東京地方裁判所 昭和51年(特わ)3191号 判決 1977年6月20日
(一)本籍
東京都葛飾区金町五丁目一、九五三番地
住居
同都足立区東和三丁目三番一二号
会社役員
石井徳行
昭和一七年二月二日生
(二)本店所在地
東京都葛飾区亀有二丁目三四番四号
東和産業株式会社
(右代表者代表取締役石井徳行)
右の被告人石井徳行に対する所得税法違反、法人税法違反、被告会社東和産業株式会社に対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は検察官河内悠紀出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人石井徳行を懲役一年及び罰金一二〇〇万円に、被告会社東和産業株式会社を罰金一、〇〇〇万円に、それぞれ処する。
被告人石井徳行においてその罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
被告人石井徳行に対し、この裁判確定の日から三年間、右懲役刑を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
第一 被告人石井徳行は、東京都葛飾区亀有二丁目三四番四号において、貸金業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、受取利息収入を除外し、あるいは譲渡原価を水増する等の方法により所得を秘匿したうえ、
一 昭和四八年分の実際総所得金額が二六、八四八、七〇六円、分離課税の短期譲渡所得金額が一、一八六、〇〇〇円あつた(別紙(一)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和四九年三月一二日、東京都葛飾区立石六丁目一番三号所在の所轄葛飾税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が五、〇一一、六五七円、分離課税の短期譲渡所得金額が一五〇、〇〇〇円で、所得税額が五一六、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出したまま同年三月一五日の法定申告期限を徒過させ、もつて不正の行為により昭和四八年分の正規の所得税額一二、三一二、〇〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)と右申告税額との差額一一、七九五、一〇〇円を免れ
二 昭和四九年分の実際総所得金額が四二、七九八、六一九円、分離課税の短期譲渡所得金額が二八、四七四、二八二円あつた(別紙(二)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和五〇年三月三日、前記葛飾税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が五、五四八、五二三円、分離課税の短期譲渡所得金額が四九、四〇〇円の欠損、所得税額が四〇六、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出したまま同年三月一五日の法定申告期限を徒過させ、もつて不正の行為により昭和四九年分の正規の所得税額四〇、二四一、一〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)と右申告税額との差額三九、八三四、八〇〇円を免れ
第二 被告会社は、東京都葛飾区亀有二丁目三四番四号に本店を置き不動産の売買・仲介等を営業目的とする資本金四、五〇〇、〇〇〇円の株式会社であり、被告人石井徳行は被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄していたものであるが、被告人石井徳行は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、あるいは広告宣伝費、支払手数料等の架空経費を計上する方法により所得を秘匿したうえ、
一 昭和四七年一〇月一日から同四八年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四三、五九四、八九八円(別紙(四)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず昭和四八年一一月三〇日前記葛飾税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四、五九七、三五五円で、法人税額が一、四二六、八〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額一六、七一二、四〇〇円(別紙(六)税額計算書参照)との差額一六、二八五、六〇〇円を免れ
二 昭和四八年一〇月一日から同四九年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三八、三八七、六九九円(別紙(五)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず昭和四九年一一月三〇日、前記葛飾税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三、八八八、二二七円で法人税額が二、九六一、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額二二、九五八、〇〇〇(別紙(六)税額計算書参照)と右申告税額との差額一九、九九六、九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示第一の各事実全般にわたり
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する昭和五一年一一月一三日付及び同月一七日付(乙の6)の各供述調書
一、被告人に対する収税官吏の昭和五〇年七月二四日付及び同月三一日付各質問てん末書
一、昭和四八年分所得税確定申告書一綴(昭和五二年押第九四二号の符二)
一、昭和四九年分所得税確定申告書一綴(右同符二)
一、元帳一冊(右同符五)
判示第一の各事実のうち各期の勘定科目の当期増減金額のうち
<事業所得>につき
一、検事石川達紘作成の昭和五一年一一月一九日付「所得税法違反事件被疑者石井徳行の事業所得について(報告)」と題する書面
一、検察事務官一色潔作成の昭和五二年五月一六日付「所得税法違反事件被告人石川徳行の事業所得について(報告)」と題する書面
<不動産所得>につき
一、収税官吏臼田信夫作成の昭和五一年一一月一八日付不動産所得調査書
<給与所得(昭和四九年分)>につき
一、元帳(個人分)一冊(符五)
<雑所得>につき
一、収税管吏谷戸茂作成の昭和五一年六月二八日付預金残高および預金利息調査書
一、元帳(個人分)一冊(符五)
<短期譲渡所得)につき
一、収税官吏谷戸茂作成の昭和五一年六月三日付48年分短期譲渡所得調査書
一、右同人作成の昭和五一年一一月一八日付49年分短期譲渡所得調査書
一、右同人作成の昭和五一年六月七日付49年分短期譲渡所得調査書(有価証券)
判示第二の各事実全般にわたり
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する昭和五一年一一月一一日付及び同月一七日付(乙の7)の各供述調書
一、被告人に対する収税官吏の昭和五一年六月一八日付質問てん末書
一、昭和四八年九月期法人税確定申告書(前同押号の符三)
一、昭和四九年九月期法人税確定申告書(右同符四)
一、総勘定元帳二冊(右同符六、符七)
判示第二の各事実のうち各期の勘定科目の当期増減金額のうち
<売上高>につき
一、石田幸男の検察官に対する昭和五一年一〇月二三日付供述調書
一、大川正道の検察官に対する供述調書(49/9期分)
一、菊地行雄の検察官に対する供述書(〃)
<受取手数料49/9期>につき
一、総勘定元帳(符七)の受取手数料勘定の記載
<商品棚卸高>につき
一、収税官吏早川博治作成の昭和五一年六月一日付商品棚卸調査書
<総仕入高48/9期>につき
一、石田幸男の検察官に対する昭和五一年一〇月二三日付供述調書
<給料手当>につき
一、石田幸男に対する収税官吏の質問てん末書中問八問二〇部分
一、収税官吏谷戸茂作成の昭和五二年四月二〇日付回答書(49/9期分)
一、菊地行雄の検察官に対する供述調書(〃)
一、加藤トエ子の検察官に対する供述調書(〃)
一、元帳一冊(符五)
<支払手数料>につき
一、石田幸男の検察官に対する昭和五一年一〇月二三日付及び同月二六日付の各供述調書
一、溜井正広の検察官に対する昭和五一年一〇月二〇日付供述調書
一、翠川護の検察官に対する昭和五一年一〇月二七日付供述調書
一、中沢欽次の検察官に対する昭和五一年一〇月二二日付供述調書
一、金本行光に対する収税官吏の昭和五一年四月二六日付質問てん末書
一、橋本忠の検察官に対する昭和五一年一〇月二七日付供述調書
一、中沢欽次に対する収税官吏の昭和五一年三月二三日付質問てん末書
一、総勘定帳(符七)のうち支払手数料の勘定
<広告宣告費>につき
一、橋本忠の検察官に対する昭和五一年一〇月二七日付供述調書
<公租公課49/9期>につき
一、千葉県東葛飾支庁山本良一作成の昭和五一年六月三日付税の納付状況照会に対する回答書
<受取利息支払利息、48/9期>につき
一、収税官吏谷戸茂作成の昭和五一年六月三日付受取利息、支払利息計算書(48年9月期)
<支払利息、割引料、49/9期>につき
一、収税官吏谷戸茂作成の昭和五一年六月三日付支払利息計算書(49年9月期)
<未納事業税49/9期>につき
一、49/9月期法人税確定申告書一綴(符四)
(法令の適用)
被告人石井につき
判示第一の各所為はいずれも所得税法二三八条に、判示第二の各所為はいずれも法人税法一五九条に該当するが、判示第一の各所為については所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、判示第二の各所為については所定刑中いずれも懲役刑を選択することとし、これらは刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項二項により判示第一の各所為の罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内において被告人を懲役一年及び罰金一二〇〇万円に処し、罰金刑の換刑処分につき同法一八条を、懲役刑の執行猶予につき同法二五条一項を適用する。
被告会社東和産業株式会社につき
判示第二の各所為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するが、これらは刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内で被告会社を罰金一、〇〇〇万円に処する。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 中村勲)
別紙(一) 修正損益計算書
石井徳行
自 昭和48年1月1日
至 昭和48年12月31日
別紙(二) 修正損益計算書
石井徳行
自 昭和49年1月1日
至 昭和49年12月31日
別紙(三) 税額計算書
石井徳行
分離課税短期譲渡所関係税額計算(措置法32条)
別紙(四) 修正損益計算書
東和産業KK
自 昭和47年10月1日
至 昭和48年9月30日
別紙(五) 修正損益計算書
東和産業KK
自 昭和48年10月1日
至 昭和49年9月30日
別紙(六) 税額計算書
東和産業株式会社
法人税率の変還状況
関係条文 ・法人税法66条
・租税特別措置法67条の2
・昭和49年租税特別措置法附則12条