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東京地方裁判所 昭和51年(ワ)10515号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

1 被告納賀は、昭和四三年九月、被告会社の代表取締役副社長に就任し、主として、同社の営む横浜ドリームランドの経営等同社東京支店の業務全般を統轄掌理していたが、自己資金を得るため、被告会社とは全く関係のない不動産取引等を目的とする訴外日本国土企業に資金援助をし、同社の会長的存在であつた。さらに、同人は、昭和四五年ころから商品取引にも手を出すようになつた。そして、これらの資金調達のため、当初自己名義振出の手形、小切手を利用していたが、右不動産および商品取引はいずれも所期の利益をあげることができず、昭和四六年五月ころには、自己名義で振出した手形、小切手金の総額は二億円近くにも及ぶようになり、この決済に追われるようになつた。そこで、同人は、同年七月ころから、これらの手形、小切手の決済または訴外日本国土企業に対する資金援助のため、被告会社の代表者である地位を利用して被告会社振出名義の手形、小切手を発行するようになり、訴外日本国土企業代表取締役の前記訴外石津、同社従業員訴外沖崎らも被告納賀への融資先の開拓に努めていた。そして、同人らは、昭和四九年ころ、従前、融資を受けていた栃木県在住の前記訴外市村に対し、さらに融資依頼をした。

2 右融資依頼を受けた訴外市村は、貸付資金がなかつたので、栃木県矢板市で朝日生命保険相互会社矢板出張所に勤務するかたわら、時おり、不動産取引、金融等も手がけていた原告に、訴外沖崎を紹介した。訴外沖崎は、原告に対し、被告会社は、青森県むつ市所在の土地を購入することになつたが、資金が不足している、原告が融資をしてくれれば、被告会社が原告所有の栃木県馬頭町所在の山林約三町五反を代金一、五〇〇万円で買い受けるから融資してもらいたいと持ちかけた。原告は、そのころ、被告会社を全く知らなかつたが、被告会社は大阪に本社があつて、国内のみならず国外にもレジャーランドを作つている一部上場の大会社である旨の訴外沖崎の説明があつたことおよび原告が半年前に代金八〇〇万円で購入した右山林を代金一、五〇〇万円で被告会社が購入するのであれば、被告会社の融資の申し込みに応じてもよい旨の意向を固めた。

3 昭和四六年九月一〇日、原告、訴外市村、同沖崎は、かねて被告納賀と打ち合わせのとおり、被告会社の経営する横浜ドリームランド内にある社長室に被告納賀をたずねた。同所で、原告は、被告納賀から訴外沖崎より前記融資を持ちかけられたときと同趣旨のことを告げられたうえ、被告会社への金三、〇〇〇万円の融資方を懇請された。これに対し、原告が担保を要求したところ、被告納賀は、被告会社は超一流の会社だから同社振出の手形を割引くよう要請したので、原告は、手形についての知識、経験は皆無に等しかつたが、結局、被告納賀の申し出どおり、被告両名振出人名義の手形に保証の趣旨で訴外日本国土企業が裏書した約束手形を原告が月四分で割引く旨の合意が成立し、その際被告納賀は、原告に対し、金員の受領等事後の措置は訴外沖崎にまかせる旨告げた。

4 昭和四六年九月一七日、原告は、訴外沖崎が被告納賀から受領して栃木県黒磯市の訴外市村宅に持参した本件各約束手形を受領したうえ、前記約旨に基づき、被告らに貸与するため、かねて訴外福田から借り受けた金一、〇〇〇万円を訴外沖崎に交付し、さらに、残金二、〇〇〇万円を訴外丹野から金一、〇〇〇万円、訴外坂本、同三川から各金五〇〇万円を借り受けて調達した原告は、同月二〇日東京都新宿区所在の訴外日本国土企業において、右金二、〇〇〇万円から、貸付金合計金三、〇〇〇万円に対する各貸し渡した日から弁済期日(本件各約束手形記載の満期)までの月四分の割合による利息金四六〇万円を差し引いた金一、五四〇万円を被告納賀の了解を得たうえ、訴外石津に交付した。

<証拠判断略>

三被告会社は、右金銭の授受は、消費貸借に基づくものではなく、本件各約束手形の割引を受けたものだと主張する。ところで、所謂手形割引は、手形の売買と解すべきであるからこれと消費貸借である所謂手形貸付とは厳に区別しなければならないところ、この区別の基準は、当事者の意思が授受される金員を手形の代価にありとするのか、それとも手形を担保としての金融にありとするのかによつて決すべきである。これを本件についてみると、右認定のとおり、一方において本件取引では手形割引という言葉が使われているが、他方、本件各手形は所謂商業手形ではなく、原告から資金の融通を受けるについて、被告納賀が振出し、被告会社が手形保証し(本件各手形の記載の形式からは、被告両名が共同振出するという前記認定の約束とは相違し、右のように解される。)、訴外日本国土企業が保証の趣旨で裏書したものであること、原告は、副業として、時おり金融をする程度でかつ手形割引の法的性質についての知識も皆無に等しかつたから、右手形割引という言葉が、法律上の正確な意味において使用されたとは到底認められないこと、その他、本件各手形を振出すに至つた前記認定の事実経過を総合すると、右手形の取引は、手形自体の価値に基づき、これを有償的に取得する所謂手形割引ではなく、原告が融資した金銭について消費貸借上の債権を取得し、右債権を確保するため本件各手形を差し入れさせたものであつて、所謂手形貸付として受領したものであると認定するのが相当である。

(永吉盛雄)

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