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東京地方裁判所 昭和48年(ワ)2806号 判決 1974年3月29日

原告

細川はつ

被告

奥園敏彦

主文

一  被告は原告に対し金一九七万九九九〇円およびこれに対する昭和四八年四月一日以降支払い済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを六分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は、原告勝訴の部分に限り、かりに執行することができる。

事実

第一請求の趣旨

一  被告は原告に対し金六二七万九一〇四円およびこれに対する昭和四八年四月一日以降支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決および仮執行の宣言を求める。

第二請求の費旨に対する答弁

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第三請求の原因

一  (事故の発生)

原告は、次の交通事故によつて傷害を受けた。

(一)  発生時 昭和四六年一二月二八日午後五時二五分頃

(二)  発生時 熊本県阿蘇郡長陽村字数鹿流

(三)  加害車 普通貨物自動車(福岡四四さ四八―二五号)

運転者 訴外坂田謙二

(四)  被害車 軽乗用自動車(八福山あ六九―二八号)

運転者 訴外細川修

被害者 原告(同乗中)

(五)  態様 一時停車中の被害車に加害車が追突

(六)  被害者原告の傷害部位程度は、次のとおりである。

(部位) 頭部外傷、左前額部挫創、頭蓋骨骨折等

(入院) 昭和46・12・28~47・1・22 阿蘇中央病院

(通院) 昭和47・2・4~48・1・12 三宿病院(実日数二四日)

(七)  また、その後遺症は次のとおりであつて、これは、自賠法施行令別表等級の六級に相当する。

(女子の顔面に著しい醜状瘢痕)=七級

(嗅覚脱出)=一二級

二  (責任原因)

被告は、加害車を所有し自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条により、原告の損害を賠償する責任がある。

三  (損害)

(一)  治療費等

1 入院治療費 二一万四六九四円

2 通院費 一四万五七七六円

3 付添看護費 一七万六四二〇円

4 雑費(交通費含) 一四万九九一四円

(二)  休業損害

原告は、右治療に伴い、昭和四六年一二月二八日から昭和四八年一月二六日まで休業を余儀なくされ六六万七三〇〇円の損害を蒙つた。

1 主婦としての家事作業分 三四万二三〇〇円

(一日当り) 一〇〇〇円

(労働能力喪失率) 昭46・12・28~47・7・31

一〇〇%

昭47・8・1~48・1・26

七〇%

2 和服仕立業分 一九万五〇〇〇円

(一月当り) 一万五〇〇〇円

(労働能力喪失率) 昭46・12・28~48・1・26

一〇〇%

3 下室人の食事世話作業分 一三万円

(一月当り) 一万円

(労働能力喪失率) 昭46・12・28~48・1・26

一〇〇%

(三)  逸夫利益

原告は、前記後遺症により、少なくとも四年間労働能力を喪夫した状態で稼働しなければならず、次のとおり、六九万円の逸失利益を受けた。

1 主婦としての家事作業分 一八万二〇〇〇円

(労働能力喪失率) 一四%

2 和服の仕立作業分 四四万九〇〇〇円

(労働能力喪夫率) 四年間平均七〇%

3 下宿人の食事世話作業分

(労働能力喪失率) 一四%

(四)  慰藉料 三九三万五〇〇〇円

(五)  弁護士費用 三〇万円

四  (結論)

以上のとおり、被告に対し、原告は六二七万九一〇四円及びこれに対する原告が被告に対し最終時支払請求をした日以後の昭和四八年四月一日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第四被告の請求原因に対する答弁

請求原因一項のうち、(一)ないし(五)の事実は認めるが、(六)(七)の事実は不和。

同二項の事実は認める。

同三項の事実は不知。

第五被告の抗弁

(一)  過失相殺

本件事故現場は、通行車両の多い国道上であつて、駐車禁止個所であつた。原告の実子である訴外細川修は、当時停車し、道路下に小用を足しに車を離れたもので、駐車禁止に違反したものであり、仮にそうでないものとしても安全な場所に停止しなかつた点で過失があるものであり、原告は被害者側の者として、右修の過失は損害算定に当り斟酌さるべきである。右のような修の過失は原告自身の過失とも考えられる。

(二)  損害のてん補

1  自賠責保険からのてん補 三一八万一八七四円

2  被告の損害に対する弁済分 一七万七九八〇円

(内払金一〇万円、看護料<訴外寺西誠子に対する支払>三万五〇〇〇円、衣服代<訴外細川修に支払>四万円、ネマキ代<原告に支払>二九八〇円)

3  被告の立替分 三一万五五四一円

(原告使用電話の立替五万八六九一円、原告の宿泊旅館代立替九九二〇円、見舞客の旅館代立替一五万七四〇〇円、細川修旅館代立替六万九四四円〇、細川薫付添代立替一万三六〇〇円、見舞客に対する接待費立替六四九〇円)

弁済にならないとすると、原告に対し被告は右同額の不当利得返還請求権があるので、対当額で相殺する(昭和四九年二月一九日その旨の意思表示をした。)。

第六原告の抗弁に対する答弁

抗弁(一)の事実は否認する。訴外細川修は、事故現場の路側にエンジンを作動させたまま、かつ停止信号を発信しつつ、停止中のものであり、「駐車」ではなく、何らの過失もない。仮に修に過失があつたとしても原告がその過失責任を負ういわれはない。

同(二)の事実は認めるが、1以外のものはいずれも本件請求外のもので弁済とはならない(内払金一〇万円は細川薫が受取つたもので、細川薫の旅館代、付添代は原告には関係ない。看護料、衣服代は原告を含む被害者三名(訴外細川薫、同細川大輔)分として受領したものであり、見舞客の旅館代及び接待費は被告において任意に支払つたものであり、ネマキ代は原告及び訴外薫の二名分として現物給付を受けたものである。原告使用電話は被害者三名分として東京等との連絡のため使用されたものであり、原告の旅館代も退院後の療養期間内であり、当然の支出である。これらの支出は、本件事故に起因する直接・間接の損害として被告が任意に支払つたものであり、仮に贈与としても取戻しの余地はない。

第七証拠関係〔略〕

理由

一  (事故の発生、責任の帰属)

昭和四六年一二月二八日午後五時二五分頃、熊本県阿蘇郡長陽村字数鹿流において、訴外坂田謙二の運転する加害車が、訴外細川修が運転し、原告の同乗しており、当時一時停止中であつた被害車に追突したこと、被告が加害車を所有し、これを自己のため運行の用に供していたものであることは当事者間に争いがない。

これによると、特段の事情のない限り、被告は、自賠法三条に基づき、原告の蒙つた損害を賠償しなければならない。

二  (傷害の部位・程度)

〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

(一)  原告は、本件事故により、頭部外傷、左前頭部挫創、頭蓋骨骨折(左前頭蓋底及び左眼窩線状骨折)、脳内出血の受傷を受け、事故当日から昭和四七年一月二二日まで熊本県阿蘇郡阿蘇町所在の阿蘇中央病院に入院して治療を受けた。入院当初三週間は絶対安静を要する状況にあり、その後の加療により軽快したが、退院時も歩行もできず、臥床を余儀なくされる状態にあつた。

(二)  原告は、右退院後三日間、阿蘇町の旅館竜田荘、ついで三日間大牟田市の中福旅館で各静養し、その後自宅のある東京へ戻つた。そして、昭和四七年二月四日から東京都目黒区上目黒所在の三宿病院に通院して治療を受けるに至つた。同病院への通院は昭和四八年一月一二日までに二四日に及んだ。その間、昭和四七年三月末頃までは安静臥床、複視、歩行障害、強い頭痛等のため自宅において臥床を余儀なくされたばかりか、付添看護を要する状態にあつた。

(三)  右治療によるも、昭和四八年一月末頃になつても、原告には、低電圧速波の境界脳波、左・右とも骨導・気道障害による聴力の軽度異常、視力(特に左)の低下、嗅覚全脱出(自賠法施行令別表第一二級該当)、眼窩骨折による陥凹変形と六センチメートルの外傷瘢痕(七級該当)、上顎第一切歯歯芽骨折、三又神経痛、頭重感、眩暈、耳鳴(一二級以上)、複視等が残つた。

(四)  原告は、右のような症状のため、家事に当るようになつたのも、昭和四八年一月以降のことであり、昭和四九年二月時においても、複視等のため、思う方向に歩けない状況にある。

以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

三  (損害)

(一)  治療費等

1  入院治療費

〔証拠略〕によれば、原告は阿蘇中央病院に入院に際し二一万四六九四円の治療費を支出したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

2  〔証拠略〕によれば、原告は前記三宿病院における治療に際し、治療費一三万七八八〇円の支出を余儀なくされたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

3  付添看護費

〔証拠略〕によれば、原告は前記したように付添看護を要する状態にあつたので、昭和四六年一二月二九日から昭和四七年一月二五日までと、同月二八日から同年二月一五日までは訴外寺西誠子に、ついで同月一六日から同年三月三一日までは訴外推谷倫子に付添看護を依頼し、一五万九二九〇円の支出を要したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

4  雑費

〔証拠略〕によれば、原告は、入院期間中及び阿蘇・大牟田における旅館での療養期間中、同人の栄養補給品の購入及べ付添人、見舞客らの昼食、甘味料等のため、三万一九九六円を(但し、本件事故によつては、原告の他、原告の嫁の細川薫、孫の大輔も負傷し、同時に入院していた期間もあり、その間は人数分で按分してある。)同人及び付添人らの日用雑貨購入(雑誌・書籍代を含む)のため一万〇四四七円を各要し、又、治療に当つた医師・看護婦に対し一万四〇〇〇円相当の謝礼をなしたこと、原告は本件事故のため眼鏡を破損され、その修復のため六八〇〇円の支出を要したこと、同人は帰京に際してのタクシー代、雑費等として四九〇〇円の支出を要したこと、又、同人の入院期間、同人の付添人らは病院への通院に要したタクシー代、或いは自家用車のガソリン・修理代等として一万〇六三四円を要し、原告の見舞に訪れた、原告の夫、子らは、その旅費等として四万九七八〇円を要したこと、原告の入院期間中及び旅館での療養期間中、原告の東京における家族らは、原告ないしその付添人等との電話連絡のため二万一三五七円の支出を要したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

ところで、原告の住居地と受傷及び入院をした場所とが遠距離にあり、しかも前記したように原告が受傷当初は重篤症状にあつたため、原告らの家族において、相互の連絡のための費用、見舞・付添のための諸費用や旅費、日用雑貨の購入等のため、通常以上に多額の支出を余儀なくされたことは容易に首肯できるところであり、このうちの相当性のある支出分は被告において負担を要するものであることはいうまでもない。しかし、被害者側としても、事故のために支出を余儀なくされる諸費用を、必要な最少限度で賄うように努力すべき義務があるから(何が、必要最少限度かは、その置かれた状況や、被害者らの社会的身分、土地の風俗等により差異があり得るところである。)、受傷等に伴つて支出されたものの中でも、相当性のないものはこれを加害者に請求し得ないものというべきである。そのように考えると、原告の受傷に伴い、原告ないしその家族らが支出を要した前記した諸費用のうちには、付添人・見舞客らの昼食・甘味品購入費等の一部、書籍・雑誌購入等の一部、家族らの旅費の一部、電話料金の一部(特に、これについては、後記するように、原告及び付添人らから東京等への長距離電話料金五万八六九一円を被告において支払つている事実を斟酌せざるを得ない。)等には、相当性のあるものとは未だ認められないものも含まれているので、被告において負担すべき本件事故と相当因果関係にあるものは右支出のうち一〇万円と認めるのが相当である。

(二)  休業損害

〔証拠略〕によれば、原告は当時六一才の家庭の主婦でありり、家事に従事する傍ら、下宿人二名の賄に当る(但し、事故直前一名は転居)ほか、内職として事故の年は平均して月当り一万五〇〇〇円の支払を受けて和服仕立に当つていたこと、原告は、前記受傷及び治療に伴い、昭和四八年一月末頃までは和服仕立は勿論のこと、家事にも従事しなかつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

右事実によると、原告の労働能力は月当り五万円に当ると評価するのが相当であるが、前記したような傷害の部位・治療経過、特にその実日数に鑑みれば、右期間内の原告の労働能力の喪失は、昭和四七年七月末頃までが一〇〇パーセント、その後が七〇パーセントと認めるのが相当であり、そうすると、原告の右期間内の労働能力喪失による損害は五六万円と算定するのが相当である。

(三)  逸失利益

前記したような原告の後遺症状の程度、年令、性別によると、原告は、本件事故に遭遇していなければ、昭和四八年二月から少なくとも四年間以上、前記認定した程度の労働能力を発揮し得たものと推認されるが、前記後遺症のため、労働能力を極めて控え目に見ても、三五パーセント以上喪失した状態で稼働しなければならなくなつているものと推認され、これの昭和四八年三月末時の現価を、本判決言渡時までは単利(ホフマン式)、その後は複利(ライプニツツ式)により年五分の中間利息を控除して算出すると、原告主張の六九万円を下ることのないことが明らかである。原告の労働能力喪失程度を評価するに当つては、同人に前記したような神経症状があるほか、複視の存在及び嗅覚の全脱出があることを重視すべきである。これら症状は、家事従事者にとつても、多大の影響を受けたことは明らかである。

(四)  慰藉料

原告の性別、年令、受傷の部位・程度、治療経過、後遺症状等に鑑みると、原告が本件事故により受けた精神的損害は三〇〇万円をもつて慰藉さるべきと認めるのが相当である。

四  (過失相殺及び弁済の主張について)

(一)  (過失相殺について)

〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

1  本件道路は豊後竹田方面と熊本方面とをほゞ東西に結ぶ国道(五七号線)であつて、有効幅員七メートル(両側に北側一・二、南側一メートルの路肩部分のある、平坦なアスフアルト舗装道路である。本件道路は、事故地点から竹田方面はほぼ直線であるが、事故地点から熊本方面は左に大きくカーブしている。同所付近は駐車禁止規制がなされた区域にある。

2  訴外細川修は、妻薫、長男大輔、母原告とともに、被害車を運転して九州旅行の途上にあつたが、当時阿蘇山見物を終え、当夜の宿泊先であつた南阿蘇国民宿舎に向つていた。ところが、右細川修は、小用をもよおしたので、本件現場において、エンジンはかけたまま、サイドブレーキを引いて、車外線をまたいだ格好で被害車を止め、自らは降車して路外に降り、小用をたしていた。当時、被害車中には、後部座席に原告が、前部助手席に細川薫及び大軸が座つていた。なお、本件現場から熊本よりの地点に左側が広いところがあつた。

3  当時まだ明るく、道路は乾燥していた。

4  訴外坂田謙二は加害車を運転し、竹田方面から熊本方面に向けて時速約六〇キロメートルの速度で走行していたが、早く帰宅したくなつたので、直線道路に入つたところで、対向車のないことを確認したうえ、加害車を時速七〇キロメートル以上に加速して先行する二台の大型トラツクの追越にかかつた。そして、二台目の大型トラツクの追抜きを終つた段階で、約六〇メートル前方の対向車線内に対向してくる車を認め、衝突の危険を感じ、急に左転把し、そのため加害車は長さ二一・二メートルの右車輪のタイヤ痕(コーナーリング痕)を残して自車線に戻つたが、その地点で、はじめて停止していた被害車に気付き、急ブレーキをかけると共に右転把した。加害車は急激なハンドル操作のため、左側から転倒していき、左側の前輪及び後輪のタイヤ痕(コーナーリング痕)だけを印して滑走していき(前輪分一一・七五メートル、後輪分一三・一メートル)、被害車の後部に加害車の左側ドア上部で衝突し、被害車を約九・五メートル先にはねとばしたうえ、自車は約三二・五メートル進行してようやく停止した。

以上の事実が認められ、これに反する証拠はない。これによると、本件事故は駐車禁止の場所であるから、本件被害者の停止が道交法に違反しないものであつても、被害車の停車は危険な行為ではあるけれども、前記したような本件事故の態様に照らすと、本件事故は、前方がカーブとなつていて対向車との安全を十分確認し得ないのに、追越を開始し、対向車及び被害車を発見して急激なハンドル操作をした訴外坂田の過失が重大なのであつて、本件においては、細川修が被害者側のものに当るとしても、原告の損害賠償を算定するについて、それを減額しなければ当事者間に公平を害するとは認められない。したがつて、過失相殺の主張は理由がない。

(二)  (弁済)

原告が本件損害に関し、自賠責保険から三一八万一、八七四円の保険金給付を受けたことは当事者間に争いがない。

ところで、被告が原告らの受傷治療に伴い、五〇万円弱の支出をしていること、そのうちには原告の損害に対する支払分もあることが当事者間に争いがないけれども、これらが本件請求内の損害についてのものであることは認められず、しかも過失相殺もしない本件では、その余について判断するまでもなく、これらが本件請求に影響を及ぼすものではない(寺西誠子に対する看護料の支払も、〔証拠略〕によれば、被告において支払つたのは昭和四六年一二月二九日から昭和四七年一月二五日までの分であるのに対し、本訴において請求しているのは同月二八日以降の分である。その余も同じである。)。

被告は、電話料金、旅館宿泊代等を原告に対し返還請求し得る旨主張するが、前記したような治療経過等に鑑みれば、これら費用は、未だ本件事故と相当因果関係になかつたものとは認められず、仮に相当性に疑いのあるものがあるとしても、そのような贈与的な弁済分の返還を求め得る根拠はない(法律上の原因なくして得る利益には当らない)。ただ、そのような弁済の事情も慰藉料額算定に当つては斟酌されることがあり得るにとどまる。

五  (弁護士費用)

〔証拠略〕によれば、原告は、被告が任意の弁済に応じないため、その取立を弁護士である本件原告訴訟代理人に委任し、弁護士費用として三〇万円を支払う旨約したことが認められ、これに反する証拠はない。

そして、自賠責保険金が、本件提起後に本件原告訴訟代理人の尽力等により給与されるに至つたことも当裁判所に顕著であるから、これも弁護士費用算定に当り斟酌されるべきである。

そして、本件事案の内容、審理の経過、認容額と右の如き事情等を考慮すると、本件事故と相当因果関係にある弁護士費用の昭和四八年三月末時の現価は、原告主張の三〇万円を下ることはないと認めるのが相当である。

六  (結論)

してみると、原告は被告に対し金一九七万九、九九〇円及びこれに対する事故発生日以降の日である昭和四八年四月一日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を請求し得るから、原告の本訴請求を右限度で認容し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言については同法一九六条を、各適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 田中康久)

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