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東京地方裁判所 昭和51年(ワ)4978号 判決 1979年9月25日

原告

テイエヌネツト株式会社

右代表者

行木清治

右訴訟代理人

下井善廣

被告

堺商事株式会社

右代表者

畑中実三

右訴訟代理人

松原厚

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一<省略>

二<前略>

そこで、被告の抗弁1(売買目的物の検査、通知義務の懈怠)について検討する。

1  <省略>

2  そこで、右認定の事実中、昭和四八年五、六月ころから数回に亘つて、原告が当時被告の東京支店次長であつた訴外大村に対して、本件ゴルフネツトに関して、その強度、より、着色に多少問題があるようである旨の話をしていることが商法第五二六条第一項にいう「瑕疵あることの通知」にあたるか否かについて判断する。

ところで、瑕疵あることの通知についての右条項の立法趣旨は、売主をして瑕疵のないものと引換えるかあるいは買主側の契約解除権、損害賠償請求権等の行使に対応して臨機の処分をなすべきか等を決意させ、売買の効力を速かに確定させるというところにあるのであり、右立法趣旨に鑑みれば、瑕疵あることの通知は、売買の目的物の瑕疵の種類及びその大体の範囲を明らかにしてこれを行うべきものであつて、単に売買の目的物に瑕疵がある旨の通知をなすだけでは不十分であると解すべきところ、<証拠>を総合すると、原告は訴外大村に対して前記のとおり苦情を述べた後も、本件ゴルフネツトの受領を拒絶することもなく、当初の約定通りその受領を継続しているばかりでなく、本件ゴルフネツトの受渡しがすべて終了した昭和四九年三月までの間も原、被告間において本件ゴルフネツトの瑕疵に基づく売買代金の値引きの話はまつたく出ずに、むしろ昭和四九年一月ころには、原告は、被告からの本件ゴルフネツトの値上げ要求に応じて、本件ゴルフネツトの売買代金の単価を従来の一反当り金五万七五〇〇円から金六万九〇〇〇円に増額することに合意したこと、原告は、その販売先から本件ゴルフネツトに関する苦情が出始めた昭和四八年六月から八月ころ以降も、本件ゴルフネツトの販売を控える等の措置はとらず、また販売先からの苦情によつて補修工事や商品の交換が必要となつた場合には、他から仕入れたゴルフネツトではなく本件ゴルフネツトを使用してこれを行つていたことが認められるのであり、以上の諸事実を基礎として前記認定の原告が訴外大村に対して数回に亘つて述べた苦情について考えると、右苦情は原告における契約解除権、損害賠償請求権等の行使に対応して被告における権利の行使を保全させるという意味を持つ商法第五二六条第一項にいう瑕疵あることの通知として認めるには、不十分なものであると言わざるを得ない。

そして、他に、原告において、本件ゴルフネツトの最終受領日である昭和四九年三月一五日から六か月を経過する同年九月一五日までの間に、被告に対して本件ゴルフネツトの瑕疵についての通知をしたことを認めるに足る証拠はない。<以下、省略>

(山口繁 片桐春一 角田正紀)

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