東京地方裁判所 昭和50年(レ)79号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
一控訴人と被控訴人との間において昭和三五年一月二〇日被控訴人所有の本件アパートの管理を控訴人に委託する旨の管理委託契約が締結されたことは、当事者間に争いがない。
二そこで、控訴人において、管理人としての行為の妨害を禁止することを求める必要性があるか否かにつき、検討する。
ところで、被控訴人が、控訴人との管理契約を解除したと主張し、控訴人が管理人の地位にあることを争つていることは本件訴訟の経緯に照らし明らかである。しかし、そもそも委任あるいは準委任の契約の本旨は、当事者相互の信頼関係に基づき、受任者が委任者のため一方的に事務を処理することにあり、とくに受任者の地位を保護すべき必要はないのであつて、このことは、有償、無償を問わず、当事者がいつでも契約の解除をすることができ、直ちにその効力を生ずるとされていることからも明らかである。委任者が受任者の委任事務の処理を望まず、その履行の提供の受領を拒否したとしても、特別の事情のない限り、受任者にとつて委任者に対して債務の履行につき受領ないし受忍を請求しうべき権利はなく、有償の場合には受任者の報酬請求権がなお保持されるのであるから、さらに失うべき利益は何もない。そうだとすると、現に受任者の法律上の地位に争いがあるとしても、これを仮に定めるべき必要はないし、また委任者において委任事務の履行の受領を拒否し、受任者の側からそれが委任事務の履行に対する妨害と映つたとしても、その拒否を禁ずべき理由はない。仮に本件の管理契約が控訴人の主張するように、賃貸借契約における賃料相当の使用利益を管理報酬とする管理委託契約と賃貸借契約と一体をなした無名契約であるとしても、両者は、賃料と管理報酬とが相殺勘定となることを意味しているにすぎず、有機的に結合しているものとは解されないから、前示の理は同一である。
したがつて、受任者である控訴人から委任者である被控訴人に対してする、前示の特別の事情に当たるとみるべき主張を含むとみることのできない本件仮処分申請は、主張自体失当といわなければならない。
(丹野達 富越和厚 市村陽典)