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東京地方裁判所 昭和48年(特わ)168号 判決 1973年8月30日

被告人 改造図書出版販売株式会社 (代表者代表取締役内川順雅) 外一名

主文

1  被告人改造図書出版販売株式会社を罰金四五〇万円に

被告人内川順雅を懲役六月に

それぞれ処する。

2  被告人内川順雅に対し、この裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となる事実)

被告人会社は、東京都品川区上大崎五丁目六三九番地に本店を置き、雑誌、新聞ならびに図書の出版販売等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社、被告人は、被告人会社の代表取締役として業務全般を統括掌理していたものであるが、被告人は、被告人会社の業務に関し法人税を免れようとくわだて、売上の一部を除外して架空名義の預金を設定するなどして所得を秘匿したうえ

第一  昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が二四、一五一、九一〇円あつたのにかかわらず、同四五年二月二八日東京都品川区南品川四丁目二番三二号所在の所轄品川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六、〇五六、九二〇円でこれに対する法人税額が一、八八四、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて被告人会社の右事業年度における正規の法人税額八、二一七、五〇〇円と右申告税額との差額六、三三三、三〇〇円を免れ(別紙一、三)

第二  昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が三五、二七七、〇五一円もあつたのにかかわらず、同四六年三月一日前記品川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二、一〇八、三三五円でこれに対する法人税額が五七〇、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一二、六八一、九〇〇円と右申告税額との差額一二、一一一、六〇〇円を免れ(別紙二、三)

たものである。

(証拠の標目)(略)

(被告人および弁護人の主張に対する判断)

一  被告人は、当公判廷において、昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分については、法人税ほ脱の犯意がなかつた旨供述しているが、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書(乙2)、被告人の検察官に対する供述調書(乙10)によると、被告人は、同事業年度分の法人税確定申告に際し、少くとも、ホテル客室用新聞の売上、仕入先からのリベート収入、簿外預金の利息が申告から除外されていること、したがつて申告が過少であることを知つていたものと認められるので、被告人の右供述は採用できない。

二  被告人および弁護人は、昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の脱税額のうち、価格変動準備金繰入の否認額三、二五五、六三六円については、被告人にほ脱の犯意がなかつた(青色申告書提出の承認が取消されていることを知らなかつた)から、これを同事業年度分の脱税額から控除すべきであると主張する。

そこで検討すると、大蔵事務官作成の青色申告の承認の取消手続についてと題する書面(甲一の二の122)、および証明書(甲一の二の123 124)、押収してある青色申告の承認の取消通知書一袋(押16)および法人税の異議申立書(43/12期)一綴(押17)によると、被告人会社はいわゆる青色申告法人であつたが、昭和四三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において経理に不正があつたとして、品川税務署長から昭和四四年六月三〇日付青色申告の承認の取消通知書によつて、昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度にさかのぼつて青色申告の承認を取消されたことが明らかである。したがつて、被告人会社は、昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の法人税の確定申告にあたり、価格変動準備金を損金に計上することは許されない筋合である。ところで、法人税ほ脱犯におけるほ脱の犯意は、各勘定科目ごとの個別的な犯意である必要はなく、脱税の意思で過少な申告をすることの認識があれば、かりに所得の一部について脱税の認識がなかつたとしても、客観的に免れた全税額について、すなわち過少申告ほ脱犯にあつては実際税額と申告税額との差額全部について犯意がおよび、したがつて右差額全部について法人税ほ脱犯が成立するものと解すべきである。これを本件についてみると、被告人の当公判廷における供述および検察官に対する各供述調書(乙9ないし11)によると、被告人は、昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分について過少申告の認識を有していたことが明らかであるから、かりに被告人において、同事業年度分の申告当時青色申告の承認が取消されていることを知らなかつた(したがつて価格変動準備金の損金算入が許されないことを知らなかつた)としても、右価格変動準備金繰入の否認額を含めた客観的脱税額の全部について法人税ほ脱犯が成立するものというべきである。よつて被告人および弁護人のこの点の主張は採用できない。

(法令の適用)

1 被告人会社につき法人税法一五九条、一六四条一項、刑法四五条前段、四八条二項。

2 被告人につき法人税法一五九条(いずれも懲役刑選択)、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(第二の罪の刑に加重)、同法二五条一項(主文2)。

よつて主文のとおり判決する。

(別紙一ないし三略)

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