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東京地方裁判所 昭和50年(ワ)10774号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

主位的請求の請求原因

「原告は、本件土地を区道敷地として使用している被告に対し、土地所有権に基づき、本件土地の明渡しを求めるとともに、本件土地の不法占有による損害賠償として不法占有開始後から右明渡済に至るまでの賃料相当損害金の支払を求める。」

【判旨】

二そこで、被告の本件土地の使用権原について、判断する。

1 <証拠>によれば、本件道路が昭和一一年一一月一七日に完成し、同日東京市長が路線認定、供用開始及びその各告示をしたことが認められる。<証拠>によれば昭和一二年四月一〇日の付近道路認定廃止の東京市長の告示中の図面において本件道路がなお「認定予定線」と表示されていることが認められるが、前記各証に照らして右表示は誤記と判断されるから、これをもつて前記認定を左右することはできないし、他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。

2 昭和一〇年当時普門院が本件土地を所有していたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、次の各事実が認められる。

(一) 昭和一〇年当時、東京市における市道の路線の認定等の事務は、「道路認定関係事務取扱内規」により行なわれていたが、それによれば、道路敷地は上地することを原則とし、己むをえない事情がある場合にかぎり民有地のまま無償供用によることができるとされており、道路認定出願人(敷地所有者)は願書を東京市長あてに提出すべきものとされ、無償供用により道路認定をする場合には、出願には土地登記簿の謄本、その土地に権利の認定がある場合にはその権利者の同意書、出願人及び出願に同意した各権利者の同意書、その他の書類、図面を添附すべきものとされており、これを受理した市の担当職員は、これら書類が欠けている場合には道路認定の手続を進めないことにしていた。

(二) 本件土地付近の地区では昭和一〇年ころ当時、道路開設について地主から道路敷地を無償供与をうけて行なう例が多く、本件道路も近隣の宅地化に伴い王子方面から赤羽方面に抜ける道路として近隣の地主からの強い希望をうけて、前記路線認定、供用開始されるにいたつたものである。

(三) 昭和一一年に本件道路開設以来、原告が本件土地の道路敷地としての使用に異議を述べた以外には、本件道路の敷地所有者から異議が申出られたことは一度もなく、本件土地についても普門院から異議を申出られたことはない。

3 右認定の(一)ないし(三)の事実を総合すれば、東京市長は本件道路の路線認定以前に、当時の本件土地所有者である普門院からの出願をうけて、本件土地を無償で本件道路の敷地とする旨の公用負担契約をしたものと推認すべきである。なお被告が本訴において普門院の右願書(承諾書)を本件訴訟の証拠として提出しないことは本件記録上明らかであるが、<証拠>によれば、右願書を含む本件道路認定関係書類は昭和二〇年四月東京都建設局の庁舎の戦災の際に焼失し、あるいはそのころ戦災を避けるため保管場所を移転した際に紛失した可能性が高いことが認められるから、被告が願書、承諾書を証拠として提出しないことをもつて、公用負担契約があつたと推認するさまたげにはならない。また本件土地及び近隣土地が未登記であればただちにその所有者が確定できないとはいえないから、仮にこれが未登記であつたとしても、前記の公用負担契約があつたとの推認を覆すことはできないし、また未登記土地について登記謄本の提出ができなかつたからといつて、道路認定出願のさまたげになつたと判断することもできない。さらにまた、<証拠>によれば、無償供用した道路については東京市が免租の手続をとれることになつていたことが認められるが、同各証によれば、右免租の手続は道路敷地の所有者からのその申出があつた場合に限り、これがなされたこともまた認められるから、仮に本件土地について免租の手続がとられていなかつたとしても、これをもつて本件土地が無償供用されたものであるとの推認を覆すことはできない。

4 そして、<証拠>及び弁論の全趣旨によれば、その後本件道路の管理者は、東京市長から、昭和一八年七月東京都長官に、同二二年五月東京都知事に、同二七年一二月東京都に、そして同四〇年四月一日被告に、それぞれ引継がれ、同日被告の区長が本件道路について特別区道の路線認定、供用開始をし、その各告示をしたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

5 そして、原告が昭和二五年一一月に本件土地を普門院から譲受けたことは当事者間に争いがないから、それ以前に供用開始した本件土地の道路敷地としての公用使用権は、原告の所有権に対抗できるのであり、被告はこれを承継取得したから原告の所有権に対抗できるというべきである。

(小林克巳)

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