東京地方裁判所 昭和50年(ワ)5992号 判決 1976年3月29日
当事者参加人 周文哲
被参加人(原告) 黒須千代三
被参加人(被告) 国際商事株式会社
被参加人(引受参加人) 知久貞信
主文
一 参加人の当事者参加申出を却下する。
二 当事者参加の申出によつて生じた訴訟費用は参加人の負担とする。
事実および理由
参加人は原告黒須千代三、被告国際商事株式会社、引受参加人知久貞信間の当庁昭和四七年(ワ)第五三七一号建物収去土地明渡等請求事件につき、同事件の口頭弁論終結後である昭和五〇年七月一四日、別紙記載の請求の趣旨および原因を記載した書面を提出して当事者参加の申出をした。
そこで、本訴訟の口頭弁論終結後になされた当事者参加の申出の適否について考えるに、民事訴訟法第七一条によれば、訴訟の結果により権利を害されるべきことを主張する第三者または訴訟の目的物の全部または一部が自己の権利であることを主張する第三者は当事者として訴訟に参加できると定められているが、その当事者参加の制度は、三者間の紛争を一個の判決によって矛盾なく解決するため、第三者が他人間に存在する訴訟状態を参加申出当時の現状において利用することを許したものである。この制度本来の趣旨に照らすと、本訴訟の口頭弁論終結後は、弁論が再開されない限り、当事者参加の申出は許されないと解すべきである。
そして、もし弁論終結後の当事者参加の申出が許されるとすると、裁判所は必ず口頭弁論を再開しなければならないことになり、時機に遅れた参加申出により既に判決を期待できる状態にあった被参加当事者の利益が害される結果を容認しなければならないことになる。したがって、このような当事者参加の申出にかかわらず、弁論を再開するか否かは、裁判所の専権に属し、裁判所は既に終結した口頭弁論に基づいて本訴訟の判決を言渡すことができると解さなければならない(最高裁判所昭和三八年一〇月一日判決・裁判集六八号五頁参照)。
よつて、本件当事者参加の申出は不適法であつて、その欠缺は補正することができないので、民事訴訟法第二〇二条に従いこれを却下し、訴訟費用の負担につき同法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 滝川叡一)
(別紙)
請求の趣旨
一 被参加人知久並に同国際商事らに対しては、別紙物件目録記載(一)の建物(以下本件建物という)の所有権取得の確認を、被参加人黒須に対しては、別紙物件目録記載(二)の土地(以下本件土地という)の借地権存在の確認をせよ。
二 訴訟費用は被参加人らの負担とする。
との判決を求める。
請求の原因
一 本件建物は当事者参加人の所有である。即ち、被参加人知久が、昭和四九年二月八日競落して同年三月一一日所有権移転登記をなしてから訴外広岡俊郎及び同広岡ちいらに昭和四九年七月一五日売買予約せしにより、同年同月一八日仮登記をせしところ、昭和五〇年一月一六日、同広岡らが譲渡せしにより、参加人に対し、同年七月七日仮登記の所有権移転請求権移転が登記され、同時に、昭和同年一月三〇日売買を原因とする被参加人知久より参加人に対する所有権移転登記を経由して参加人の所有に帰属、昭和同年七月七日参加人が正当なる所有権者となつたものである。
よつて、被参加人知久並に同国際商事らに対する本件建物の所有権取得の確認を求めるものである。
二 本件建物が前項の競落前は被参加人国際商事の所有に係り、而して右国際商事は被参加人黒須の所有に係る本件土地に対し、借地権を有せるものにして、前記競落を原因とする本件建物の所有権移転と共に本件土地に対する借地権も亦当然に被参加人国際商事より同知久に承継され、又、従つて参加人周に当然当該借地権が移行せしことは明白にして、
よつて、参加人は被参加人黒須に対し、本件土地の借地権存在の確認を求めるものである。
尚、本件土地に対する参加人の借地権範囲は後日明らかにする。
(別紙) 物件目録<省略>