東京地方裁判所 昭和50年(刑わ)1156号 判決 1976年5月24日
主文
被告人を禁錮四月に処する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、
第一 公安委員会の運転免許を受けないで、昭和五〇年三月九日午後二時一五分ころ、東京都荒川区西尾久二丁目三〇番付近道路において、普通貨物自動車を運転し
第二 公安委員会の運転免許を受けず、かつ、酒気を帯び、呼気一リツトルにつき〇・二五ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で、昭和五〇年三月二八日午前八時二五分ころ、東京都荒川区西尾久一丁目三番二号付近道路において、普通乗用自動車を運転し
第三 前記第二記載の日時ころ、業務として前記自動車を運転し、前同所先の幅員約八・一メートルで路側帯のある道路を三業通り方面(東方)から小台通り方面(西方)に向け時速約三〇キロメートルで直進中、進路前方に普通貨物自動車が駐車していたので、右に進路を変更してその側方を通過しようとしたが、右駐車車両の約九・三メートル前方には横断歩道が設けられており、その付近からの横断者の進出が予想されるところ、右駐車車両によつて横断歩道付近の左方の見とおしが困難であつたから、減速徐行し、横断歩道付近の左方の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、右駐車車両及びその右側方を対面歩行中の歩行者に気をとられ、前記速度のまま右に進路を変更して右駐車車両の側方を通過した過失により、おりから、右駐車車両の前方(横断歩道の約四・五メートル手前)から横断歩道の北端に向かい自転車に乗つて斜め横断中の大塚吉伊(当時六六歳)を約五、六メートル左前方にはじめて発見し、急制動の措置をとつたが間に合わず、同車に自車を衝突させて同人を路上に転倒させ、よつて、同人に全治約二か月間を要する右下肢打撲擦過傷・右腓骨骨折の傷害を負わせ
たものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
判示第一の所為につき
道路交通法六四条、一一八条一項一号(懲役刑選択)
判示第二の所為中
無免許運転の点につき 道路交通法六四条、一一八条一項一号
酒気帯び運転の点につき 道路交通法六五条一項、一一九条一項七号の二、同法施行令四四条の三
判示第三の所為につき
刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号(禁錮刑選択)
科刑上一罪の処理
判示第二の所為は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い無免許運転の罪の刑で処断(懲役刑選択)
併合罪加重
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四七条但書により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重
訴訟費用の処理
刑事訴訟法一八一条一項本文