大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和49年(行ウ)73号 判決 1975年1月28日

東京都渋谷区東一丁目二六番二六号

原告

富士ビルディング株式会社

右代表者代表取締役

木村倫一郎

右訴訟代理人弁護士

大木市治郎

東京都渋谷区宇田川町一の三

被告

渋谷税務署長

右指定代理人

玉田勝也

小山三雄

斉藤幸雄

松本庄蔵

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

「被告が原告に対し昭和四八年六月二〇日付でした原告の昭和四五年九月一日から同四六年八月三一日までの事業年度分の法人税の更正を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。」との判決。

二  被告

主文と同旨の判決(本案につき「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決)

第二原告の請求の原因

一  原告は、不動産管理を業とする会社であるが、昭和四六年一〇月三一日被告に対し、同四五年九月一日から同四六年八月三一日までの事業年度分(以下「係争年度分」という。)の法人税につき、欠損金一四四三万一六一四円、税額零円とする白色の確定申告をしたところ、同申告には受取利子金六〇〇万円の計上もれ及び支払利子中金一〇四七万〇八四〇円の過大計上があったため、同四七年七月二八日被告に対し、右金額を加算の上、課税標準額二〇三万九二二六円、税額五七万〇九〇〇円とする修正申告をした。これに対し、被告は、同四八年六月二〇日付で確定申告どおり税額を零円とする更正(以下「本件更正」という。)をした。

二  しかしながら、原告の係争年度分の法人税は修正申告のとおりであるから、本件更正は違法であり、取り消されるべきである。

第三被告の本案前の抗弁及び請求の原因に対する答弁

一  本件更正は、修正申告に基づく納付すべき税額を減額した更正であり、これを取り消すと、原告が修正申告をした状態に戻ることになるから、かえって納付すべき税額が増加して原告に不利益な結果となる。

したがって、原告は、本件更正により何ら不利益を受けてはいないから、その取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者とはいえない。

仮に、原告が主張するように、本件更正に関連して次年度分の法人税につき増額更正が行われたとしても、本件更正と次年度分の更正とは別個の行政処分であり、右増額更正に不服があれば直接同年度分の更正を争えば足りるのであるから、原告は、本件更正の取消を求めるにつき法律上の利益を有する者とはいえない。

二  請求の原因第一項のうち、係争年度分の確定申告につき受取利子金六〇〇万円の計上もれ及び支払利子中金一〇四七万〇八四〇円の過大計上のあったことは不知、その余の事実は認める。

第四本案前の抗弁に対する原告の答弁

一  原告は、昭和四七年一〇月三一日被告に対し、同四六年九月一日から同四七年八月三一日までの事業年度分(以下「次年度分」という。)の法人税につき、課税標準額二五九万七四三五円とする確定申告をしたところ、被告は、先に原告がした係争年度分についての修正申告の理由を認めず、本件更正を行うと同時に、これに関連して次年度分の法人税の課税標準額を二五三一万三一七五円と更正したため、原告は八四七万一二八〇円の法人税等を余分に納めなければならなくなった。

二  右のとおり、原告に著しく不利益な次年度分の更正は本件更正に起因するものであるから、原告は本件更正の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する。

理由

第一本案前の抗弁について

原告が取消しを求める本件更正が、納付すべき税額を減額する内容の更正であることは当事者間に争いがないところ、減額更正自体は納税者にとって不利益なものではないから、特段の事情のない限り、納税者にその取消しを求める法律上の利益はないものといわさるをえない。

原告は、本件更正に起因して次年度分の法人税の更正により著しい不利益を受けるから、本件更正の取消しを求める法律上の利益があると主張するけれども、本件更正と次年度分の更正とは別個の行政処分であり、本件更正が確定しても次年度分の更正を取消訴訟によって争いえなくなるような関係にあるわけでもないことが明らかであるから、原告は不利益を受ける次年度分の更正について争えば足り、ことさらに本件更正の取消しを求める法律上の利益を有するとはいえず、右主張は主張自体失当であるといわねばならない。

第二結論

そうすると、本件訴えは、訴えの利益を欠いた不適法なものというほかはないから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉山克彦 裁判官 石川善則 裁判官 吉戒修一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例