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東京地方裁判所 昭和49年(ワ)6922号・昭47年(ワ)5542号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

本件の抗弁の要旨は次のとおりである。

「1 被告尹栄基は、本件(一)土地を含む東京都足立区梅田町三八四番宅地885.25平方メートルを所有していたが、その地上には、登記簿上の所在地番を梅田町三八七番地とする旧建物が存在していた。

2 被告尹栄基は、昭和四〇年二月二五日勧業信用組合のため前記三八四番宅地とともに旧建物外土地一筆、建物二棟を共同担保として極度額金一、〇〇〇万円の根抵当権を設定し、その登記を経由した。

3 勧業信用組合は、昭和四二年一月二四日三八四番宅地及び旧建物に対し抵当権実行による競売申立をし、その後昭和四七年四月一三日本件(一)土地を含む三八四番宅地のみが競落され、原告らがその所有者となつた。

4 本件建物は、昭和四四年一一月二五日旧建物の土台、柱に変更を加えることなく改築したもので、旧建物と同一性がある。

5 従つて、被告尹栄基は、本件(一)土地につき法定地上権を有するから、右建物収去土地明渡を求める原告の請求は、その理由がない。」

判決は1の事実を認め(2、3は争いがない。)次のとおり判断する。

【判旨】

4 次に、被告尹栄基らは、本件建物は旧建物を改築したものでその間に同一性がある旨主張し、原告大東信販は、これを争い、本件建物は競売手続開始決定後である昭和四四年一一月二五日に新築されたものである旨主張する。しかしながら、法定地上権は、本件におけるように土地とその地上建物が併せて共同担保物件として同一抵当権の目的とされ、土地のみが競売された結果土地と地上建物がその所有者を異にするに至つた場合にも発生すると解すべきであるが、法定地上権発生の要件としては、抵当権設定当時土地上に所有者を同じくする建物が存在すれば足り、その後地上建物が朽廃によらずして滅失したとしても、抵当権設定者がその土地上に自己所有の建物を再築したときは、右再築建物のために法定地上権が発生するものと解すべきであり、ただ、発生すべき法定地上権の存続期間等の内容は、旧建物がなお存続するものと仮定してその利用に必要な範囲内にとどめるべきであるとの制限に服するに過ぎない。従つて、旧建物と本件建物との間に同一性があるか否かは、本件建物のため法定地上権が認められるかどうか自体にかかわりのない問題であり、また、敷地である三八四番宅地について競売手続開始決定がされ、競売申立記入登記がされて差押の効力が生じたからといつて、その後に当該土地上に再築された建物について常に法定地上権が認められなくなるというわけのものではない。

しかし、抵当権実行までに朽廃し、あるいは朽廃すべかりし建物を取り毀して再築した場合にまで法定地上権の発生を認めることは、正当に保護されるべき抵当権者の期待利益を侵害する結果となるから許されないと解すべきであり、本件においても、旧建物につきこの点を検討しなければならない。そうして、<証拠>を総合すれば、次の事実を認めることができる。すなわち、旧建物は、前記のとおり本件(一)土地上に所在していたのであるが、登記簿上は木造亜鉛メツキ鋼板葺二階建工場で床面積は一階及び二階とも一一九平方メートルと表示されていた。被告尹栄基の所有権取得登記は昭和二九年四月二四日付でなされているが、建築年月日は明らかでない。昭和四三年七月当時前記競売手続の鑑定人江口邨治が旧建物を調査した結果によれば、一階は板敷、天井は踏付天井、二階は板張床で梁には若干の鉄材も使用されており、基礎はコンクリート、外壁はトタン張りで用材、工事は工場として普通のものと見受けられ、新築時期は明確でないが約十数年前と推定されるような状況にあつた。その後昭和四四年になつて、被告尹栄基の依頼を受けた大工の榎本喜代次郎が基礎、土台はそのままとし、鉄骨の柱や二階の梁も利用することとし、その他の部分は取り毀して、壁はブロツクを積み、外部はモルタル塗り、内部は壁をつけて屋根は瓦葺とし、二階は一部を六坪のベランダとして、軽量鉄骨造瓦葺陸屋根二階建居宅床面積118.98平方メートル、二階89.23平方メートルの本件建物としたものであつた。以上の事実を認めることができる。もつとも、被告尹栄基が昭和四五年一月二九日競売裁判所に提出した上申書には、旧建物について、戦前からの建物で倉庫として使用後放置しておいたので朽ち果てて了い、現在そこには本件建物が建つている旨が記載されているのであるが、被告尹栄基としては、当時としては本件建物を競売から免れたい余りそのように記載したものと解し得るし、前掲各証拠の方が旧建物の状況をより客観的に示しているものと考えられる。もつとも、被告尹栄基としては、一たん本件建物が旧建物とは別個の新築建物であるとしてその競売を免れながら、本訴においては改築による同一建物としてその旨の登記をしたとし、法定地上権を主張するのは(この点が法定地上権の成否自体には関係がないのは前述したとおりではあるが。)一見信義則に反するように思われないではない。しかしながら、本件建物が旧建物とは別個の新築建物であるとしても、抵当権者である勧業信用組合としては、もし本件建物を除外しては被担保債権の満足を得られない場合には、民法第三八九条により本件建物をも併せて競売することを請求することができた筋合いであるし、また、<証拠>によれば、競売手続においては、旧建物の不存在及び本件建物の建築が問題となる以前から旧建物は競売に付する対象から外されていたことが認められるのであり、その理由は、他の競売物件のみで配当に十分と見られたからと推測される。従つて、被告尹栄基の前記言動からして、同被告らが本件において本件建物につき法定地上権を主張することが直ちに信義則違反になるとまで解することはできない。

5 以上の次第で、被告尹栄基らが本件建物につき法定地上権を有する旨の主張はその理由があり、少くとも本件(一)土地は右法定地上権の対象となる土地の範囲内に含まれるというべきであるから、被告尹栄基<中略>の抗弁は理由がある。<中略>

3 そこで、次に右法定地上権の内容について判断するのに、被告尹栄基が本件建物の敷地につき有する法定地上権の内容は、旧建物が存続していると仮定した場合にその利用に必要と認められる範囲内に制限されると解すべきこと前判示のとおりである。そうして、前記認定に係る諸事実及び右認定に供した各証拠を総合するときは、本件法定地上権の対象となる範囲は、その余の土地の利用に障害のないように配慮すると、別紙物件目録(編注、略)(四)記載の土地の範囲であると解するのが相当であり、その目的は非堅固建物所有、存続期間は、法定地上権が発生した昭和四七年四月一三日から一五年間とするのが相当であり、地代の額は、本件記録により明らかな三八四番一の土地の昭和五二年度における固定資産税額が金五万一、二三〇円、都市計画税額が金三万三、〇八八円であること、その他前認定に係る諸般の事情を考慮するときは、月額金一万円とするのが相当である。 (藤田耕三)

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