東京地方裁判所 昭和48年(ワ)10236号 判決
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【判旨】
原告の主張は、本件賃貸借は二〇年の期間の満了によつて終了したというものであるから、まず、原、被告間に期間を二〇年とする旨の約定がなされたか否かにつき判断する。
<証拠>によれば、本件賃貸借の締結に当り、原告はその代理人山田に対し期間を二〇年とする旨の依頼を行つていたことを認めることができるが、成立に争いのない甲第三号証(賃貸借契約書)には、期間について一旦二〇年と記載された後一四年と訂正されている記載があるから、これらによれば、当初本件賃貸借をなすに当つて少なくとも原告側は締結時から二〇年とする期間を念頭に置いていたことが窺えるけれども、同証言によれば、その後交渉の結果、期間二〇年とするものの、その始期を原告が本件土地を取得した昭和二二年に遡らせ、従つて締結時の昭和二八年までの六年間は前賃借人天沼が使用したものとして、右六年を控除した一四年の期間とする旨決めたことを認めることができ、この一四年間の約定は、甲第三号証の記載すなわち「前借地人天沼周二郎契約ヨリ継続シテ弐拾箇年トシ向フ拾四ケ年ノ期限トス」との書込のあること及び期間を特定する「自昭和弐拾八年拾弐月拾六日至昭和四拾弐年六月拾弐日」との部分が訂正されていないことからみても、原告主張のように、一旦契約時から二〇年との合意が成立した後、変更されて一四年となつたとみることは困難である。(なお原告は右始期を昭和二二年に求めたことには、天沼の賃借開始時を誤つて認識した錯誤があると主張するが、原告本人尋問の結果によれば、契約締結当時天沼が昭和二二年以前から賃借していたことを原告が知つていたことは明白であり、また「始期」といつても、本件の場合、厳密に天沼の賃貸借の始期を求めそこから本件賃貸借を設定しようとしたものではなく、単に原、被告間の賃借期間を定めるに当つて、原告が本件土地を取得した時期を基準としようとの意図で、その間の六年を天沼の賃借期間として表現したものと理解するのが相当であり、従つて原告所論の錯誤は存しない。(また、原告は本訴に先行して申立てられた調停事件で、被告関根が本件賃貸借の期間は二〇年である旨主張したので原告側もやむなくこれを認めることにしたと主張するが、右原告の主張事実や期間を二〇年と約定していることを認めるに足りる証拠はない。)
以上の認定事実によると、本件賃貸借の期間は一四年として約定されたものと認めることができ、<反証排斥略>、他に右認定を左右するような証拠は存しない。
そこで右一四年と定めた約定の効力につき判断するに、本件賃貸借は、新たな賃貸借として締結されたものであり(賃借期間の途中で賃借権の譲渡がなされ、譲受人との関係で賃貸期間を残存期間と定めることはもちろん有効であるが、本件の場合は、原告の主張によつてもそのような事例ではない。)、天沼が使用したとする六年間は単に期間を定めるについて一事情として考慮されたにすぎないと認められるから、右一四年間とする期間の定めは、借地法第一一条により期間の定めがなかつたとみなされるべく、そうであればその期間は同法第二条第一項をもつて律すべきものとなり、本件賃貸借の期間は昭和二八年一二月一六日から三〇年間ということになる。
(山田二郎 久保内卓亜 内田龍)