東京地方裁判所 昭和51年(ワ)7549号 判決 1980年6月03日
原告
マルグレットキャスリンロース
右訴訟代理人
細田貞夫
被告
宗教法人世界信仰復興祈祷連盟
右代表者
ケニージョセフロバート
右訴訟代理人
吉田昭夫
主文
昭和五一年四月二日被告の臨時責任役員会においてなされた
(1) 代表役員原告を解任する。
(2) ケニー ジョセフ ロバートを被告の代表役員に選任する。
との決議が無効であることを確認する。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実《省略》
理由
一請求原因1、2項の各事実<編注・原告が被告の代表役員とされていたところ、被告の責任役員会で主文掲記の決議がなされたこと>、被告法人規則によれば、被告には四人の責任役員を置き、そのうちの一人を代表役員とするが、代表役員は、被告に所属する宣教師の互選により選任された者を前任の代表役員が任命し、代表役員以外の責任役員は、被告に所属する宣教師のうちから代表役員が任命することになつていること、及び被告法人規則には代表役員解任の定めが存在しないこと、以上の事実は当事者間に争いがない。
二原告は、本件決議が無効である旨主張するので、この点につき判断する。
1 被告法人規則に、代表役員の選任及び解任の権限が責任役員会にある旨の定めが存しないことは、前示のとおりである。
2 被告は、被告法人規則によれば、被告の代表役員は、被告に所属する宣教師の互選により選定され、被告に所属する宣教師は、アメリカ合衆国ヴアジニア州ポピユラリーバ街一六三一番地世界信仰復興連盟本部が任命する旨定めているが、世界信仰復興祈祷連盟本部は現実には存在しないので、被告に所属する宣教師の互選による代表役員の選定はあり得ず、責任役員会に代表役員を選任する権限がある旨主張する。
しかし、<証拠>によれば、世界信仰復興祈祷連盟本部は、一九五二年五月六日アメリカ合衆国バージニア州ポピユラリーバ街一六三一に設立され、一九五五年同国カリフォルニア州コロナ西オリーブ街一〇二四に移転し、現に宗教活動をしていることが認められる。
<証拠判断略>
3 また、被告は、法人規則に代表役員解任の定めがない場合においても正当な理由があれば代表役員を解任することができ、その場合、慣習ないし条理に基づき責任役員会にその権限がある旨主張する。
しかし、仮に被告主張の如く、法人規則に代表役員解任の定めがないときに代表役員を解任し得る場合があるとしても、その権限が当然に責任役員会にあることの慣習ないし条理が存することの証拠はなく、むしろ、かかる場合、代表役員を解任する権限は、代表役員を選任する権限を有する機関にあるものと解すべきところ、被告にあつては、前示のとおり、被告の代表役員は、被告に所属する宣教師の互選により選定されるのであるから、代表役員を解任する権限も前記宣教師にあるものと解される。
4 以上によれば、被告の責任役員会には代表役員を解任し、且つ新代表役員を選任する権限はないから、被告の責任役員会がした本件決議は無効であるといわねばならない。
三被告は、原告が昭和四九年頃内部的実質的に代表役員を辞任し、メルビンPロビンソンが代表役員に就任したこと、原告が、老令でアメリカ合衆国に帰国し、再び来日して宗教活動をすることは困難であることから、原告には本件決議の無効確認を求める利益がない旨主張するので判断する。
<証拠>によれば、原告が昭和四九年一二月訴外メルビンPロビンソンに対し原告の後任として来日することを求め、同人が昭和五〇年一月来日したこと、原告が老令でアメリカ合衆国に帰国し再び来日して宗教活動をすることが困難なことが認められないではない。
しかし、原告が訴外メルビンPロビンソンが来日した頃代表役員を辞任し、同人が代表役員に選任された事実を認めるに足る証拠はなく、また、原告が老令でアメリカ合衆国に帰国し、再び来日して宗教活動をすることが困難であつたとしても、原告に本件決議の無効を求めるにつき利害関係がないとは直ちにいえないから、被告の主張はいずれも認められない。
四よつて、原告の本訴請求を認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(木下重康)