東京地方裁判所 昭和48年(特わ)286号 判決 1973年6月19日
被告人
本籍
東京都杉並区南荻窪二丁目一三六番地
住居
東京都杉並区南荻窪二丁目八番八号
職業
金融業
氏名
後藤芳雄
年令
七〇歳(明治三六年三月二二日生)
出席検察官
田中豊
出席弁護人
渡辺邦之
主文
1. 被告人を懲役五月および罰金五〇〇万円に処する。
2. 右罰金を完納しないときは金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
3. 被告人に対し本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
4. 訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都杉並区南荻窪二丁目八番八号に居住し、同都中央区日本橋本町四丁目一五番地所在THビルに事務所を設け、貸金業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、貸金業によつて得た収入の全部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
一、昭和四四年分の実際総所得金額が別紙第一記載のとおり一二、六〇〇、九二五円あつたのに、昭和四五年三月九日東京都杉並区天沼三丁目一九番一四号所在所轄荻窪税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一、二一七、六七八円で、これに対する所得税額は、すでに源泉徴収をされた税額を控除すると一五八、四二八円の還付をうけることとなる旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額四、二六三、六〇〇円と右申告税額との差額四、四二二、〇〇〇円については法定の納期限までにこれを納付せず、
二、昭和四五年分の実際総所得金額が別紙第二記載のとおり三五、二六一、三七二円あつたのに、昭和四六年三月九日前記荻窪税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一八二、二五〇円で、これに対する所得税額は、源泉徴収税額を控除すると二七、三三六円の還元を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額一七、七八〇、二〇〇円と右申告税額との差額一七、八〇七、五〇〇円については法定の納期限までにこれを納付せず、
もつて、いずれも右不正の行為により所得税をほ脱したもの(右各年分の税額の算定は別紙第三記載のとおり)である。
(証拠の標目)
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人および石坂トシ子の検察官に対する各供述調書
一、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書五通
一、被告人作成の上申書
一、次の者に対する大蔵事務官の各質問てん末書
田中規矩之充、石坂トシ子(二通)、小木修輔、北村富男
一、次の者の作成の各上申書
石坂トシ子(四通)、田中規矩之充
一、次の大蔵事務官作成の各調査書
久保田昌良(三通)、遠藤忠男(二通)
一、検察事務官作成の捜査報告書
一、押収してある次の各証拠物(いずれも昭和四八年押第七〇九号のうちでかつこ内はその符号)
決算関係書類一綴(一)、手形割引帳一袋(二)、手形割引総括帳一袋(三)、所得税確定申告書二葉(四、五)
(法令の適用)
1. 罰条と刑種の選択
判示各年分の各ほ脱の所為ごとに所得税法二三八条(懲役刑と罰金刑を併科)
2. 併合加重
懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示二の罪の刑に法定の加重)
罰金刑につき刑法四五条前段、四八条二項
3. 換刑処分
刑法一八条
4. 執行猶予
刑法二五条
5. 訴訟費用
刑事訴訟法一八一条一項本文
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 池田真一)
別紙第一
修正損益計算書
後藤芳雄
自 昭和44年1月1日
至 昭和44年12月31日
<省略>
別紙第二
修正損益計算書
後藤芳雄
自 昭和45年1月1日
至 昭和45年12月31日
<省略>
別紙第三
税額計算書
<省略>