東京地方裁判所 昭和51年(特わ)3235号 判決 1981年12月25日
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本店所在地
東京都墨田区本所四丁目一二番三号
福島鋼業株式会社
右代表者代表取締役
福島憲仁
本籍
横浜市保土ケ谷区宮田町一丁目八四番地
住居
東言都墨田区石原四丁目一九番八号
会社役員
福島憲仁
昭和七年七月五日生
主文
1 被告会社福島鋼業株式会社を罰金五〇〇万円に、被告人福島憲仁を罰金四〇〇万円にそれぞれ処する。
2 被告人福島憲仁においてその罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
3 訴訟費用は被告会社福島鋼業株式会社及び被告人福島憲仁の連帯負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社は、東京都墨田区本所四丁目一二番三号に本店を置き(昭和五〇年一二月以前の本店所在地は同区石原四丁目一九番八号)、一般鋼材の販売、不動産の売買仲介等を目的とする資本金二、〇〇〇万円の株式会社、被告人福島憲仁は、被告会社の代表取締役として同社の業務を統轄しているものであるが、被告人福島憲仁は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、鋼材の架空仕入を計上し、また、不動産の売上・仕入を除外する方法により所得を秘匿した上、同四七年一〇月一日から同四八年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億四、七一九万六、二三三円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一一月二七日、同区業平一丁目七番二号所在の所轄本所税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九、四五一万五、三一二円でこれに対する法人税額が三、三一一万七、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出してそのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額五、二四七万五、二〇〇円と右申告税額との差額一、九三五万八、一〇〇円(別紙(一)ほ脱税額計算書参照)を免れたものである。
(証拠の標目)
(「甲」、「乙」は検察官請求証拠目録の甲一、乙の番号を、「符」は当庁昭和五二年押第二五二〇号の符番号を、「回」は公判調書の回数を示す。)
判示事実全体につき
一 被告人福島憲仁の当公判廷における供述及び検察官に対する供述調書三通(乙二ないし四)
一 登記官作成の登記簿謄本(甲一)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(府一)
一 福島憲仁作成の被告会社昭和四八年九月期営業報告書(弁護人請求証拠目録の番号四)
別紙(一)修正損益計算書の勘定科目中<1>鋼板等売上高、<6>当期仕入高、<12>支払手数料、<14>不動産売上高、<15>同仕入高、<16>同支払手数料、<17>同受取手数料、<40>雑収入、<41>支払利息、<48>価格変動準備金繰入損につき
一 検察事務官作成の「ほ脱所得の内訳明細書作成について」と題する書面の抄本(甲六〇)
同<1>鋼板等売上高、<6>当期仕入高、<12>支払手数料、<13>受取手数料につき
一 公判調書(七回)中証人伊澤源太郎の供述部分
一 菅原進及び伊澤源太郎の検察官に対する各供述調書(甲一〇、一一)
一 若狭正弘作成の証明書(甲二)
一 池川明雄(二通)、高森薫及び清水真弩作成の「取引内容照会に対する回答」と題する書面四通(甲三ないし六)
一 山岸武作成の上申書二通及び申述書(甲七ないし九)
一 押収してある売上帳一綴(符四四)
同<6>当期仕入高、支払手数料、<13>受取手数料につき
一 公判調書(八回)中証人渡辺 二の供述部分
一 渡辺敞二及び三神弘之助の検察官に対する各供述調書(甲一五、一六)
一 青木久夫、南重義及び今井信夫作成の「取引内容照会に対する回答」と題する書面各一通(甲一二ないし一四)
一 小野里政雄及び成田喬作成の「捜査関係事項照会について(回答)」と題する書面各一通(甲四八、四九)
一 細田重雄作成の回答書(甲五〇)
一 押収してある次の証拠物
仕入帳二綴(符二、三)、直送品売買伝票綴三綴(符四ないし六)、買掛金支払整理票等三綴(符七ないし九)、支払済約束手形五枚(符一〇ないし一二)、仕入伝票綴三綴(符三八ないし四〇)、入庫伝票綴二綴(符四一、四二)、売買日計表一綴(符四七)
同<13>受取手数料につき
一 検察事務官作成の捜査報告書(甲六一)
同<14>不動産売上高、<15>同仕入高、<16>同支払手数料、<17>同受取手数料につき
一 公判調書中次の証人の各供述部分
萩原留治(一三回)、佐々木通寿(一四回)、豊泉政治(一八、一九回)、寺尾太一(二〇、二一回)
一 幸松一男、馬籠哲郎及び山形嘉一郎(二通)の検察官に対する供述調書(甲一九、三六、五七、五八)
一 高橋日出男の大蔵事務官に対する供述書(甲四一)
一 押収してある次の証拠物
不動産売買契約書一袋(符一三)、不動産売買契約書一通(符一六)、総勘定元帳二綴(符一七、一八)、領収証綴一綴(符二四)、契約書綴一綴(符三〇)、手付金領収証及び同意書面一袋(符三一)、中山公氏物件に対する横山松雄氏の抵当権設定の記録一枚(符三七)
同<14>不動産売上高、<15>同仕入高、<16>同支払手数料、<40>雑収入につき
一 西島和夫の検察官に対する供述調書(甲三一)
一 小林寛郎及び西島和夫作成の上申書各一通(甲二六、二七)
一 押収してある次の証拠物
不動産売買契約書写一通(符一四)、土地売買契約公正証書一通(符一五)、総勘定元帳一綴(符一七)、不動産売買契約証書一袋(符二九)
同<17>不動産受取手数料につき
一 守屋泉の検察官に対する供述書(甲四三)
一 押収してある次の証拠物
総勘定元帳内訳帳一綴(符二〇)、経費明細帳一冊(符二一)、柳町土地関係領収証綴(符二二)、土地売買契約書一通(符三二)、不動産売買契約書一通(符三三)、買付証明書一袋(符三六)
同<41>支払利息につき
一 小野里政雄作成の「捜査関係事項照会について(回答)」と題する書面(甲四八)
同<48>価格変動準備金繰入損につき
一 古谷栄吉作成の報告書(甲四七)
(収入利息八円について)
<39>収入利息について、検察官は、被告会社の普通預金利息八円の除外を主張する。しかし、右除外金額と同科目として被告会社が申告した金額(一、〇七七万三、七七五円)とを対比し、これに被告人福島憲仁の当公判廷における供述を併せて検討すると、右除外金額は、何らかの過誤による所得の計上洩れと窺われるのであって、これが「偽りその他不正の行為」により申告除外されたものであることを肯認するに足りる的確な存しないから、右部分については犯罪の証明がないといわざるを得ない。したがって、右除外金額はほ脱所得の一部を構成しないものと認め、これを控除した。
(法令の適用)
1 罰条
(一) 被告会社につき、昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項、一五九条一項
(二) 被告人福島憲仁につき、行為時において右改正前の法人税法一五九条一項、裁判時において改正後の法人税法一五九条一項(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。)
2 刑種の選択
被告人福島憲仁につき、罰金刑選択
3 労役場留置
被告人福島憲仁につき刑法一八条
4 訴訟費用の負担
被告人らにつき、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条
よって、主文のとおり判決する。
出席検察官 久保裕
弁護人 仁科哲(主任)・間辺大午
(裁判長裁判官 小泉祐康 裁判官 松澤智 裁判官 園部秀穂)
別紙(一)
修正損益計算書
福島鋼業株式会社 No.1
自 昭和47年10月1日
至 昭和48年9月30日
<省略>
修正損益計算書
福島鋼業株式会社 No.2
自 昭和47年10月1日
至 昭和48年9月30日
<省略>
別紙(二)
ほ脱税額計算書 福島鋼業株式会社
<省略>