東京地方裁判所 昭和49年(ワ)4554号・昭49年(ワ)8385号 判決
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【判旨】
三以上の認定を基礎に本件土地について直太郎あるいは原告の自主占有の有無について検討する。
直太郎の本件土地に対する占有は、本件の土地については耕作権の交換ということを仲立ちにしているにせよ、参加人よりの借受け、すなわち他主占有により開始されたことは明らかであり、他主占有が自主占有に転換するには、自己に占有をなさしめた者に対する所有の意思表示又は所有の意思を伴う新権原の取得が必要である(民法一八五条)。
ところで、他主占有から自主占有への転換について右所有の意思表示を要求するゆえんは、占有の形態の転換が他主占有者の内心の意思あるいは他主占有者側の事情のみによりては定まらず、それが所有の意思表示という行為を通じて、占有をなさしめた者においても客観的に認識され、容認されることが必要であるとの点にあるものと解され、そうだとすれば、所有の意思表示という明示の行為がない場合でも、他主占有者の内心の意思の転換(所有の意思への)が推認されるような客観的な状況が存し、かつ占有をなさしめた側にあつてもそれを認識しながら、当該占有を容認しているような場合には、なお、自主占有ありと解して妨げないものと考える。
これを本件についてみるに、前認定のとおり、買収された小作地が当該小作地を耕作している者に対し原則的に売渡がなされる状況下において本件土地が買収され、かつ直太郎が本件土地を耕作していたこと、買収のころ以後直太郎は何人よりも異議を述べられることなく、使用料の請求もされずに本件土地の耕作を継続してきたこと、反面、被告は買収により本件土地がその所有に帰したにもかかわらず、直太郎の本件土地使用を黙認し、かつ、その対価を請求することもなく、昭和二五年七月二日には直太郎に対し本件土地の売渡を計画し、少くともその時点では直太郎に対し所有権を移転することを承認し、その後も、農業委員会の関係者らは直太郎の嘆願に協力するなど売渡自体を否定するような言動をとつていないこと、以上の事実を総合して判断すると、被告が直太郎に対し本件土地の売渡を計画した昭和二五年七月二日以降、被告は直太郎の本件土地に対する占有が、所有の意思をもつた占有であることを認識し、これを容認していたものと認めるのが相当である。
してみれば、直太郎は、右日以降本件土地について自主占有を開始したものというべきで同日より二〇年を経過した昭和四五年七月二日の満了により本件土地所有権を時効により取得したものというべきである。
(小田泰機)