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東京地方裁判所 昭和50年(ワ)2006号 判決 1980年2月25日

原告

与志本林業株式会社

右代表者

由井真太郎

右訴訟代理人

野田満男

被告

山九運輸機工株式会社

右代表者

中村公三

右訴訟代理人

藤村忠雄

被告

北九州運輸株式会社

右代表者

邑本義一

被告

佐伯港湾倉庫株式会社

右代表者

山本桂佑

右両名訴訟代理人

阿部士郎

外二名

被告ら補助参加人

天塩川木材工業株式会社

右代表者

松浦周太郎

右訴訟代理人

原山庫佳

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一本件丸材の輸入に至る経緯

当事者間に争いのない事実の外、<証拠>によると以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

1  ふじ工業は昭和四九年七月二五日キングスウェイとの間で本件丸材を代金一七万二、〇〇〇ドルで買受ける旨の契約を締結し、これを輸入しようとしたが、代金決済方法として銀行から信用状の開設を受けることに困難な事情があつたため、以前から取引のあつた原告と相談した結果昭和四九年八月二一日頃原告とふじ工業との間で、原告がふじ工業から、本件丸材に関するキングスウェイとふじ工業との間の前記売買契約の買主たる地位を譲り受けることを合意し、キングスウェイに対する本件丸材売買代金一七万二、〇〇〇ドルの支払債務は原告が銀行から信用状の開設を得ることによつて決済することとなつた。

2  原告は昭和四九年八月二〇日訴外株式会社八十二銀行に対し、受益者をキングスウェイ、金額を一七万二、〇〇〇ドルとする取消不能信用状の開設を依頼し、同月三〇日三菱銀行から右信用状の開設を得ると、同日付にて通商産業省に対して本件丸材の輸入届出をした。

二本件丸材の輸入通関手続及び保管等

当事者間に争いのない事実の外、<証拠>によると、以下の事実が認められる。

1  本件丸材を積載した船舶アンラン号は、大分県佐伯港に入港して本件丸材(2)を陸揚げした後、山口県徳山港へ向かい、同港で本件丸材(1)を陸揚げすることになつていたので本件丸材の海上運送人であるユアン・アンの日本における総代理店訴外拓南海運株式会社(以下「拓南海運」という。)はアンラン号の出入港代理店として、佐伯港においては被告北九州と、徳山港においては被告山九と、それぞれ昭和四九年一〇月九日、同年三日に代理店契約を締結した。

2(一)  被告北九州は昭和四九年一〇月一一日頃ふじ工業の代理人である塩田建設から、アンラン号で輸入される本件丸材(2)の佐伯港における荷揚げ作業(船内荷役作業、筏組み、堀入れ作業)、本船燻蒸承認申請代行等と輸入通関手続代行の依頼を受けたが、同日被告佐伯からも同趣旨の依頼を受け、これを承諾して、アンラン号が佐伯港に入港した同月一九日から作業に従事した。なお、その際の塩田建設及び被告佐伯の話によると本件丸材(2)の荷受人はふじ工業であるとのことであつたので、本船入港前に作成された書類(例えば、同月一六日付本船燻蒸承認申請、同月一八日付入港予報等)及び入港時被告北九州の手記により作成されたカーゴポート・ノートには輸入者ないし荷受人として、ふじ工業名が記載されたが、本船入港後積荷目録等の書類上の輸入者が原告となつており、ふじ工業へ問合せた結果信用状開設の便宜上輸入者として原告名義を借りた旨の説明を受けたので、爾後作成された書類(昭和四九年一〇月一九日付荷役準備完了通知書、同月二二日付タイムシート)には原告名が記載され、本船燻蒸申請も日付を遡及して原告名にて申請し直した。

(二)  一方、被告山九はアンラン号の徳山港入港に先立つ昭和四九年九月末頃、ふじ工業から本件丸材(1)の徳山港における荷揚げ作業及び輸入通関手続代行の依頼を受け、これを承諾してアンラン号が徳山港へ入港した昭和四九年一〇月二三日から作業に従事した。その際のふじ工業からの依頼によると本件丸材(1)の荷受人はふじ工業であるとのことであつたが、積荷目録等の書類上の本件丸材の輸入者が原告となつていたため、被告山九は昭和四九年一〇月二三日付荷役準備完了通知書同月二五日付タイムシートには荷受人として原告名を記載し、ふじ工業の手配により作成された同月二五日付カーゴポートノートにも荷受人として原告名が記載されたが、被告山九が荷揚げ作業を行なうに際し、原告従業員は誰も立会わず、ふじ工業の従業員が終始立会つて指示をしていたので、被告山九としては、ふじ工業が輸入者として原告名義を借用したものと理解し、作業費用もふじ工業へ請求した。

3  輸入貨物の通関手続には通常でも一か月ほどの期間を要するため、その間貨物は保税地域にこれを保管しておく必要があるが、大量貨物の場合は保税地域内に保管しておくことが困難なので、税関から他所蔵置許可を得た上で、港内倉庫業者にその保管を依頼するのを通例とするところ、本件丸材も大量であることから保税地域に保管しておくことができず、ふじ工業は徳山港においては被告山九に対し前記荷揚げ作業及び輸入通関手続代行の依頼と共に本件丸材(1)を輸入通関手続の終了するまで保管しておくように依頼し、被告山九もこれを承諾して、アンラン号から本件丸材(1)を荷揚げした後、これを徳山港晴海埠頭野積場へ運搬して高積し、保管した。

被告山九は以上の荷役、運送、保管に要した費用をふじ工業に請求し、その支払のため同会社振出の約束手形を受け取つたが、後日ふじ工業の倒産により、結局右手形は不渡になつた。

一方、佐伯港においては、被告佐伯は昭和四九年一〇月一〇日頃ふじ工業代理人の塩田建設からふじ工業が輸入する木材の保管方依頼を受けてこれを承諾し、荷揚げ作業と輸入通関手続代行は前記のとおり被告北九州に依頼することとした。そして被告佐伯は被告北九州が荷揚げし、被告佐伯が管理する片神水面貯木場まで運搬してきた本件丸材(2)を受取り、同貯木場水面で保管するに至つた。

ところで、かねて佐伯港において被告北九州は倉庫営業を行なわず、被告佐伯は荷役、運搬、輸入通関手続代行業務を行なわなかつたので、両社は互いに密接な協力関係にあり、被告北九州が荷役作業、輸入通関手続代行を行なう輸入貨物の保管は被告佐伯がこれを行なうのを通例としており、本件において被告北九州がした荷揚げ作業の費用は、ふじ工業の要請で被告佐伯の保管費用とあわせて被告佐伯からふじ工業宛に請求され、後記のとおりふじ工業が本件丸材(2)につき発行した荷渡指図書の宛名も被告北九州宛となつているのであつて、塩田建設としては佐伯港における本件丸材(2)の荷揚げ作業及び保管を右被告両社において適宜共同ですることを依頼したものである。

三本件丸材の荷渡指図及び引渡等

当事者間に争いのない事実の外、<証拠>によると以下の事実が認められこれを覆すに足りる証拠はない。

1  補助参加人は昭和四九年一一月五日ふじ工業との間で、本件丸材(1)のうち九九五本を代金二、二七一万五、五三二円で、本件丸材(2)を代金一、三八三万六、七五三円でそれぞれ買い受ける旨の契約を締結し、ふじ工業からそれぞれ被告山九宛に本件丸材(1)のうち九九五本(荷渡指図書添付の検量明細書記載の番号で特定される。)を、被告北九州宛に本件丸材(2)をいずれも補助参加人に引渡すべき旨の同日付各荷渡指図書の交付を受けた。

2  そこで、補助参加人は、直ちに従業員訴外中沢政三、同田谷野徹也らを被告らに派遣し、右丸材の引渡を受けるべく以下のとおり交渉した。

(一)  本件丸材(1)のうち九九五本については、補助参加人の前記従業員らは昭和四九年一一月六日頃から一五日頃までの間に被告山九に対し、同被告宛のふじ工業発行補助参加人に対する荷渡指図書及びふじ工業と補助参加人間の右丸材の売買契約書を呈示した上、未だ輸入通関手続が終了していないため現実の引渡を受けることはできなかつたものの、右丸材は補助参加人がふじ工業から購入したものであるから、以後補助参加人のために保管を継続するように依頼すると共に、丸材の保管場所に赴き、右荷渡指図書添付の検量明細書と現品とを一々照合検査した上、六〜七ケ所に分けて高積された右丸材の山の周囲にロープを張りめぐらし、ベニヤ板に補助参加人所有であることを記してこれを掲示し、被告山九も右依頼の趣旨に応じて補助参加人に対し通関手続が終了した場合は現実に引渡すことを約した。その後同年一二月一九日頃、再び補助参加人従業員訴外中沢政三はいずれも被告山九宛の後記原告発行ふじ工業に対する本件丸材(1)全部の荷渡指図書及び前記ふじ工業発行の補助参加人に対する右丸材のうち九九五本の荷渡指図書の二通を同被告に示した上、改めて右丸材は補助参加人の所有するものであるから、他の者に引渡さないように念を押し、被告山九はこれを承諾した。

(二)  本件丸材(2)については、補助参加人の前記従業員らが、昭和四九年一一月七日頃、被告北九州及び被告佐伯に対し、被告北九州宛のふじ工業発行の補助参加人に対する右丸材の荷渡指図書及び右丸材のふじ工業と補助参加人間の売買契約書を呈示した上、右丸材は補助参加人がふじ工業から購入したので、以後補助参加人のために保管を継続するように依頼し、被告佐伯はこれに応じ、塩田建設佐伯支店長を通じてふじ工業に右売渡の事実を確認の上、同日本件丸材(2)を預かつた旨の補助参加人宛の預り証を交付した。その後同月一二日頃補助参加人の従業員は被告佐伯の案内で本件丸材(2)の保管してある佐伯港片神貯木場に赴き、被告佐伯の所持した検量明細書と現品とを照合検査して、その存在を確認し、同年一二月一九日頃いずれも被告北九州宛の後記原告発行ふじ工業に対する荷渡指図書及び前記ふじ工業発行補助参加人に対する荷渡指図書の二通を被告佐伯に呈示して、右丸材を他の者に引渡さないように念を押し、被告佐伯はこれに対し原告と荷送人との間に貨物の内容につきトラブルがあつて通関手続が延引しているが、これが完了次第引渡す旨を確約した。

3  一方、原告は昭和四九年一一月一四日頃本件丸材の全部を五、五〇〇万円でふじ工業に売却し、代金のうち四、〇〇〇万円については約束手形の振出を受け、残り一、五〇〇万円については爾後の原告とふじ工業との間の取引の過程で徐々に支払を受けることとした。そして原告は同年一一月二五日、被告山九宛に本件丸材(1)全部を、被告北九州宛に本件丸材(2)をそれぞれふじ工業へ引渡すようにとの各荷渡指図書を発行して、ふじ工業に交付した。

補助参加人はふじ工業から右二通の荷渡指図書の交付を受け、前記のとおりふじ工業発行の荷渡指図書と共に被告らに対して改めて呈示し、補助参加人買受の丸材につき自己のための保管を依頼し、その承諾を得た。

4  ふじ工業は昭和四九年一一月二七日頃金子商店に対し本件丸材(1)のうち四二本(荷渡指図書添付の検量明細書記載の番号で特定される。)を、同月三〇日頃ツルイに三八八本(同前)を、同年一二月一日頃小田材木店に七八本(同前)を、同月一〇日頃マルイに一八本(荷渡指図書自体に検量番号が記載されて特定される。)をそれぞれ売却し、各契約締結日付で、被告山九宛に各人に売却した丸材を引渡すべき旨の各荷渡指図書を右各人に交付した。

5  金子商店、ツルイ、小田材木店及びマルイは、それぞれふじ工業から前記各荷渡指図書の発行を受けた日頃に、右荷渡指図書を被告山九に持参して呈示した上、右各丸材をふじ工業から購入したことを告げ、以後これを同人らのために保管を継続するように依頼し、被告山九もこれに応じ通関手続完了後は同人らにこれを現実に引渡すことを約した。

6  なお、ふじ工業は昭和四九年一一月末頃から同年一二月二〇日頃までの間に本件丸材(1)のうち未売却の丸材を、通関手続完了前であるのに被告山九不知の間にこれを蔵置場所から他所へ搬出した。

7 ふじ工業は昭和四九年一二月二〇日頃不渡手形を出し、事実上倒産したので、原告は同月二二日到達の書面にてふじ工業に対し、三3記載の本件丸材売買契約を債務不履行により解除する旨通知し、被告山九及び同北九州に対してはそれぞれ同月二二日、同月二三日到達の書面にて、原告が右各社宛同年一一月二五日発行したふじ工業に対する本件丸材(1)、(2)の荷渡指図書は無効であるので、本件丸材をふじ工業へ引渡さないようにとの通知をなし、更に同月二四日頃には原告従業員訴外大井行史が被告ら方に赴き、本件丸材は原告が所有するものであり、他の者へ引渡さないように申し入れた。

8  ところで、本件丸材(1)の輸入通関手続は昭和五〇年一月二二日に、同(2)のそれは同月二七日にそれぞれ完了し、本件丸材(1)のうち、九九五本及び同(2)は同年二月中旬頃補助参加人から右丸材を購入した塩田建設にそれぞれ被告山九同佐伯から現実に引渡された(金子商店、ツルイ、小田材木店及びマルイがふじ工業から購入した各丸材も輸入通関手続完了後、各人へ現実に引渡されたものと推測されるが、詳細は明らかではない。)。

四総括

1  以上認定の事実によると、ふじ工業は本件丸材の購入を企図したが、信用状開設の都合上原告に依頼してその名において輸入してもらい(原告が所有権を取得しなかつたという趣旨ではない。被告らはそのように主張するが、この主張を認めるに足りる証拠はない)、他方、昭和四九年一一月五日補助参加人との間で、当時原告所有の本件丸材(1)のうち九九五本及び本件丸材(2)を売却する旨の契約をし、その後同月一四日原告との間で本件丸材全部につきこれを買受ける旨の契約をしたものであるところ、およそ自己の権利に属さない他人の所有する物を他へ譲渡した後に、その譲渡人がその物の所有者から所有権を取得した場合には、当然に右物の所有権は譲受人に移転するものと解されるから、補助参加人としては、ふじ工業との間で前記丸材を買受ける旨の契約をした時点においては未だこれらの所有権を取得するに由なかつたが、ふじ工業が原告との間で本件丸材全部につきこれを買受ける旨の契約をしたことにより、補助参加人買受分の丸材の所有権を取得したものというべきである。

2  次に、前記認定事実によると、ふじ工業は本件丸材を積載した本船入港後、その荷役、保管を原告代理人として被告らに依頼したもので、補助参加人に対する荷渡指図書を発行した昭和四九年一一月五日当時は本来その権限を有せず従つて補助参加人も右荷渡指図書によつては本件丸材の受領権限を取得しなかつたものというべきであるが、同月二五日ふじ工業が原告から荷渡指図書の交付を受け本件丸材の引渡を受け得る権限を与えられたことによつて、当然に補助参加人に右権限が移転したものと解される。

3 また、金子商店は昭和四九年一一月二七日頃本件丸材(1)のうち四二本、ツルイは同月三〇日頃同じく三八八本、小田材木店は同年一二月一日頃同じく七八本、マルイは同月一〇日頃同じく一八本をそれぞれふじ工業から購入することによつてその所有権を取得し(当時ふじ工業は原告から本件丸材(1)を買受けて所有権を有していた)、各当該丸材につきふじ工業から各荷渡指図書(三、4掲記)の交付を受けることにより、前記原告発行のふじ工業に対する荷渡指図書の存在と併せてこれらの丸材の引渡を受け得る権限を取得したものである。

4 ところで、寄託者が受寄者に宛て荷渡先を指定して寄託物を引渡すよう指図した荷渡指図書の発行は、一般的には、受寄者に対する寄託者の計算で寄託物の引渡をなし得る権限を与え、他方、荷渡先に対して寄託物の受領権限を付与する書面による指図であつて、寄託者は特段の事情のない限り受寄者に対する通知により、いつでも指図を徹回することができるのであるから、右特段の事情として、受寄者が荷渡指図書の所持人に対して寄託物を引渡し、もしくはその引渡義務を承認した後には、もはや右指図を徹回することはできないものというべきである。けだし、前者の場合は受寄者の債務は弁済により消滅し、後者の場合は寄託者の指図に基づき受寄者において独立の物品引渡義務を負担するに至つたので、その後において指図の徹回を許すことは相当でないからである。

そして後者の場合承認の相手方たる荷渡先に対して寄託者から指図による占有移転がなされたと同視し得る法律効果が生じるものというべきである。

5 これを本件についてみると、補助参加人外四名がそれぞれふじ工業から本件丸材中の各買受分の荷渡指図書の交付を受けると直ちに被告らに対し右各荷渡指図書を呈示してその引渡を求めたところ、被告らにおいて通関手続の完了した段階で補助参加人外四名に丸材を現実に引渡す旨約し殊に被告山九は補助参加人が現場を検査確認の上、ロープで囲いをしてベニヤ板にて所有権を明示することを容認し、被告佐伯は補助参加人に対し本件丸材(2)につき、同人宛の預り証を発行したこと、昭和四九年一二月一九日補助参加人が原告発行被告山九及び被告北九州宛のふじ工業に対する本件丸材(1)、(2)の各荷渡指図書を被告らに呈示して重ねて補助参加人の購入した丸材を他へ渡さないように求めた際も前記約束を確約したこと等の事実によると、本件丸材中補助参加人外四名がふじ工業から買受けた分については、遅くとも昭和四九年一二月一九日までにすべて被告山九及び被告北九州ないし被告佐伯により補助参加人外四名に対して引渡義務が承認され、右各人は民法一七八条所定の引渡を受けたのと同視し得ると認めるのが相当である。

6 原告がふじ工業に対し本件丸材の売買契約を解除する旨通知をなしたのは昭和四九年一二月二二日であり、被告山九及び被告北九州に対して、同年一一月二五日付原告のふじ工業に対する荷渡指図が無効である旨通知して、右指図を徹回したのは、それぞれ同年一二月二二日及び二三日であるが、前記のとおり、既に被告らが本件丸材(1)、(2)のうち補助参加人外四名買受分につき同人らに対して引渡義務の承認をなしていた以上右指図の徹回は許されないものというべきであるのみならず、同人らは民法五四五条一項の第三者にあたりかつ民法一七八条の対抗要件をも具備しているのであるから、被告らが原告に対する本件丸材の引渡を拒絶しその後補助参加人外四名もしくはその指定した者に対しその現実の引渡をなしたことは原告に対する関係において何ら不法行為あるいは債務不履行となるものではない。

7  なお、本件丸材中ふじ工業から補助参加人外四名に売渡された残りの丸材については、ふじ工業が原告から本件丸材を購入する旨の契約を締結して所有権を取得し、かつ原告からの荷渡指図を受けた後である昭和四九年一一月末から同年一二月二〇日頃までの間に自ら他所へ搬出したのであり、原告から被告山九に対し、ふじ工業への荷渡指図の徹回通知がなされたのは同月二二日であることに照すと、ふじ工業の右行為につき被告山九が原告に対する関係において不法行為あるいは債務不履行責任を負う理由はない。

五以上の次第で原告の被告らに対する本訴請求はその余の点につき判断するまでもなくいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(佐藤安弘 島田周平 高林龍)

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