東京地方裁判所 昭和51年(モ)1734号 決定 1976年5月24日
申立人 武田孝
<ほか三二名>
申立人代理人弁護士 竹沢哲夫
豊田誠
山崎博行
<ほか三八名>
主文
別紙申立人目録記載の申立人らに対しいずれも訴訟上の救助を付与する。
理由
一 申立人らの主張
申立人らの本件訴訟救助申立の趣旨ならびに理由は、本件記録に編綴されている昭和五一年二月一一日付「訴訟救助付与の申立」・同年五月四日付「訴訟救助付与の申立補充書」と題する書面に記載されているとおりであるから、ここにこれらを引用する。
二 当裁判所の判断
1 本件疎明資料によれば、申立人らは本件訴訟救助申立の対象となる本案訴訟(申立人らを原告とし国を被告とする当庁昭和五一年(ワ)第九八七号損害賠償請求事件)について勝訴する見込みがないとはいえないものであることが疎明される。
2 そこで、申立人らが訴訟費用を支払う資力を有しないか否かについて検討する。
ところで、民事訴訟法第一一八条に云う「訴訟費用ヲ支払フ資力ナキ者」とは、訴訟費用の出捐をなせば、家庭経済(家計)が計数的に減少するに止まらず、生活内容・程度が水準的にも下廻る状態に至る者を云うと解するのが相当であるから、訴訟救助を申し立てた者が訴訟費用を支払う資力に欠けているか否かを判断するうえにおいては、同人の提起した訴訟においてこれを維持・追行するために支出を免れないと予測される費用と同人および家族の資力とを比較考量して、同人の家庭生活が逼迫する結果を招来するか否かという見地から考察されねばならない。
しかして、本件記録から推察される本案訴訟(いわゆる「多摩川水害訴訟」である)の性質・内容に加えて本件疎明資料から窺知される①申立人らの収入の有無・多寡、②世帯の規模、③同居家族らの収入の有無・多寡、④居住家屋の流失等の被災程度、⑤居住家屋の再築の為の借入金の有無・多寡、⑥借入金の年収に占める割合の強弱その他の事情を総合して勘案すれば、申立人らはいずれも訴訟費用を支払う資力がない者であると疎明される。
3 以上の次第であれば、申立人らの本件訴訟救助の申立はいずれも理由があるのでこれを相当と認め、よって、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤原康志 裁判官 山崎末記 滝澤孝臣)
<以下省略>