東京地方裁判所 昭和49年(ワ)4802号 判決
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【説明】
本件は、建築請負契約に基づく被告青柳工務店の原告に対する債務を被告佐田建設が保証したかどうかが争われた事案である。
【判旨】
次に、被告佐田建設の保証債務の有無について判断する。
1 <証拠>によれば、奥山は、昭和四八年六月二日原告に対し、原告と被告青柳工務店との間における本件請負契約を証する書面である工事請負契約書の保証人欄に「佐田建設株式会社東京本部」及び「奥山和夫」の記名印並びに被告佐田建設の社印及び奥山の私印を押捺し、被告佐田建設東京本部営業部長である奥山が被告青柳工務店が原告に対して負担する本件請負契約上の債務につきこれを保証する旨の意思表示をなし、これにより、同人に被告佐田建設を代理する権限があると信じた原告との間に、本件保証契約を締結したことが認められる。そして、被告佐田建設が同人に対し東京本部営業部長の名称の使用を許諾していたことは当事者間に争いがない。
右事実に基づけば、奥山は原告に対し、被告佐田建設東京本部営業部長として、同被告を代理して本件保証契約を締結したものとみるべきである。<中略>
2 原告は、奥山は商法四三条の商業使用人としてその権限に基づき本件保証契約を締結したものである、と主張する。
しかしながら、ある者が商法四三条の商業使用人にあたるためには、その者が営業主から営業に関するある種類又は特定の事項について代理行為をなすことの委任を受けることを要し、単に営業部長等の名称の使用の許諾を受けることによつては右代理権の授与を受けたものとはいい難いものであるところ、本件においては、奥山が被告佐田建設から右権限を授与されたことを認めるに足る証拠はなく、かえつて<証拠>によれば、奥山は、単に顧客との間において、請負契約の勧誘や条件の交渉などいわゆる注文とりの事実行為をなすについて営業部長の名称の使用を許諾されているにすぎず、同被告を代理して第三者との間に法律行為をなすことについてはその権限を授与されていなかつたことが認められる。
したがつて、この点に関する原告の主張はこれを採用することができない。
3 原告は、民法一〇九条の表見代理の法理の適用を主張する。
ところで、一般に、営業部長の名称は、営業に関する事項について広汎な包括的代理権を有する商業使用人の呼称であると理解されているのであるから、自己の従業員に対して営業部長の名称の使用を許諾した営業主は、たとえ内部的には営業に関する特定事項について代理行為をなす権限を授与しなかつたものであつたとしても、一般第三者に対しては、右従業員にこのような権限を授与した旨を表示したものというべきである。
したがつて、営業主から営業部長の名称の使用を許諾された従業員が、第三者との間において営業に関する事項につき営業主を代理して法律行為をなしたときは、その営業主は、たとえその従業員に対し内部的には代理権を与えていなかつたとしても、第三者に対しては、民法一〇九条により、本人としての責に任ずべきこととなる。
これを本件についてみると、前示のとおり、被告佐田建設は奥山に対し営業部長の名称の使用を許諾したものであるから、同被告は、一般第三者である原告に対し、同人に建設工事請負契約ないしその営業に関する事項について広汎な包括的代理権を与えた旨を表示したものとして、同人が締結した本件保証契約につき、本人としての責に任ずべきものといわなければならない。
(山口忍)