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東京地方裁判所 昭和50年(行ウ)113号 判決 1980年2月25日

原告 伊藤はつ

被告 東京都知事

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が昭和四三年一一月二八日付で別紙目録記載の土地について伊藤菊次郎に対してした換地不交付処分及び清算金決定処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二  被告

主文と同旨の判決

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  被告は、東京都市計画第九地区復興土地区画整理事業(以下「本件区画整理事業」という。)の施行者として、昭和四三年一一月二八日付で伊藤菊次郎に対し、同人所有の別紙目録記載の(一)及び(二)の土地(以下「本件(一)及び(二)の土地」ともいう。)について換地を定めない処分(以下「本件換地不交付処分」という。)及び本件(一)の土地について金九万〇九七二円、同じく(二)の土地について金九万一四七一円の清算金を交付する決定(以下「本件清算金決定処分」という。)をした。

2  伊藤菊次郎は昭和四七年三月二一日死亡し、同人の妻である原告は、相続により伊藤菊次郎の権利義務を承継した。

3  しかしながら、本件換地不交付処分及び本件清算金決定処分は次に述べる理由によつて違法である。

(一) 本件換地不交付処分は、本件(一)及び(二)の土地が土地区画整理法(昭和二九年法律第一一九号)(以下「法」という。)第九五条第一項第六号の「公共施設の用に供している宅地」に該当するとして、同条第六項によりなされたものであるが、本件(一)及び(二)の土地が道路として使用されていたとしても、それは所有者の好意により事実上道路として使用されていたに過ぎないものであり、「公共施設の用に供している宅地」ではないから、右不交付処分は違法である。

(二) 本件清算金の額は、きわめて低額であり、その算定を誤つた違法がある。

4  よつて、原告は、本件換地不交付処分及び清算金決定処分の取消しを求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1及び2の事実は認める。

2  請求の原因3の(一)のうち、本件(一)及び(二)の土地が公共施設の用に供している宅地に該当するとして、被告が法第九五条第六項により本件換地不交付処分をしたことは認め、その余の主張は争う。

同3の(二)の主張は争う。

三  被告の主張

1  本件換地不交付処分について

被告は、昭和二一年一〇月一日本件区画整理事業につき、施行地区の告示(東京都告示第五〇六号)をしたものであるところ、本件(一)及び(二)の土地は右事業の開始時に道路として使用されていた宅地であつた。

したがつて、本件(一)及び(二)の土地は、法第九五条第一項第六号にいう「公共施設の用に供している宅地」に当たるので、被告は、同条第六項により右各土地について換地を定めない処分をしたものである。

2  本件清算金決定処分について

(一) 清算金の算定方法

(1) 清算金を算定するには、まず従前地と換地の評価が行なわれるが、被告の施行する土地区画整理事業における土地の評価は、いわゆる路線価式評価法によつている。

路線価式評価法とは、街路毎にこれに接する標準画地(街路に直角に接し、その平均的利用価値が最高とみなされる矩形地)を想定してその単位面積当たりの価格、すなわち路線価を定め、それぞれの画地の特殊性を勘案して、修正を行ない、各宅地を評価する方法である。

路線価式評価法による土地の評価は、具体的には次のように行なわれる。

<1> まず、各街路について路線価を定め、事業施行前の街路に付された路線価の最大価を一〇〇〇(個)として比較換算した指数を各街路について表示する(以下、これを「路線価指数」という。)。

<2> 次に、各宅地を評価するために、当該宅地の平均平方メートル当たりの指数を算出する。この指数は、当該宅地の接する街路の路線価指数を基準にして算出するが、当該宅地が標準画地に比較して、評価につき考慮すべき事由(間口が狭いか否か、奥行が深いか否か、角地か否かなど)があれば、減額又は増額の修正が加えられる。

また、当該宅地が、路線価を付した道路又は通路の用に供されている場合には、その道路又は通路に付された路線価指数に利用価値ないし取引価値を勘案して定められた一定の割合を乗じて算出した数値が、当該宅地の平均平方メートル当たりの指数とされる。

このようにして算出された当該宅地の平均平方メートル当たりの指数に当該宅地の地積を乗じて、当該宅地の評定指数を求め、その評定指数に指数一個当たりの単価(以下、これを「指数単価」という。)を乗じて当該宅地の評定価額が得られる。

右の指数単価は、相続税課税標準価額、固定資産税課税標準価額及び鑑定評価等を参酌し、評価員の意見を聞いて施行者が定めるものである。

(2) このようにして、評定価額が得られると、従前地及び換地について、それぞれ宅地価額の総額を求める。次に、当該土地区画整理事業における交付すべき清算金の総額と、徴収すべき清算金の総額を等しくするために、従前地の評定価額の総額で換地の評定価額の総額を除した比率(以下、これを「比例係数」という。)を求め、この比例係数を従前の各宅地の評定価額に乗じて、従前の各宅地の比例権利価額を算出する。

清算金は、従前の各宅地の比例権利価額と、その各宅地に対応する換地の評定価額の差額を算出することにより算定する。

そして、従前地の比例権利価額が換地の評定価額よりも高い場合には、清算金の交付となり、その逆の場合には清算金の徴収となる(以下、これを「比例清算方式」という。)。

(二) 本件土地の評価額

(1) 被告は、本件(一)の土地の基準地積(換地及び清算金額を定めるための基準となる従前地の地積をいう。)を一〇・一一平方メートル、また本件(二)の土地のそれを一〇・一八平方メートルと決定した。

(2) 被告は、本件(一)及び(二)の土地を含む街路の路線価指数を一二〇(個)と定めた。

(3) 本件(一)及び(二)の土地の平均平方メートル当たりの指数は、右各土地が前に述べたとおり通路の用に供されており、また道路施設である側溝が設けられていたので、路線価指数にその土地の利用価値ないし取引価値を勘案して定めた一定の割合である〇・三を乗じて算出した。

右のような、私道等の評価を路線価の〇・三とした根拠は次のとおりである。

一般に私道の取引価格は、宅地価格の何割かであるとして、定められるのが通例であるところ、土地区画整理事業においては、路線価指数に私道の公共性の強弱の度合い等を考慮して定めた一定の割合を乗じ、私道の単位面積当たり指数を算出している。

被告が施行する土地区画整理事業においては、

<1> 道路法により指定認定を受けた道路については〇・一

<2> 現に公共の用に供されていると認められるもので、地方公共団体において道路の施設を施したもの等については〇・三

<3> 建築基準法第四二条第二項及び第三項の規定により特定行政庁の指定をうけ道路とみなされており、かつ、幅員二・七メートル未満又は有租のものについては〇・五

<4> 右の<3>の道路規模以下のもので評価上の必要により路線価を付した行き止まりの道路及びこれに準ずるものについては〇・七

の数値を路線価指数に乗じ、当該私道等の平均平方メートル当たりの指数を算出している。

ところで本件土地の場合、<1>の認定道路であると考えられたが、同一地区内に認定外道路で道路施設が施され、かつ、本件通路と同程度の私道が多数あり、それと本件通路の評価の公平をはかる趣旨から〇・三を乗じたものである。

(4) 被告は、本件土地区画整理事業における指数単価を二二〇円と定めた。

本件区画整理事業の施行地区内の昭和三七年度分相続税路線価を平方メートル当たりに換算したものの総価額は、四億三三一二万七七四五円であり、路線価を付した道路の総延長は七二二八・〇〇メートルであつたので、前者を後者で除して算出した単位当たりの路線価(平均路線価)は、五万九九二三円であつた。

また同地区内における土地区画整理事業施行後の路線価の総指数は二〇九万九八〇八個であり、路線価指数を付した道路の総延長は、七八三八・二〇メートルであつたので、前者を後者で除して算出した単位当たりの路線価指数(平均路線価指数)は二六七・八九個であつた。

以上により算出した本件区画整理事業の施行地区内における昭和三七年度分相続税路線価に基づく平均路線価五万九九二三円を、土地区画整理事業施行後の路線価指数に基づく平均路線価指数二六七・八九個で除して得た数値をもとにし、かつ、評価員の意見を聞き、指数単価を二二〇円と定めた。

(5) 右の結果本件(一)及び(二)の土地の評価は、次のとおりとなる。

<1> 本件(一)の土地について

平均平方メートル当たり指数=路線価指数×私道等の評価(〇・三)

一二〇×〇・三=三六(個)

評定指数=平均平方メートル当たり指数×基準地積

三六×一〇・一一≒三六四(個)

評定価額=評定指数×指数単価

三六四×二二〇円=八万〇〇八〇円

<2> 本件(二)の土地について

平均平方メートル当たり指数=路線価指数×私道等の評価(〇・三)

一二〇×〇・三=三六(個)

評定指数=平均平方メートル当たり指数×基準地積

三六×一〇・一八≒三六六(個)

評定価額=評定指数×指数単価

三六六×二二〇円=八万〇五二〇円

(三) 本件清算金の算定

本件土地区画整理事業における比例係数は一・一三六〇〇八六九八であつた。したがつて、本件土地の比例権利価額(評定価額×比例係数)は次のようになる。

本件(一)の土地

八〇、〇八〇×一・一三六〇〇八六九八≒九〇九七二(円)

本件(二)の土地

八〇、五二〇×一・一三六〇〇八六九八≒九一四七一(円)

本件(一)及び(二)の土地については、いずれも換地を定めない処分がされたから、換地の評定価額は零円であり、したがつて、右各土地の比例権利価額がそのまま交付されることになる清算金額となるものである。

四  被告の主張に対する原告の認否及び主張

1  被告の主張1のうち、本件従前地が本件区画整理事業の開始時に道路として使用されていた宅地であつたことは不知。

2  本件(一)及び(二)の土地が道路として使用されていたとしても、それは所有者の好意により事実上道路として使用されていたものであり、このことは、右各土地に対する昭和四三年度の固定資産税評価額が合計一四六万九七七六円であつたことによつても明らかである。若し、本件(一)及び(二)の土地が公共用地化していたとすれば非課税の扱いがされているべきものである。

右各土地が道路として使用されていたのは、これらに接する国有道路敷の幅員が一・八メートルという狭小なものであつたため、右道路敷に沿う宅地が便宜道路として使用されていたものであり、各所有者らも好意からこれを認めていたものであり、決して当初から右の各宅地が道路敷として使用されていたものではない。本来道路等の公共施設は、国又は地方公共団体において完備すべきものであるから、国又は地方公共団体は右宅地を道路として使用する時点において、時価で買収すべきものであり、右の買収をすることなく、長期間にわたり宅地所有者の好意に甘えて道路として使用していた宅地を、区画整理事業の施行者が、換地の段階で、右の既成事実をたてに、右宅地が「公共施設の用に供している宅地」に該当するものであるとし、換地を定めない処分をすることは許されないものである。

3  本件清算金の算定方法には、次のとおり誤りがあるから、これにより算出した本件清算金額はきわめて低額であり、その算出には誤りがある。

(一) 被告は、本件土地の路線価指数一二〇(個)と定めたが、その根拠については、合理性を欠くものであり、本件土地は、そのように低価値のものではない。

(二) 被告は、本件土地が通路の用に供されていたとして、右土地を宅地の〇・三と評価をしたが、そもそも本件土地がどの程度公共用道路として機能していたかが明らかでないから、〇・三とすべき根拠を欠いているものである。

(三) 本件区画整理事業における指数単価は、相続税路線価を基準にして算出しているが、同路線価は実際の取引価額の五〇パーセント程度に過ぎないものであるから、これを基準にして算出した指数単価二二〇円は不当に低額である。

第三証拠<省略>

理由

一  請求の原因1及び2の事実は、当事者間に争いがない。

二  本件換地不交付処分の取消しを求める請求について

1  被告が昭和二一年一〇月一日本件土地区画整理事業につき、施行地区の告示をした事実は、原告において明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

2  成立に争いのない乙第四号証、第五号証の一、二及び四、証人沓掛巽の証言及び弁論の全趣旨により成立を認める乙第五号証の三並びに右証言によれば、昭和一四年当時東京市淀橋区角筈二丁目五六番をはじめ同所五七番の二、五四番の一・二の北側の地先及び同所七八番をはじめ同所七七番の一、八二番の四の南側地先には、東西に通ずる幅員一・〇一間(約一・八メートル)の国有道路敷が存在し、右国有道路敷地を中心にして幅員三・五メートル位の、一般交通の用に供する通路(以下、「本件通路」という。)が東西に通じていたこと、東京市は昭和一四年中、右国有道路敷の隣接地の各所有者に対し、国有道路敷との境界を指示し、その承認を求めたことがあつたが、当時角筈二丁目五六番及び七八番の所有者であつた渡邊文雄は、東京市が指示した幅員一・〇一間の右国有道路敷とこれに隣接する右五六番及び七八番との境界を承認したこと、そして国有道路敷に隣接する五六番の北側及び七八番の南側の各部分は通路の一部になつており、かつ、本件通路の北側及び南側には側溝が設置されていたことが認められ、この認定に反する証拠はない。

さらに、成立に争いのない乙第二、三号証の各一・二、第四号証及び証人沓掛巽の証言を総合すると、昭和二一年一〇月一日当時においても、右に述べた幅員三・五メートル位の本件通路は存在しており、前記国有道路敷に隣接し、右通路の一部になつていた前記五六番の北側部分及び七八番の南側部分は分筆されて本件(一)及び(二)の土地になつていたことを認めることができる。

してみると、本件(一)及び(二)の土地は、本件区画整理事業開始時において前記認定のように一般交通の用に供する通路の一部になつている以上土地区画整理法第九五条第一項第六号にいう「公共施設の用に供している宅地」に該当するものというべきである。

3  原告は、本件(一)及び(二)の土地は、当初から道路敷になつていたものではなく、所有者の好意により事実上道路として使用されていたものであることを理由に、右土地は法第九五条第一項第六号にいう「公共施設の用に供している宅地」に該当しない旨を主張するが、前掲各証拠によれば、本件(一)、(二)の土地を道路敷として使用するについては、本件区画整理事業開始当時その所有者であつた渡邊文雄の適法な承諾を得ていたものと推認されるのみならず、仮りに単に同人の好意により道路敷として使用されていたものとしても、現実に一般交通の用に供する道路として使われているものである以上、原告主張のような事情は前記の認定判断を動かすに足るものではないから原告の右主張は失当である。

4  したがつて、被告がした本件換地不交付処分には、原告主張の違法はないというべきである。

三  本件清算金決定処分の取消しを求める請求について

1  まず、証人沓掛巽の証言によれば、被告施行の土地区画整理事業においては、いわゆる路線価式評価法を採用して宅地の評価を行なつていること、さらに清算金の算定については、右により得られた宅地の価額を基準として、いわゆる比例清算方式を採用し、清算金額を算出していること、右路線価式評価法及び比例清算方式の内容は、前記被告の主張2(一)(1)及び(2)のとおりであることが認められる。

しかして、右路線価方式により宅地を評価し、比例清算方式を採用して清算金を算定することは、土地区画整理事業の性格に照らし、右各方式は合理性を有するから、法第九四条の趣旨にかなうものというべきである。

2  次に、成立に争いのない甲第一号証、乙第二、三号証、第六号証の各一・二及び証人沓掛巽の証言によれば、被告は、本件(一)及び(二)の土地の基準地積をそれぞれ一〇・一一平方メートル及び一〇・一八平方メートルと決定し、さらに右各土地を含む街路の路線価を一二〇(個)、本件(一)及び(二)の土地を評価するため、平方メートル当たりの指数の算出に当たり、道路であることによる修正割合を〇・三とそれぞれ定めたこと、また被告は、本件区画整理事業における宅地の指数単価を二二〇円と決定したことを認めることができ、この認定に反する証拠はない。

3  前掲乙第二、三号証の各一・二、成立に争いのない乙第八号証及び証人沓掛巽の証言によれば、被告は本件区画整理事業の施行地区内の宅地の評価をいわゆる路線価式評価法によつて行なうに当たり、右地区内の新宿駅西口前の街路に最も高い路線価一〇〇〇個を付し、本件(一)及び(二)の土地を含む道路については、右新宿駅その他公共施設等との接近度、街路の系統、道路の幅員のほか、住宅地域であることなどの諸要素を地区内の他の道路との関連において勘案し、評価員の意見を聞いたうえ、本件道路の路線価を一二〇個と定めたことが認められ、右認定の事実によれば、路線価を一二〇個と決定したことは相当であるということができる。原告は、右路線価を一二〇個と定めたことは合理性を欠くと主張するが、具体的な主張を欠くのみならず、右主張を基礎づける事情を認めるに足りる証拠もない。

4  証人沓掛巽の証言によると、被告施行の土地区画整理事業において、私道を評価する場合は、当該私道の公共性の強弱の度合等を考慮し、前記被告の主張2の(二)(3)で述べた基準を定め、右基準による〇・一ないし〇・七の数値をその路線価指数に乗じて当該私道の平均平方メートル当たりの指数を算出していることが認められるところ、本件区画整理事業の開始時である昭和二一年一〇月一日当時、本件(一)及び(二)の土地が道路として使用されていたこと及びその使用状況は、前記二1及び2で認定したとおりであるから被告が本件(一)及び(二)の土地の平均平方メートル当たりの指数を算出するのに本来は認定道路としてその路線価に〇・一を乗ずることとなるところ、同一地区内の他の道路との権衡を図るため、路線価に〇・三を乗じたことは相当であるというべきである。したがつて、右土地の道路としての機能が明らかでないとし、平均平方メートル当たりの指数を宅地の〇・三と評価したことは根拠を欠くものであるとの原告の主張は当たらない。

5  証人沓掛巽の証言によると、被告は本件区画整理事業における宅地の指数単価を二二〇円と定めるについては、評価員の意見を聞いたうえ決定したこと及び被告の主張2の(二)(4)の事実を認めることができる。

原告は、右指数単価算出の基準となつた相続税路線価は、宅地の実際の取引価額の五〇パーセント程度に過ぎないものであるから、右指数単価二二〇円は不当に低額である旨主張する。

しかしながら、本件(一)、(二)の土地に関し、相続税路線価が実際の取引価額の五〇パーセント程度であることを認めるに足りる証拠は存しないだけでなく、仮りに相続税路線価が実際の取引価額より低額であつたとしても、前記認定のような本件(一)及び(二)の土地が道路敷として利用されて来た経緯及び状況に照らし、かつ、道路法による指定、認定を受けた道路の敷地については〇・一を乗じて路線価指数を算出していることをも考慮にいれると、被告が相続税路線価を資料にして、本件区画整理事業の指数単価の数値を求め、かつ、評価員の意見を聞いたうえ指数単価を二二〇円と定めることによつて算出した本件(一)、(二)の土地の評価額が不当に低額であり、被告のした宅地評価が不合理なものであるとすることはできない。

6  そうすると、本件(一)及び(二)の土地の平方メートル当たりの指数は、それぞれ「路線価指数×私道の評価割合」の算式に前記数値をあてはめて得られる三六(個)となる(一二〇×〇・三=三六)。

(一)  そうして、本件(一)の土地の評定指数は、「平方メートル当たりの指数×基準地積」の算式に前記数値をあてはめて得られる三六四(個)となる(三六×一〇・一一=三六四)(小数点以下四捨五入、以下同じ)。また評定価額は、「評定指数×指数単価」の算式に前記数値をあてはめて得られる八万〇〇八〇円となる(三六四×二二〇=八万〇〇八〇)。

(二)  次に、本件(二)の土地の評定指数は、右と同様の方法により三六六個(三六×一〇・一八=三六六)となり、評定価額は同じく八万〇五二〇円となる(三六六×二二〇=八万〇五二〇)。

7  本件土地区画整理事業における比例係数が一・一三六〇〇八六九八であることは、原告において明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。したがつて、

(一)  本件(一)の土地の比例権利価額は、「評定価額×比例係数」により求められるから、これに前記数値をあてはめると九万〇九七二円となる(八〇、〇八〇×一・一三六〇〇八六九八=九〇九七二)(小数点以下四捨五入、以下同じ)。

(二)  本件(二)の土地の比例権利価額は、同様にして九万一四七一円となる(八〇、五二〇×一・一三六〇〇八六九八=九一、四七一)。

8  しかして、清算金は、「従前地の比例権利価額―換地の評定価額」の算式により算出されるところ、前記のとおり本件(一)及び(二)の土地については、いずれも換地を定めない処分がされたのであるから、したがつて換地の評定価額は零円であるゆえ、従前地の比例権利価額がそのまま交付されるべき清算金額となることが明らかである。

9  してみると、右金額は、被告がした本件清算金と同額であるから、清算金額の算定を誤つた違法はないというべきである。

四  よつて、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 藤田耕三 菅原晴郎 北澤晶)

目録<省略>

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