東京地方裁判所 昭和50年(借チ)1009号 決定 1976年1月28日
申立人
谷川良三
右代理人
上田幸夫
相手方
亡平林伝之助遺産管理人
野村雅温
主文
申立人が相手方に対し金四五万二、〇〇〇円を支払うことを条件に、別紙目録(二)の建物を取毀し、同目録記載(三)の建物を建築することを許可する。
理由
一本件申立の要旨
申立人は、昭和三一年四月一五日亡平林伝之助から別紙目録記載(一)の土地(以下、本件土地という。)を普通建物所有の目的で期間の定めなく賃借し、右土地上に同目録記載(二)の建物(以下、現存建物という。)を所有しているが、右伝之助助は、昭和四三年九月二四日死亡し、平林はん、平林伝蔵、香取登美子、官川芳子、平林とみ子の五名の相続人が居るが、昭和四四年四月一日相手方が亡伝之助の遺産管理人に選任された。なお、本件土地の現在の賃料は月額六、〇七二円である。
申立人は、現存建物を別紙目録記載(三)の建物に改築すべく計画中であるが、本件賃貸借契約には無断増改築制限特約の存否について争いがあり、右改築について賃貸人と協議が調わないので、その承諾に代る許可の裁判を求める。
二当裁判所の判断
(一) 本件申立の当否
本件資料によれば、本件申立の要旨記載の事実および本件の改築計画が本件土地の利用上相当でありかつ法令の制限上違法であることが認められ、他に本件改築を不当とすべき事由はない。従つて、本件改築は後記条件のもとにこれを許可することとする。
(二) 附随処分
鑑定委員会は、当事者間の利益の衡平をはかるための附随処分として、増改築承諾料の一般的慣行率を考慮して本件土地の更地価額一、一五九万七、〇〇〇円のほぼ3.9パーセントに当る金四五万二、〇〇〇円の財産上の給付を命じるのが相当とする旨の意見書を提出し、申立人もこれを承諾している。
当裁判所も、従来の裁判例の傾向等諸般の事情を考慮して鑑定委員会の右意見をもつて相当と考え、本件改築は財産上の給付として申立人において金四五万二、〇〇〇円の支払いをなすことを条件にこれを許可することとする。
なお、賃料については、鑑定委員会の意見に従い、現段階ではその改訂の必要はないものと考える。
よつて、主文のとおり決定する。
(鷺岡康雄)
<別紙目録省略>