大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和50年(ワ)10715号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一被告会社が金属工作機械の製造及び販売及び修理加工等を目的とする株式会社であり、被告金澤が被告会社の取締役で東京営業所の最高責任者であること、昭和五〇年六月ごろからアキが大同工機を経由して被告会社東京営業所より本件機械を買入れたこと及び本件機械が韓国に所在する国際電気に納入されたこと、以上の事実は各当事者間に争いがない。

右事実並びに<証拠>を総合すると、以下の事実が認められ、<証拠判断略>。

機械類の輸出等を業とする原告はかねて取引のあつた韓国ソウル特別市に所在する国際電気から本件機械と同種の工作機械の買付注文を受けたのでこれに応じ、担当者板垣泰元が昭和五〇年五月ごろよりメーカーである被告会社の東京営業所に対し右機械の売渡方を要請して注文前の折衝をしていたが、被告会社からは別に独自の韓国向け販売ルートがあるため原告との取引には応じられないとして拒否され、原告が要請を続けたが応諾がなく右の商談が合意に至らないまま時日を経過するうち、国際電気からは原告に対して信用状が送付されて早期に右機械を船積みするようにとの督促が来るに至つた。そこで板垣は原告と取引のあつた商社アキから国内需要家向けの機械なら日をおかず入手しうることを聞き及んだので、窮余同年六月アキに対し韓国向けに輸出することを告げて右機械の購入方を別途に依頼した。右注文を受けてアキの担当者坂田祐恒は、同月一七日納品場所を東京都太田区内の日野製作所と表示して、被告会社の国内販売代理店である大同工機に対し右機械の買付を注文した結果、この経路で被告会社から原告に至る各売買契約が成立し、同月二〇日ごろ本件機械が被告会社から出荷されアキの指示に従つて日野製作所の附近の梱包業者(第一梱包)方に運搬されアキに納入された。本件機械は第一梱包で輸出向けの梱包がなされ、アキはこれを翌日ごろ保税倉庫である日吉運輸倉庫に搬入し同所で原告に引渡した。原告はこれを梱包のまま同年七月一日ごろ出航の船便で国際電気あて輸出し同社は同月前半にその引渡を受けて本社所在地の工場に据付けた。本件機械は被告会社から出荷されたのちは一度も使用されたことはなく未使用の新品のまま国際電気に納入された。

原告がアキに対し前記注文をしたのちになつて、これを知らずに被告会社東京営業所では、被告金澤や担当従業員関秀夫が相談して原告の注文に応ずることを決め、その旨板垣に連絡したが、その後原告からは注文書が提出されず、他方大同工機を経由してアキに販売した本件機械について国内向け販売の場合になされるべき検収ずみの報告が戻らないため調査した結果、原告によつて韓国の国際電気に輸出されたことを突きとめた。これを知るや、金澤は、同年七月一五日わざわざ国際電気の前記工場を訪れ、製造会社担当者の検収立会いを装い、アキの注文により出荷した前記機械であることを確認のうえ、稼働直前の状態にあつた本件機械の内部を点検するふりをして部品の一部(ピン)を密かに抜き取り稼働不能にしたほか、本件機械がアキを通じ日野製作所に納入した同年一月製造のもので被告会社としては新品の機械とは認めないなどの旨を記載した確認書を作成して国際電気に交付した。(被告金澤が同年七月一五日国際電気に対し本件機械を新品とは認めない旨の記載のある確認書を交付したことは当事者間に争いがない。)被告金澤は、本件機械が未使用の新品であることを知りながら、被告会社が国内向け販売ルートである大同工機を通じて出荷した本件機械が知らぬ間に原告によつて韓国に輸出されたことを憤り、原告に対する報復として原告と国際電気との取引関係を混乱させるべく悪意で前記各行為に出たものである。

被告金澤の前記行為の結果、原告は、稼働不能の中古機械を売り付けたものとして、国際電気から信用を失い強硬な抗議を受けるに至り、抜き取られた前記部品を被告会社から調達しようと試みたが入手できず結局韓国内で調達してようやく機械の稼働を可能にすることができた。

二被告らは本件確認書の交付は、ユーザーを特定してアフターサービスを図り販売ルートの秩序維持を確保する必要上、被告会社策定の販売ルートを故意に逸脱して輸出された本件機械については使用、未使用にかかわらずこれを新品とは認めずユーザーに対してアフターサービスを実施しないという対抗措置としてなした自衛のための正当な行為である旨主張し、被告金澤もその本人尋問における供述でその旨弁解する。

しかし、被告金澤の本件確認書の作成交付は前示の機械本体からの部品抜取り行為と同じ機会になされたものであり、また<証拠>によれば被告会社は日本国内のユーザーに限り出荷後一年間の無償アフターサービスを提供してきたことが認められるけれども、その対象外である国際電気に対しては右アフターサービス提供の責任を負えない旨をことさらに告知する必要はないばかりでなく、<証拠>により認められる本件確認書の記載内容は、右の旨を告知する趣旨と一般に理解されるような内容ではなく、本件機械が既使用の中古品であるかの如き表現を用いており、さらに前示のとおり、当初原告との取引を拒否していた被告会社はその後結局は注文に応じ従来の販売ルートによらないで(もつとも、<証拠>によると、当時被告会社により指定された特定の独占的な韓国向け輸出販売業者があつたわけではないことが認められる)、韓国に輸出するための機械を直接原告に売渡す態度をきめていたものである以上、実際に原告がした本件機械の買付け、輸出の行為による被告会社の不利益は、被告金澤その他の担当者の感情を害されたこと以上には出ないものと認められる。したがつて、右確認書交付行為は前記部品抜取り行為とともに原告に対する悪質な営業妨害行為の一環をなすものであり、行為の内容においても動機においても被告ら主張の自衛のための正当な行為と認めることはできない。

(渡辺惺 手島徹 菊池徹)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!