大判例

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東京地方裁判所 昭和51年(ワ)5507号 判決

一 原告が本件実用新案権の実用新案権者であつたところ、昭和三七年六月二一日本件実用新案の登録を無効とする旨の審決がなされたこと、そこで原告は東京高等裁判所へ右審決の取消訴訟を提起したが、同裁判所第六民事部は、昭和四〇年九月二八日原告の請求を棄却する旨の判決をしたので、原告は最高裁判所へ上告し、同裁判所第二小法廷は、昭和四一年七月一日上告を棄却する旨の判決をしたこと、最高裁判決の確定により高裁判決、本件審決も確定し、その結果本件実用新案登録の無効が確定するに至つたことは当事者間に争いがない。

二 ところで、原告の本訴請求は、高裁判決及び最高裁判決に法律の解釈あるいは適用を誤つた違法や事実誤認の違法があり、そのために原告は本件実用新案権を喪失せしめられ、財産的、精神的損害を被つたから、被告に対し国家賠償法第一条第一項に基づいてその賠償を請求するというものである。

そこでまず、裁判官が行つた裁判の違法を理由として、常に、国家賠償法第一条第一項に基づく損害賠償請求をすることができるかどうかについて検討するに、同項は「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員がその職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と包括的に規定し、裁判官の行う裁判を特に同項から除外する旨の規定は設けられていない。

しかしながら、裁判官が行つた裁判の違法を主張して国家賠償を請求する場合には、裁判制度の設けられている趣旨に鑑み一定の制約があるものと解するのが相当である。なぜなら、国家は当該裁判が違法であると主張する者に対し、当該訴訟手続内において控訴、上告等の不服申立を認め、また右裁判が確定した場合においても一定の事由を設けて再審等の手続を認めているのであつて、このことは、当該裁判の適否を専らこれらの不服申立の手続によつてのみ最終的に確定し、他の手続においてこれを審判することを許さないとする趣旨にほかならないからである。したがつて、これらの不服申立の手続によつて当該裁判が取消されるなどその違法であることが確定した場合でない限り、当該裁判が違法である旨主張してこれを理由に国家賠償法第一条第一項に基づく損害賠償請求をすることはできないものと解すべきである。

これを本件についてみると、高裁判決及び最高裁判決が前記のような不服申立の手続において取消されるなどその違法であることが確定したことの主張・立証がないから、本訴請求はすでにこの点において理由がないものといわざるをえない。

三 よつて、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく失当であるから、これを棄却する。

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