東京地方裁判所 昭和51年(ワ)10728号 判決
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【判旨】
二1 東那須郵便局主事の増渕が、原告主張のとおり、松原からの要求を受けて、黒磯郵便局郵政事務官の斉藤に対し、その名あて人である八木沢に配達されるべき本件郵便物を松原に窓口交付することを連絡、依頼し、斉藤は、これに基づき、本件郵便物を昭和四六年一月二一日、松原に窓口交付したことは当事者間に争いがない。
2 <証拠>によると、次の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
(一) 増渕と面識のあつた松原は、昭和四六年一月一九日、東那須野郵便局において、増渕に対し宇都宮地方法務局黒磯出張所差出の、自分の親戚である黒磯市渡辺の八木沢あてのはがき(本件郵便物)を、自分の妻の親の交通事故の示談のため必要であるから至急受取りたい旨告げ八木沢の郵便物受領委任状、実印及び示談関係の書類を示した。そのため、増渕は、本件郵便物が急ぎの用件のもので、松原は正当な受取人であると認めて、前示のとおりの依頼をなした。
(二) 松原は、同月二一日午前九時過ぎに黒磯郵便局へ行き、斉藤に対し、増渕に述べたと同様の用件である旨を告げ、同様の書類を示したので、斉藤は、増渕と同様に考えて前判示のとおり本件郵便物を交付した。
3 そして、<証拠>によれば、郵便物の配達取扱いにつき、受取人からの申出があり、緊急処理を要すると認める場合には、状況に応じた合理的方法によつて正当な受取人であることを確認したうえで、当該郵便物を窓口交付する慣行が一般に行なわれていると認めることができ、<証拠判断略>他に右認定に反する証拠はない。
ところで、郵便法第四六条は、「この法律又はこの法律に基づく省令に規定する必続を経て郵便物を交付したときは、正当の交付をしたものとみなす。」旨、郵便規則第七三条は、郵便物は法令に別段の定ある場合を除きそのあて所に配達する旨を定めている。しかしながら、郵便法第四六条の規定は、明文に定める手続によらない郵便物の交付をすべて正当でないものと排除すると明定しておらず、交付の手続が、大量の郵便物を迅速かつ正確に配達するという郵便物の配達取扱いの目的からみて合理性及び必要性のある限り、これを妨げない趣旨であると解するを相当とする。そして、本来郵便物は名あて人が入手することを要するところ、あて所に配達すること自体名あて人に交付することを意味していないことにかんがみると、前記の条件の下に行われる窓口交付の慣行は、名あて人への個別的サービスとして合理性及び必要性があるというべきである。
これを本件についてみると、本件郵便物交付の端緒、受取人資格の確認方法、本件郵便物の種類にてらすと、右窓口交付の慣行にあたるものであり、斉藤に過失がなかつたものということができる。
(丹野達 榎本克巳 増田芳子)