会員権について配慮した条項のないことは認めるが、その余は争う。

本件ゴルフ場の会員が、本件売買契約によつて西コースが利用できなくなることについての事後処理は、関文と会員との間で解決すべきことであり、債務者のかかわり知るところではない。なお本件売買契約の締結については、関文では、GMG理事会の承認を得ている。

イの(ト)(債務者による会員権の承認)の事実は否認する。

仮に債権者らが、その主張のように西コースでプレイをしているとしても、遅くとも債務者が関文から本件土地の引渡を受けた後である昭和四五年一月一日以後は、なんらの権限なしに債務者に無断で本件土地を使用しているにすぎない。

ロの主張は争う。

ハ(弁済供託)前段の事実は認める。

しかし債権者ら主張の弁済供託は、本件売買契約が売渡担保の設定であつたという失当な前提に立つものであるのみならず、前記買戻期限をすでに三年半も経過した後になされたものであるから無効である。

(4)のⅲのうち、

(ⅰ)(権利行使方法の非常識性)について

前述のとおり、債務者は本件売買契約により本件土地所有権を取得し、その後遅くとも昭和四四年末頃までに関文から本件土地の引渡を受けてこれを占有してきた。そして、東京都から昭和四五年一二月二二日宅地造成の許可を得たので、その造成工事をすべく昭和四六年二月一四日本件土地にブルドーザーを入れたものである。更に、昭和四八年二月一六日無断立入禁止の看板を立てたのは、債務者と関文との間の不動産仮処分異議事件において債務者勝訴の判決が確定したのでこれに基づく正当な権利行使としてなしたものである。

(ⅱ)(債務者の害意)について

債務者は、本件ゴルフ場が預託金会員制ゴルフ場であることを知りながら本件土地を買入れたものであるが、それは、当時、関文が財政的に全く窮迫の状態にあつて手形不渡による倒産の危険にさらされていたので、関文を救済し、そのゴルフ場経営事業を維持させるためであつた。もし、債務者が本件土地を買入れなかつたならば、関文は倒産し、本件ゴルフ場の全部においてゴルフができなくなつたのである。債務者の行為は、債権者ら会員に対する害意を有したものではない。

(ⅲ)(本件土地取得経緯の不明朗性及び非倫理性)について

債務者は、債務者ら会員に対し、本件土地の売買による取得を秘匿しようとしたことはない。かえつて、債務者は昭和四四年一二月五日関文の代表者立会のもとに、西コースのスタート小屋ならびに西コース中の南コースとの境界線付近に債務者の所有かつ占有する土地である旨を表示した看板を設置したのである。

(ⅳ)(損失の比較及び本件土地に対する必要性)について

債務者はこれまで宅地造成の準備のため多くの出費をしてきたが、造成ができないとなればこれらの費用、労力は無益となるばかりでなく、本件土地をゴルフ場として残すことになれば、債務者は本件土地を失つたも同様で、関文の弁済供託金によつてこれらの損害を償えるものではない。他方、債権者らは、本件土地でゴルフができなくとも、残りの東、南コース一八ホールにおいて十分プレイできるのであるから、全コースを失いかねなかつた状況にあつたことに鑑みればその損失は小さいというべきである。

2 申請の理由(一)の2(占有保全の訴権による妨害差止請求権)の(1)は否認する。

(二)  申請の理由(二)(保全の必要性)の事実中、債務者が市街化調整区域内に在る本件土地につき昭和四五年一二月二二日東京都より宅地造成の許可を受けたことは認めるが、その余は争う。

第三  疎明関係<略>

理由

一被保全権利について

(一)  ゴルフ場利用権に基づく妨害差止請求権について

1  申請の理由(一)の1の(1)(債権者らの本件ゴルフ場利用権の取得その他)の事実は当事者間に争いがない。従つて、債権者らは関文に対して本件ゴルフ場利用権すなわち本件ゴルフ場を、一般の利用者に比べ、利用料金の点でも、利用の機会の点でも有利な条件で継続的にゴルフを行なうために利用する権利を有するものである。本件ゴルフ場利用権は、右のような権利の内容からみてゴルフ場という物的設備の利用を目的とする一種の債権であることは明らかである。

2  申請の理由(一)の1の(2)(債務者の妨害行為ないし妨害の恐れ)前段の事実は、債権者ら主張の昭和四六年二月四日の債務者の行為がなされた時刻の点を除き、当事者間に争いがなく、債権者松崎巍本人尋問の結果及びこれによつて真正の成立を認めることのできる甲第九号証の記載によれば、債務者の右の行為がなされたのは同日夜半から未明にかけてであつたことが認められる。

右認定の事実及び弁論の全趣旨によれば、債務者は本件土地を転売目的で宅地に造成する工事をするため、今後も、本件土地をブルドーザーで堀起すなどし、その結果債権者らが本件土地でプレイすることが妨害される恐れのあることが疎明される。

3  申請の理由(一)の1の(3)(ゴルフ場利用権の性質)について

(1) 債権者らは、ゴルフ場利用権がゴルフ場に対する占有を伴つた用益権的、支配権的性質をもつた債権であること、ゴルフ場利用権を物権的に保護すべき社会的な必要があること及びゴルフ場利用権に公示性があることを根拠として、ゴルフ場利用権には第三者に対する対抗力ないし排他性があると主張する。

しかしながらゴルフ場利用権がたとえ債権者らの主張するような性質をもつた債権であつて、これを物権的に保護すべき社会的な必要があり、且つその公示性をも具有しているとしても、それはゴルフ場利用権に第三者に対する対抗力ないし排他性を付与して保護すべきであるという立法論の根拠とはなり得るかも知れないが、ゴルフ場利用権が債権である以上、現行法の解釈として、それが第三者に対する対抗力ないし排他性を有するものとは到底解することができない。蓋し、物に対する支配権であつて排他性をその本質的属性とする物権と、人に対する権利であつてその満足が当該人の自由な意思による給付行為に依存するのを建前とし、排他性は有しないところの債権との区別を厳格に維持することは、民法の基本理念である個人人格の独立と契約の自由原則を実定法解釈の次元で保障する所以であつて、債権に第三者に対する対抗力ないし排他性を軽々に認めるようなことは許すべからざることだからである。従つてゴルフ場利用権を、第三者に対する対抗力ないし排他性についての実定法上の根拠を有するところの不動産賃借権と同列に論ずることの失当なることは明らかであるといわなければならない。

のみならず、債権者らがゴルフ場利用権に第三者に対する対抗力ないし排他性を認めるべき根拠として主張するところも、にわかには肯認し難いものがある。以下駄足ながら債権者らの右主張についての判断を簡単に示すことにする。

先ず、債権者らは、会員がゴルフ場の利用について優先的地位を有すること及び会員はゴルフ場を占有していることを理由にゴルフ場利用権は用益権的、支配権的性質をもつた権利であると主張するが、会員がゴルフ場を占有しているものと認めるに足りる疎明資料はないし、会員がたとえゴルフ場の利用について債権者主張のような優先的地位を有するとしても、それによつてゴルフ場利用権が用益権的、支配権的性質をもつものとするいわれはないから、右主張は失当である。

次に債権者らは、ゴルフ場利用権についてはこれを物権化すべき社会的必要性があるとし、縷々その根拠を挙げている。このうちの「ゴルフ場施設の信託財産性」の主張について考察してみるに、成立に争いのない丙第一号証の一、二、証人金田二郎の証言および関文代表者尋問の結果によれば次の事実が認められる。すなわち、ゴルフ場を建設する場合、建設費用として莫大な資金を必要とするが、借入金にも限度があるため、大部分のゴルフ場は預託金によつてこれを賄う方法を採用しており、ゴルフ場経営が株主会員制から預託金会員制に移行した契機もこの点にあつた。本件ゴルフ場においては、資本の額一五〇〇万円を約三〇名の株主会員が負担して昭和四〇年四月一六日関文が設立され、用地買収は設立の二、三ケ月くらい前から行なわれ、用地買収にあたつては、資本に充てるべき一五〇〇万円と借入金三〇〇〇万円くらいを運用してとりかかり、会社設立後四ケ月くらいから会員の募集を始め、その入会預託金をもつて、順次、借入金返済、土地買収代金の支払を行なつてきた。その後、募集手続も順調に進み、まもなく、当初の全コース一八ホールの計画を、本件西コース九ホールを含む二七ホールに拡大し、募集予定数を約三三〇〇人とした。会員募集方法は、当初の第一次募集においては、入会金一八万円、頭金二万円、一六ケ月分割払の方法で約五〇〇名を目標にしたところ、一、二ケ月間で予定数に達して締切り、更に、数次の募集を重ねて、その入会預託金を土工事費、芝張工事費、建物建設費等に充ててきた。昭和四二年八月一五日に東、南の計一八ホールがオープンしたが、その時には応募会員数四〇〇〇名に達し、最終募集価額は四五万円であつた。西コースは約一年遅れて、昭和四三年六月二日オープンし、本件ゴルフ場の現況が完成したのであるが、結局、本件ゴルフ場建設費としては総額二一億三三八七万四〇五二円を要しそのうち六、七億円は赤字であつた。それで関文は会員の追加募集によつて収入をはかり、昭和四七年九月現在で会員からの入会預託金収入の合計額は右建設費総額を超過する二一億三五一三万円になつた(もつとも、右収入中には、関文が本件ゴルフ場とは別に日高ケ丘カントリークラブの建設を予定して昭和四五年一月から昭和四八年二月までに会員募集をして得た預託金五億一〇五一万円が含まれているが、これは右クラブの計画が、土地買収に失敗して、座折したため、右会員募集の応募者を本件ゴルフ場を利用できるGMGの会員に振替えたことによるものであることが窺われる)。以上のとおり認められる。右認定の事実によれば、本件ゴルフ場の建設資金の殆んど大部分は、結果的には会員からの預託金収入によつて賄われたものということができるのであつて、債権者らの、本件ゴルフ場の施設については全会員が潜在的な所有権を有するとか、関文は全会員から本件ゴルフ場施設を信託されているとかの主張は、法律的には勿論採るを得ないが、その心情は充分に理解することができる。そして若しゴルフ事業を営む者が預託金会員制のもとにゴルフ場を建設する場合の実態が凡て右のようなものとすれば立法によつて預託金会員の権利をもつと強く保護する必要があると言えるかも知れない。しかしそのことから直ちに会員のゴルフ場利用権そのものを物権化させる必要があるという結論にはならない。右のほか債権者らがゴルフ場利用権を物権化すべき社会的必要がある根拠として主張している点については、概ね債務者反論のとおりであつて、いずれも未だそのような根拠とするには足りないものと考えられる。

次にゴルフ場利用権には公示性があるとの債権者らの主張について考えてみるに、オープンされたゴルフ場は一見してなに人にもゴルフ場たることが明白であるから、これを当該ゴルフ場利用権の外部的表象とみる余地はある。しかしながらオープンされたゴルフ場の利用権は外部的表象を具えているとみられるとしても、そのことだけでゴルフ場利用権に物権的性質を認めることができないことはいうまでもない。なお債権者らの右主張のうち、その余の根拠によるものについては、債務者反論のとおりであつて、採り得ない。

(2) ゴルフ場利用権が第三者に対する対抗力ないし排他性を有しないものであることは、前判示のとおりであるが、このことは、ゴルフ場利用権を第三者によつて故なく侵害され、または侵害される恐れのあるときにゴルフ場利用権者が当該第三者に対し当該侵害行為の排除または差止を求めることが絶対にできないことを直ちに意味するものではない。凡そ権利は物権であれ、債権であれ、なに人もこれを違法に侵害することは許されない。この意味においても債権も不可侵性を有する。しかして債権の内容が物の利用を目的とするものであるとき、第三者によつて当該物の利用を違法に侵害され、ないしは侵害されようとしている債権者が直接に当該第三者に対して侵害の排除ないしは差止を求めることができるか否かは、周知のとおり、争いの存するところであるが、いやしくも債権に前述の意味での不可侵性のあることを承認する以上、これを肯定的に解すべきは論理上当然であつて、これを否定的に解することは自己撞着であると考えられる。右の場合に債権者は民法第四二三条の規定により債務者に代位して第三者に対し妨害の排除ないし差止を求めることができることを根拠として、前記の問題を否定的に解すべきであるとの見解も考えられるが、債権者の救済方法に二途あつて不可なる理由はなく、又債権者が右代位によつては目的を達し得ない場合も考えられる(これを本件についていえば、成立に争いのない乙第二号証の一、二の各記載によると、関文が債務者を相手に、本件土地についての所有権移転登記抹消登記手続請求権及び占有保全の訴権を被保全権利とし、債務者が本件土地を処分したり或いは占有妨害をなす恐れあることを理由として申請した仮処分事件について、関文敗訴の確定判決が存在することが認められるのであるが、債権者らが関文に代位して債務者を相手に右同様の仮処分申請をした場合右確定判決の既判力に妨げられ目的を達し得ないことも起り得る)のであるから、右のような見解にはくみし得ない。問題は、物の利用を目的とする債権がいかなる場合に第三者によつて違法に侵害されたと言い得るかに在る。思うに、前述のとおり、債権は人に対する権利であつて、その満足が当該人の自由な意思による給付行為に依存するのを建前とするものであり、物の利用を目的とする債権とてその例外ではないのであるから、若し債務者が債権者に対し当該物を債務の内容に従つて利用させようとしないときは、債権者は先ずもつて債務者に対して当該物を債権の内容に従つて利用させるよう求めるべきできであつて、第三者に対して直接にその侵害行為を云々できる筋合ではないというべきである。それ故、物の利用を目的とする債権が第三者によつて違法に侵害されたと言い得るためには、第一に債務者が債権者に対し当該物を債務の内容に従つて利用させようとしており、その結果として、第三者の侵害行為がないとすれば、債権者が当該物を債権の内容に従つて利用できる状態に在る場合でなければならないと考えられる(債権者代位によるときは、かかる要件は不要であるから、その限りにおいては、債権者代位による場合よりも要件が厳しくなる)。次に、債権が本質的に前叙のようなものであり、物の利用を目的とする債権もその例外でない以上、債務者と第三者とは、当該物につき、債務者の債権者に対する義務履行に支障をきたすような内容の契約をも自由に締結することができる。勿論この場合債務者は債権者に対し債務不履行の責任を負うことにはなるが、右のような契約はそれ自体としては適法有効なものである。右のような契約を締結した第三者が当該物につき右契約によつて取得した権利を行使するとき、第三者の行為が債権者にとつて債権の侵害行為として現われることは当然であるが、だからといつてこれを債権者の債権を違法に侵害するものとはなし得ない。蓋し若しこれを債権の違法な侵害とし債権者から第三者に対し直接に該侵害の排除を求め得るものとするときは、民法の基本理念の一つである契約の自由の原則に悖ることになつてしまうからである。それ故、物の利用を目的とする債権が第三者によつて違法に侵害されたと言い得るためには、第二に、第三者が当該物につき債務者との間に有効な取引関係に立つものではなく、全くの無権利者でなければならないものと考えられる。当裁判所は、物の利用を目的とする債権につき、以上二つの要件のもとに第三者による違法な債権侵害が成立するものとし、その場合債権者は直接第三者に対して当該侵害行為の排除ないし差止を求めることができるものと解するものであるが、ゴルフ場利用権も前判示のとおり、物の利用を目的とした債権の一種と解されるのであるから、右説示したところに従い、ゴルフ場利用権を有する者はこの権利に基づき、この権利を違法に侵害し、又は侵害しようとする第三者に対し、直接に、その侵害の排除ないし差止を求めることができるものと解される。以下、右のような見地に立つて判断を進めることにする。

4  申請の理由(一)の1の(4)(債務者の無権原ないし権利濫用等)について

(1) 本件売買契約の締結及び右締結当時における、本件土地の所有関係が債権者ら主張のとおりであつたことは、当事者間に争いがない。

(2) 債権者らは、本件売買契約は、売主関文にとつてその存立の基礎をなす重要な営業用財産の一部を譲渡する行為であるから、商法第二四五条第一項第一号の規定により、関文の株主総会における同法第三四三条に従つたいわゆる特別決議がなされることを必要とするところ、右特別決議はなされていないから、本件売買契約は無効であると主張する。

よつて案ずるに、商法第二四五条第一項第一号によつて特別決議を経ることを必要とする「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡」とは、単なる営業用財産の譲渡をいうのではなく、営業そのもの、すなわち一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または一部を譲渡し、これによつて譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ、法律上当然に同法第二五条に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいうと解するのが相当である(最判昭和四〇年九月二二日民集一九巻六号一六〇〇頁、最判昭和四一年二月二三日民集二〇巻二号三〇二頁参照)ところ、関文代表者の供述及び弁論の全趣旨によれば、本件売買契約の目的となつた本件土地は、関文が経営するゴルフ場の一つである本件ゴルフ場の一部である西コース九ホールをなすものと認められ、関文の重要な営業用財産の一部と認めることはできるが、本件売買契約によつて関文が債務者に対して本件土地におけるゴルフ場経営活動を受け継がせることにしたものと認むべき疎明資料は全くなく、従つて本件売買契約が商法第二四五条第一項第一号にいう「営業ノ……重要ナル一部ノ譲渡」に該当するものと認めることはできない。それ故、その余の判断をなすまでもなく、本件売買契約が関文の株主総会の特別決議を欠くために無効であるとの、債権者らの前記主張は、失当であつて採ることができない。

(3) 次に、債権者らの、弁済供託による本件売買契約の失効の主張について考察する。

先ず、債権者らは、本件売買契約は、本件土地の所有権を関文から債務者に決定的に移転してしまう趣旨でなされたものではなく、運転資金に窮した関文が債務者から融資を受けることになつた際、融資金を本件土地の売買代金の形とし、その返済債務の担保として、本件土地所有権を債務者に移転するためになされたものであつて、実質上はこれによつて売渡担保を設定したものである、と主張する。

よつて案ずるに、昭和四三年一〇月二一日に締結された本件売買契約には、その締結の際に、関文は、翌昭和四四年三月末日までに本件土地を債務者から、三億一四八八万円で買戻すことができる旨の特約が付せられていたこと、本件売買契約の売買代金は本件土地を一坪当り五〇〇〇円と評価して決められたものであること、その後本件土地各筆についての債務者名義の所有権移転登記は債権者ら主張のとおりになされたが右買戻特約の登記はいずれの土地についてもなされなかつたこと、本件売買契約は債権者ら主張のように売買物件中に他人所有地を含んでいたこと、八王子市上川町二〇九二番地原野七七五三坪のうち本件売買の対象になつたのは西コースに含まれる分だけで南コースに含まれる部分は概算三〇〇〇坪として本件売買の対象から除外されたのであるが、本件売買契約締結のときに右の本件売買の対象となつた分の面積について実測が行われなかつたこと、本件売買契約の中に会員の権利について配慮した規定が存しないこと以上の事実はいずれも当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨及びこれによつて原本が存在し、且つ真正に成立したものと認められる丙第三号証(これは目下当庁に係属中の関文と債務者との間の本件土地所有権確認並びに抹消登記手続請求事件で当裁判所指定鑑定人木村宇佐治によつてなされた昭和四三年一〇月当時の本件土地の価格についての鑑定結果を記載したものである)の記載によれば、本件売買契約締結当時の本件土地の時価は一坪(3.3平方メートル)当り二万六一五円であつたと認められ、従つて本件売買契約における一坪当り五〇〇〇円という代金額は右時価に較べて著しく低廉であつたと認められ、また前示乙第二号証の一の記載と弁論の全趣旨によれば、債務者は前記買戻期限経過後も、更には関文から本件土地の引渡を受けた後である昭和四五年一月以降も関文が西コースを会員に使用させるのを事実上黙認してきた事実が認められるのであるが、しかし、成立に争いのない甲第一号証、同乙第二号証の一、二、関文代表者の供述により真正に成立したものと認められる乙第三ないし第五号証の各記載並びに証人馬場梅告及び関文代表者の各供述を総合すると、本件売買契約締結の経緯は、以下判示のとおりであつたことが疎明される。すなわち関文は、昭和四一年頃から株式会社冨士工務店(のちに商号株式会社冨士工と変更した)に請負わせて長瀞のゴルフ場及び本件ゴルフ場のクラブハウスを建設し、同会社にその請負代金合計四億余円を債務を負担し昭和四三年一〇月当時その他の融資先からの借入金を含めて合計八億五〇〇〇万円くらいの負債があつた。関文は、同年九月までは株式会社冨士工務店から一〇〇〇万円ないし五〇〇万円の単位で時借りしてその場の資金繰りに間に合せてきたが、同年一〇月に至つて経営はいよいよ窮迫し同月中に満期の到来する一〇〇〇万円の手形の支払をすることができず倒産寸前の状態に陥つた。そこで関文の社長森川幸吉は、本件土地を担保として他から融資を受けるべく奔走し、その他可能な限りの手段をつくして資金の調達に努めたが、果さず、やむなく株式会社冨士工務店に対し更に一〇〇〇万円の融資を懇請した。しかし関文の実情を知つていた同会社はこれを拒絶し、債務者の役員をも兼ねていた同会社社長馬場梅吉は、関文のため、債務者からの融資について斡旋の労をとつた。債務者は、これに対し、本件土地を宅地に造成して転売する目的でその買受けを申入れ、本件土地を担保として金員の融通をすることはこれを拒絶した。関文としては、当時前記のように多額の債務を負担し、右の一〇〇〇万円の支払ができても、その後次々に支払を迫られる負債をかかえており、その支払ができるあてがなく、借入金ということにすれば更にその利息の支払が加算されることになつて負担が増加することなどを考慮し、他方本件ゴルフ場としては、西コースが使えなくなつても東コースと南コースだけでプレーが可能であつたところから、倒産を避けるためには、本件土地を手離してもやむを得ないと決意し、これを債務者に売却することにした。そして両者の話合によつてその代金は一坪当り五〇〇〇円合計二億六二四〇万円とすることになつたが、関文としては数か月の時間的余裕があれば本件土地を他により高額で売却することができるかも知れないと考え、そのため債務者に懇請して、買戻期限を約五か月後の昭和四四年三月三一日とする買戻の特約を付することとし、その代金はそれまでの金利、経費、税金などを考慮して一坪当り六〇〇〇円、合計三億一四八八万円と定められた。以上のように一応認めることができる。

以上認定のとおりとすると、本件売買契約は、債権者らが主張するように関文が債務者に対して売渡担保を設定する目的でなされたものと認むべきか否か、にわかに決し難いものがあるが、これを肯認するについては躊躇せざるを得ない。ほかに債権者らの右主張を認めるに足りる疎明資料はない。

以上のとおりとすると、関文は、前判示の買戻期限の経過後に債務者から本件土地を買戻す余地はなかつたことになるから、前判示の買戻期限の経過後の昭和四七年一〇月二〇日に関文のした債権者ら主張の弁済供託により本件売買契約が失効するいわれはないことになる。

(4) そうすると債務者は現在本件土地の所有者と一応認められ、これにつきなんらの権原をも有しないものということはできない。

(5) 本件土地が債務者の所有に帰しているものと一応認められることは右のとおりであるが、前示乙第二号証の一、二の各記載によれば、債務者は関文から遅くとも昭和四四年末には本件土地の引渡を受けたことも一応認められるし、また弁論の全趣旨によれば前示2で認定の債務者の行為は、債務者が本件土地売買契約の目的とした本件土地の宅地造成工事に着手するためになされたものと認められるのであつて、債務者のかかる行為をもつて、権利の濫用ということはできない。

(6) 以上のとおりであるから、債権者らは、本件ゴルフ場利用権に基づき債務者に対し前判示の債務者の行為の差止を求めることはできないものということになる。

(二)  占有保全の訴権に基づく妨害差止請求権について

債権者らが本件土地を直接にも、間接にも占有しているものと認めるに足りる疎明資料はないから、その余の判断をなすまでもなく、債権者らが債務者に対して占有保全の訴権に基づく妨害差止請求権を有するものとは認められない。

二保全の必要性について

債権者松崎巍本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、申請理由(二)(保全の必要性)の事実は、ゆうに肯認できる。

三債権者らに保証を立てさせて仮処分を許すことの当否について

債権者ら主張の被保全権利についての疎明がないこと前叙のとおりであるが、当裁判所は左記の理由により、債権者らに債務者に生ずべき損害のため相当額の保証を立てさせて債権者らが必要としている仮処分を許容するのが相当であると思料するものである。すなわち、

債権者ら主張の被保全権利の存否が本案訴訟によつて確定されるべきものであることはいうまでもない。因みに、関文と債務者との間の本件土地所有権確認並びに抹消登記手続請求事件も目下当庁に係属中である(当庁昭和四六年(ワ)第一五六二号)。当裁判所は本件に顕われた疎明資料から債権者ら主張の被保全権利は認め難いとの結論を採るものであることは前叙のとおりであるが、既に述べたとおり、前示丙第三号証の記載によれば、本件売買契約締結当時の本件土地の時価は一坪当り二万六一五万円であつたと認められ、従つて本件売買契約における一坪当り五〇〇〇円という代金額は、右時価の四分の一以下のものであり、右時価に較べて著しく低額であつたと認められること、本件売買契約に付せられた買戻特約の買戻期間が僅か五か月余にすぎず、かなり短いものであつたこと、ひたすら本件土地を担保として融資を受けることを望んでいた関文は当時万一にも金策に失敗すれば、倒産の恐れがあつたものであり、著しい窮状にあつたこと等から推すと、本案の訴訟または関文と債務者との間の前記訴訟において、本件売買契約は、債務者が関文の窮迫に乗じて締結した暴利行為であつて公序良俗に反し無効なものであると認定される可能性が絶無とはいえず、又本件売買契約が債権者らが主張するように本件土地の所有権を決定的に移転することを目的とした売買ではなく、売買代金名義の実質上の融資を担保するためのいわゆる売渡担保の設定であつたと認定される可能性がないとは断言し難い。そして万一本件売買契約が実質上売渡担保の設定であつたと認定されることになれば、前示買戻特約に定めた買戻期限は買戻代金支払の形式で実質上の融資金を返済すべき期限を意味するものと解される余地がないではなく、従つて、関文が買戻期間を徒過したときは債務者に清算の義務が生じ、清算が結了するまでは本件土地の所有権は確定的には債務者に移転せず、他方関文は債務者から清算残代金の提供を受けるまでは、約定の買戻代金―売渡担保の場合は、形式上は売買代金として融資するのであるから、買主は形式的には金銭債権を有しない。しかし売買代金の実質は貸金にほかならないのであるから買主が売買代金として交付した金額をもつて貸付金額と解し、この金額とこの金額を貸金元本とする利息制限法の制限内の利息相当額とを合算した金額を超過する金額が買戻金額として定められているときは該超過部分は実質上利息制限法に違反する約定として無効なものと考えられる―と買戻期間経過後提供時までの遅延損害金を提供ないし弁済することによつて本件売買契約を失効せしめ、本件土地を取戻すことができると解される余地が全くないとはいえない。しかるに関文が昭和四七年一〇月二〇日に債務者のため、債権者ら主張のとおり弁済供託をしたことは当事者間に争いがなく、右供託にかかる金員は関文がこれを債務者に弁済のため提供しても債務者がその受領を拒否することが明白であつたので右のように供託したものであることは前示乙第二号証の一の記載及び弁論の全趣旨によつて疎明されるところである。右弁済供託がなされるまでに債務者が関文に対して清算残代金の提供をしたことが窺えるような疎明資料はない。そこで若し、仮に関文による本件土地の取戻につき前叙のような解釈が採り得るものとすれば、関文のした右認定の弁済供託は有効なものとなり、これによつて本件売買契約は失効し、本件土地の所有権は債務者から関文に復帰したことになり、債務者は今や本件土地については関文に対する関係においてもなんらの権原を有しないものということになる(なお、かかる判断をすることが、関文と債務者との間の前示仮処分事件の確定判決の既判力に牴触するものでないことはいうまでもない)。他方、関文が、債務者は本件土地につきなんらの権原を有しないものとし、債権者らに対して本件土地を本件ゴルフ場西コースとしてゴルフプレイのため利用させようとしていることは弁論の全趣旨に徴して明らかであるから、一の(一)の3の(2)で説示したところによれば、債権者らは本件ゴルフ場利用権に基づき、債務者に対し、一の(一)の(2)で判示したような債務者の妨害行為の差止を求めることができるということになる。これを要するに、当裁判所としては、債権者ら主張の申請の理由(一)の1の被保全権利の存在が本案訴訟で認められる可能性がなくはないこともこれを認めざるを得ないものと考えるものである。他方本件における仮処分の必要性は前認定のとおり緊急にして明白なものである。かかる事情のもとにおいて債権者らの本件仮処分申請を、被保全権利についての疎明なしと排斥するのは失当であつて、債権者らに債務者に生ずべき損害のための保証を立てさせてその必要としている仮処分を許容するのが相当であると考えられる。

しかして当裁判所は、本件諸般の事情に鑑み、債権者らに立てさせるべき保証の金額は七億円をもつて相当と考える。

四結び

以上のとおりであつて、債権者らの本件仮処分申請は、債権者らに右保証を立てさせれば理由があることになるから、主文第一項記載のとおり仮処分を命ずることにする。申請費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用する。

よつて主文のとおり判決する。

(宮崎富哉 山口久夫 遠藤賢治)

当事者目録

昭和四八年(ヨ)第七六四号事件債権者

松崎魏

外四名

昭和四八年(ヨ)第一三三三号事件債権者兼別紙選定者目録(一)記載の選定者の選定当事者

杉崎宗一

他一名

昭和四八年(ヨ)第一六一四号事件債権者兼別紙選定目録(二)記載の選定者の選定当事者

今井剛光

昭和四八年(ヨ)第三一六〇号事件債権者兼別紙選定者目録(三)記載の選定者の選定当事者

浦辺百代

右債権者ら訴訟代理人

中嶋正起

佐々木敏行

八掛俊彦

昭和四八年(ヨ)第七六四号、第一三三三号、第一六一四号、第三一六〇号事件債務者

小松地所株式会社

右代表者 小林直巳

右訴訟代理人 長谷部茂吉

伊達秋雄

三宅陽

選定者目録(一) 東義光

他五九二名

選定者目録(二) 小佐野茂治

他一八〇名

選定者目録(三)    野村

他三三三名

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例