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東京地方裁判所 昭和48年(特わ)450号 判決

主文

1. 被告人世界観光開発株式会社を罰金一三〇〇万円に、被告人飯島善治を懲後一〇日にそれぞれ処する。

2. 被告人飯島善治に対し本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

3. 訴訟費用は被告人らの負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人世界観光開発株式会社(以下被告会社という)は肩書地に本店を置きキヤバレー営業等を目的とする資本金八〇〇万円の株式会社であり、被告人飯島善治(以下被告人という)は被告会社の事実上の経営者として被告会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和四四年二月一日から昭和四五年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が別紙第一記載のとおり七、九六一万七、六四二円あつたのにかかわらず、昭和四五年三月三一日東京都北区王子三丁目二二番一五号所在の所轄王子税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二、八四六万三、〇二四円で、これに対する法人税額が九七五万二、〇〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二、七六五万五、九〇〇円と右申告税額との差額一、七九〇万三、九〇〇円を免れ、

第二、昭和四五年二月一日から昭和四六年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が別紙第二記載のとおり四、三三四万五、四八二円あつたのにかかわらず、昭和四六年三月三一日前記王子税務署において同税務署長に対し、所得金額が九八七万八、八八三円でこれに対する法人税額が三三六万七、六〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一、五六六万六、七〇〇円と右申告税額との差額一、二二九万九、一〇〇円を免れ、

第三、昭和四六年二月一日から昭和四七年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が別紙第三記載のとおり一億五〇一万六、七八七円あつたのにかかわらず、昭和四七年三月三一日前記王子税務署において同税務署長に対し、所得金額が一、八〇三万二、〇五九円でこれに対する法人税額が六三六万四、二〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三、八三三万八〇〇円と右申告税額との差額三、一九六万六、六〇〇円を免れ

たもの(税額の算定は別紙第四記載のとおり)である。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書三通

一、登記官認証の被告会社に関する登記簿謄本

一、証人飯塚富三郎、飯島政枝、栗林広行、中村努、星野力の当公判廷における各供述

一、阿部勝美の検察官に対する供述調書

一、次の者に対する大蔵事務官の各質問てん末書

1.堀川喜太郎、2.阿部勝美(二通)、3.松島伸雄、4.大川原正彦、5.中川寿昭、6.浦田満、7.吉本一雄、8.李愛子、9.高城信一、10.内藤行雄、11.大場秀夫、12.飯塚富三郎(昭和四七年一一月二二日付、問一六の問答のみ)

一、飯塚富三郎の昭和四七年一二月一四日付上申書

一、大蔵事務官作成の調査書一二通

一、検察事務官三ノ上立夫の捜査報告書

一、押収にかかる次の各証拠物(押収番号はいずれも昭和四八年押第一三五八号でかつこ内はその符号)

1.法人税決議書一綴(1)、2.損益明細表一綴(2)、3.売上メモ帳二冊(3)、4.売上集計伝票等一袋(4)、5.手帳五冊(5)、6.日記帳一綴(6)、7.納付税明細書一袋(7)、8.メモ等一袋(8)、9.日計表綴一綴(9)、10.売上日計表一綴(10)、11.売上日計表一綴(11)、12.日計表一綴(12)、13.売上日計表一綴(13)、14.日計表一綴(14)、15.メモ(給料査定に関するもの)一袋(15)、16.キヤバレーワールド売買契約手付金領収証等一袋(16)、17.メモ等一袋(17)、18.メモ書等一袋(18)、19.元帳四冊(19)、20.経費明細帳三冊(20)、21.日記帳一冊(21)、22.第二九期資産負債補助簿一綴(22)、23.第三〇期総勘定元帳一綴(23)、24.第二八期損益勘定簿一綴(24)、25.第二九期損益勘定簿一綴(25)、26.法人税確定申告書控一袋(26)、27.所得税源泉徴収簿一冊(30)、28.金銭出納帳二冊(31)、29.銀行勘定帳等七冊(32)

(弁護人の主張に対する判断)

一、法人税ほ脱の犯意および所得秘匿工作について

1. 弁護人の主張

被告人は被告会社の業務に関して法人税をほ脱しようとの意図をもつていなかつたし、法人税ほ脱のために所得秘匿工作を行なつたこともない。

2. 当裁判所の判断

前掲関係証拠によれば被告会社は東京都北区王子一丁目九番地王子百貨店内所在の「王子女の世界」、「王子プリンセス」、同都板橋区大山東町一九番地所在の「大山女の世界」、「大山プリンセス」、同都台東区上野六丁目一一番八号所在の「上野女の世界」(以上の各店舗はいずれも被告人の経営する有限会社飯島商事で営業していたものであるが、被告会社において昭和四三年二月一日からその営業ならびに債権債務一切を引き継いだもの)、同都中央区八重洲四丁目五番地所在の「八重洲女の世界」(昭和四三年一〇月一五日から昭和四五年九月七日まで営業)、同都豊島区池袋二丁目一三番六号所在の「池袋プレジール」(昭和四五年四月一日以降営業)、浦和市仲町二丁目六番二〇号所在「浦和プレジール」(昭和四五年一一月一二日から昭和四七年四月五日まで営業)の各キヤバレーを経営しているものであるが、このうち、「浦和女の世界」については昭和四三年ころから売上金額の一〇%を除外し、その他の都内店については昭和四四年五月二二日以降売上金額の五%を除外し、昭和四六年九月一日からは都内店についても売上金額の一〇%を除外するようになつたこと、このように一部除外した残りの売上金額に対応する公表の売上伝票は改めて被告会社の事務所で作成し、公表帳簿上も売上としてこの残額のみを記帳していたこと、売上除外にした金員は各店の営業責任者から被告人の手元に集められ、被告人はこれを経理担当責任者飯塚富三郎らに命じて、主として巣鴨信用金庫大塚支店の被告人個人名義の口座に入れて簿外預金としており、なお、雑収入の一部(門鑑料など)も簿外としていたこと、この売上除外の目的は当面は売上額に対応して徴収義務者として納付しなければならない料理飲食等消費税(以下料飲税と略称)の支払の一部を免れること、またその免れた金額を裏資金として資金繰りを容易ならしめることにあつたけれども、他面この売上除外によつて被告会社の利益を圧縮し法人税を過少に申告して納税義務を過少に確定させ、申告外の法人税額を免れる意図があつたこと、以上の各事実を認めることができる。さらにまた、右の売上除外の方法ならびに簿外預金の設定が料飲税ほ脱のための売上高秘匿工作であるとともに法人税ほ脱のための所得秘匿工作であつたことも明らかである。

弁護人の右ほ脱の犯意、所得秘匿工作がないとの主張は採用できない。

二、寄付金および寄付金限度超過額の算定について

1. 弁護人の主張

昭和四七年一月三一日期の被告会社の事業年度における福田赳夫後援会に対する寄付金は一、五〇〇万円でなく五〇〇万円であり、寄付金限度超過額として否認されるのは三六六万五四七円である。

2. 当裁判所の判断

証人星野力の当公判廷における供述、被告人の当公判廷における供述、弁護人提出の領収証三通(前同押号27、28、29)を総合すれば、被告人作成の昭和四七年一一月二一日付上申書(申一の6)、福田経済研究会星野力作成の昭和四七年一一月一七日付証明書の記載は虚偽のものであつて、被告会社が簿外寄付金として昭和四七年一月三一日期に福田赳夫後援会に支出したのは五〇〇万円であると認められる。弁護人の右主張は正当であるから、当裁判所は被告会社の右事業年度の実際所得の計算上別紙第三修正損益計算書勘定科目<42><43>欄を弁護人主張のとおりの金額として計上することとする。

三、堀川喜太郎に対する簿外給与について

1. 弁護人の主張

被告会社は堀川喜太郎に対して簿外給与として公表の月額一〇万円のほかに昭和四五年一月三一日期二四〇万円、昭和四六年一月三一日期三〇〇万円、昭和四七年一月三一日期四二〇万円を支出しているから、これを損金として計上すべきである。

2. 当裁判所の判断

証人堀川喜太郎は当公判廷で右弁護人の主張に副う証言をし、当公判廷において同趣旨の供述をしている。しかしながら、

(1). 堀川喜太郎、被告人はいずれも本件の査察、捜査段階においてこの堀川に対する簿外給与の支給について一言も触れていないこと、特に、被告人は査察官から簿外経費について尋ねられて、昭和四五年三月ころから松島、浦田、中川、鈴木の四人の営業責任者に対して平均一〇万円くらいを月二、三回にわけて裏金から支出し、なお上野店の責任者に対しては昭和四四年四月ころから昭和四六年三月まで月二〇万円ずつ渡していた旨供述し(被告人に対する大蔵事務官の昭和四七年一一月二一日付質問てん末書)ながら、これらより量的にも大きく時期的にも早い筈の堀川に対する簿外給与については全然言及していないこと、

(2). 堀川は日記をつけており、押収されている「家庭日誌」(前回押号の21)には昭和四六年九月二一日から昭和四七年五月三一日分までの堀川の行動が具さに記されているのであるが、同人はこの中に几帳面にも被告会社関係のこまごました行動の内容や、当日費消した小遣銭の明細に至るまで細大洩さず記載していることが看取されるのであつて、真実堀川が公判廷で供述するとおり被告会社の代表者として交際費が必要な場面があつたり、社交員に対して貸付をしなければならなかつたりして、そのために簿外給与の支給をうけていたというのであれば、その簿外給与や明細や被告会社の代表者としての立場上支出しなければならなかつた交際費の内容、貸付の相手社交員の明細などこの「家庭日誌」に記載されているのが自然ではないかと思われるのに、わずかに昭和四六年一二月二九日の記載欄で「小生もボーナスと手当二万円を別に貰つて云々」との記載があるほかは特段簿外給与受領の事実や交際費その他の出費をした事実あるいはそれを推認させるような記載は発見できないこと、特に堀川や被告人の当公判廷における供述によれば右の「家庭日誌」が記載された当時には堀川は月平均三五万円の簿外給与の支給を受けていたというのであるが、この日記にあらわれた堀川の生活、行動の内容は質素なものであつて、全く右の高額の簿外給与とはそぐわないものであること、

(3). 証人堀川の当公判廷における供述、同人に対する大蔵事務官の質問てん末書、「家庭日誌」(前同押号の21)の記載によれば、堀川が被告会社で実際に担当していた仕事の内容は形式上被告会社の代表者であるために必要とされる警察、保健所など役所関係の渉外的な仕事、浦和店の売上金を被告人の自宅へ届ける仕事、各営業責任者に対する一般的監督といつた程度のもので、営業責任者(店長又は営業部長)に比較すればその仕事の被告会社内における重要性はむしろ低く、堀川自身が表現しているとおり(前掲質問てん末書)、「営業部長の相談相手」といつた程度のものであつたと認められること、そうだとすると、昭和四五年三月からホステス募集費として簿外で各店舗の営業責任者に月々平均一〇万円支給することになつた(中川寿昭の質問てん末書)のにくらべ、堀川が昭和四四年一月から簿外給与として月二〇万円の支給を受け、さらに昭和四五年からは月二五万円となり、昭和四六年からは月三五万円の支給を受けるようになつたという供述は極めて不自然であること、

これらの諸点を併せ考えると、この簿外給与に関する証人堀川の当公判廷での供述、被告人の当公判廷における供述は措信できないものであり、また、被告人の当公判廷における供述によれば右の「家庭日誌」昭和四六年一二月二九日欄の手当二万円も被告人からの堀川の妻に対する単なる小遣銭と見るのが相当であるから、結局堀川に対する被告会社からの簿外給与の支給は一切なかつたものと認めるのが相当である。弁護人の右主張は採用できない。

四、白石清に対する簿外給与の支給について

1. 弁護人の主張

被告会社は本件各起訴対象各事業年度において、一二〇万円ずつ白石清に簿外給与を支払つたのでこれをを各事業年度の経費として計上すべきである。

2. 当裁判所の判断

被告人は当公判廷において、昭和二五年ころ御徒町の鉄道高架下に出すキヤバレーの店舗の営業許可をとるのに白石清に骨を折つて貰つたことから同人と知りあい、同人に警察、保健所、鉄道関係の交渉の仕事やホステスの斡旋などを頼んだりしていたので平均して月約二万円の手当を白石に出していたことがあり、その後同人と手を切つていたが、昭和四〇年ころ「浦和女の世界」を開店する際建物の賃借をするのに白石が仲に入り、再び同人と交際するようになり、同人が浦和周辺で顔が広いことを考え、警察、保健所関係の交渉などの仕事を頼むこととなり、さらに同人の仲介により被告人の経営になつた有限会社三久で「浦和女の世界」の店舗およびストリツプ劇場の建物を購入することができ、有限会社三久から月約一〇万円支払い、昭和四四年ころからは被告会社から簿外で遊興飲食代などの相殺分を含め月約一〇万円ずつ支払つてきたが、昭和四八年からはその支払をやめた旨供述し、証人白石清は当公判廷において、終戦後被告人と知りあい、経営上の相談を受けたりキヤバレーのキツチンの主任の世話をするなどしたことがあること、被告会社設立の際にも相談をうけたこと、「浦和女の世界」開店にあたり官庁、商店会などと連絡をとつたり各方面から人を集めるなどして協力し、昭和四二年終りころから昭和四八年一月ころまで有限会社三久からの月約七万円のほか被告人のポケツトマネーから交際費、交通費、諸雑費として月約一〇万円ずつ貰つていた旨供述している。なお白石は被告会社から正規の給与として月一〇万円ずつ受け取り源泉徴収もされていた旨供述しているが、被告人、証人飯塚富三郎の当公判廷における各供述、押収してある所得税源泉徴収簿(前同押号の30)の記載とを総合して、この点に関する白石の供述は措信しがたい。

そこで、これらの被告人、証人白石の当公判廷における供述によれば被告人が白石に対して時に何がしかの現金を支給したり、遊興飲食代金の請求をしなかつたりした事実のあることはほぼまちがいのないところと思われる。

しかしながら、この白石に対する支払の性質については更に検討を要するところであつて、白石はこの点について、被告人に「浦和女の世界」の店舗を斡旋したところ幸いにして業績が順調に伸びて被告会社においてかなりの利益をあげられるようになつてきたところに眼をつけ被告人に金があるときに出させるようになつたとその経緯を述べており、被告人も白石が何かと被告人のところに顔を出して金を貰おうとする態度であつた旨供述しているところに鑑みると、被告人から白石に対する金員の支払の性格は、白石が被告会社の業務として何らかの役務を提供しこれに対する報酬として被告会社の経営者として支払つたものというよりも、被告人が白石とのいろいろな経緯、交際の上で自己の所得のうちから白石に小遣銭を提供していたにすぎないものと見るのが相当であるというべきである。

そうだとすると、被告人が時に白石に支払つていたという金員の支出は被告会社の経費と認めるのが相当といえないというべきであり、弁護人のこの点に関する主張も失当である。

五、平和新天地建設株式会社に対する未払歩合金について

1. 弁護人の主張

被告会社は昭和四二年八月一二日平和新天地建設株式会社より東京都北区王子一丁目九番五号所在の王子百貨店三階の一部を賃借して「王子プリンセス」店の共同経営を約しており、毎月末に同店舗の総売上高の二割(ただし最低歩合金は月八〇万円)を右平和新天地建設株式会社に支払う約束をしているが、被告会社では最低歩合金の月八〇万円を支払つていたのみで、右総売上額の二割との差額である昭和四五年一月三一日期分二、四〇九万七、一九〇円、昭和四六年一月三一日期分二、七五七万五、七七〇円、昭和四七年一月三一日期分三、一七二万九〇〇円の未払歩合金の支払が残つているので、これを被告会社の所得から控除すべきである。

2. 当裁判所の判断

証人鈴木たけ、同飯塚富三郎、被告人の当公判廷における各供述、大場秀夫に対する大蔵事務官の質問てん末書、大蔵事務官宇都宮覚作成の昭和四八年一月一七日付「(株)王子百貨店および平和新天地建設(株)の決算内容について」と題する調査書、昭和四二年八月一二日付平和新天地建設株式会社、飯島義次間の「契約書」写(弁三号証)、昭和四八年一月一〇日付平和新天地建設株式会社の飯島義次宛「歩合金支払請求について」と題する内容証明郵便写(弁四号証)を総合すれば次の事実を認めることができる。

(1). 被告人は昭和三八年秋ころ鈴木仙八の経営する王子百貨店の三階の一部を賃借してキヤバレー「王子プリンセス」の営業をはじめたこと、

(2). その契約の形式は右鈴木仙八が経営する平和新天地建設株式会社と被告人とが右「王子プリンセス」を共同経営するというもので、売上の二割相当額の利益を平和新天地建設株式会社が分配を受け、それが三五万円に満たないときの利益分配額すなわち最低保障額を三五万円とする旨の契約であつたこと、鈴木仙八が昭和四二年五月死亡したところから新たに平和新天地建設株式会社の代表者となつた鈴木たけ未亡人との間で改めて同趣旨の契約を結んだが、その際最低保障額を八〇万円と変更したこと(弁三号証はその写)、その後被告会社が被告人の右契約上の地位を引き継いだこと、

(3). しかし、右の利益分配の額については鈴木仙八が在世中に同人の選挙その他の政治活動の際に応分の寄付をするなどの形で最高売上の一割あまりを被告人が任意に支払つたことがあつたほかには、売上高の如何にかかわらず、右最低保障額の三五万円あるいは八〇万円(昭和四二年八月以降)のみ支払つてきたこと、

(4). 「王子プリンセス」の経営には平和新天地建設株式会社は一切関与したことがなく、同会社から被告会社に対して売上の二割相当額を利益分配として明確に請求したのは本件査察後の昭和四八年一月一〇日になつてからであり、右の契約書上の最低保障額の金員の性質については被告会社、平和新天地建設株式会社とも経理上固定額の家賃として取り扱つていること、昭和四六年一一月からは被告会社から光熱費、水道料等としてさらに月二〇万円を平和新天地建設株式会社に支払つていること、なお、被告会社の経営者である被告人は右「王子プリンセス」の売上の二割相当額と既払の最低保障額との差額の支払についてはこれを履行する意思はないこと、

右のとおり認定される事実関係からすれば、右平和新天地建設株式会社と被告会社との「王子プリンセス」に関する契約は、同店舗の共同経営という形式をとつてはいるものの、その実質は王子百貨店三階の右店舗部分の賃貸借契約にすぎないものであり、この場合いわゆる最低保障額が右店舗部分の賃料であつて、右両当事者間においては右最低保障額を超える売上の二割相当額に達する部分は利益分配として平和新天地建設株式会社が被告会社に任意の履行を期待するにとどまる一種の自然債務的性格を有していたものと理解されるのである。

そうだとすれば、右の最低保障額を超える部分は契約の両当事者間において具体的な利益分配が行なわれてはじめて当該配分された利益分が平和新天地建設株式会社に帰属し、被告会社の所得からこれを控除すべき筋合である。しかるに右両当事者間において右の利益分配が具体的に行なわれていないことは明らかであるから、弁護人主張の右差額分も平和新天地建設株式会社に帰属したと見ることはできず、弁護人のこの点に関する主張も失当であるというほかない。

六、株式会社日本色彩社に対する貸倒れについて

1. 弁護人の主張

被告会社は株式会社日本色彩社に対し簿外で合計五、六九八万九、〇九二円の貸付金未払金の債権を有するところ、同会社は昭和四五年六月四日不渡り手形を出して倒産した後再起できず、右債権の回収は著しく困難であるがら同債権額を昭和四七年一月三一日期の被告会社の貸倒れ損金として計上すべきである。

2. 当裁判所の判断

証人大山武、同中村努、被告人の当公判廷における各供述、押収してある第二九期資産負債補助簿一綴(前同押号の22)、第三〇期総勘定元帳一綴(同押号の23)、第二八期損益勘定簿一綴(同押号の24)、第二九期損益勘定簿一綴(同押号の25)、法人税確定申告書控一袋(同押号の26)、第三〇期決算報告書(案)写(弁五号証)、債権放棄通知書写(弁六号証)、債権放棄通知書受領の通知写(弁七号証)の記載を総合すれば次の事実を認めることができる。

(1). 被告人は被告会社の簿外金のうちから昭和四四年から昭和四五年にかけて株式会社日本色彩社に融資し、また一時同会社の代表取締役に就任し、同会社の昭和四七年一月三一日期(第三〇期)には、弁護人主張のとおり合計五、六九八万九、〇九二円の貸付金、未払金(給料)債権を有していたこと、

(2). 日本色彩社は色彩の教材を扱つているが、競争会社が進出してきたことや単価を値上げできないことなどの事情から営業不振が続き、昭和四五年六月には不渡り手形を出し、その後も業績の好転がなかつたけれども、営業自体は続けていたもので、被告会社の債権の回収が不能の状態にあつたとは認めがたいこと、

(3). 被告人は債権放棄の意思を昭和四五年ころから有していたが、現実に債権放棄の意思表示を確定的になしたのは昭和四八年一月二六日に至つてであつて、昭和四八年一月三一日期の株式会社日本色彩社の決算においてはじめて被告会社に対する右債務が消去されたものであつて、昭和四七年一月三一日期の決算には被告会社に対する債務として計上していること、

以上の事実関係からすれば、被告会社の株式会社日本色彩社に対する弁護人主張の債権は昭和四八年一月三一日期において貸倒れ損として計上すべきもので、昭和四七年一月三一日期においてはまだ回収の見込がなかつたとは言えず、かつ債権放棄の確定的意思表示もなされていなかつたものと認められるので、貸倒れ損として計上することはできないものと言うべきである。弁護人のこの点の主張も失当である。

(法令の適用)

1. 該当罰条

被告会社につき法人税法一五九条、一六四条一項

被告人飯島につき法人税法一五九条(各懲役刑選択)

2. 併合加重

被告会社につき刑法四五条前段、四八条二項

被告人飯島につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(判示第三の罪の刑に法定の加重)

3. 執行猶予

被告人飯島につき刑法二五条一項

4. 訴訟費用の負担につき

刑事訴訟法一八一条一項本文

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 池田真一)

別紙第一 修正損益計算書

世界観光開発株式会社

自昭和44年2月1日

至昭和45年1月31日

<省略>

<省略>

別紙第二 修正損益計算書

世界観光開発株式会社

自昭和45年2月1日

至昭和46年1月31日

<省略>

<省略>

別紙第三 修正損益計算書

世界観光開発株式会社

自昭和46年2月1日

至昭和47年1月31日

<省略>

<省略>

<省略>

別紙第四 法人税額計算書

世界観光開発株式会社

<省略>

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