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東京地方裁判所 昭和51年(特わ)85号 判決 1976年5月28日

被告人

(一)本籍

京都府天田郡夜久野町字日置一〇九〇番地

住居

東京都目黒区五本木一丁目一六番一六号

職業

飲食業経営兼会社役員

植野美枝子

昭和五年一月一五日生

(二)本店所在地

東京都目黒区五本木一丁目一六番一六号

法人の名称

シヤイ商事有限会社

(右代表者代表取締役植野美枝子)

出席検察官検事

清水勇男

主文

被告人植野美枝子を懲役一年及び罰金一、二〇〇万円に、

被告会社シヤイ商事有限会社を罰金五〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人植野美枝子において、同人に科せられた罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

被告人植野美枝子に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一、被告人植野美枝子は、東京都中央区銀座八丁目三番七号伊勢半ビル地下一階において、バー「ランデル」を経営しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、バー「ランデル」の売上の一部を除外し仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

一、昭和四七年分の実際総所得金額が六七、四四九、八六二円(別紙(一)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、昭和四八年三月一三日東京都中央区新富二丁目六番一号所在の所轄京橋税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一八、四三二、九四九円でこれに対する所得税額が七、四一三、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額三八、四二四、四〇〇円(別紙(四)所得税額計算書参照)と右申告税額との差額三一、〇一一、二〇〇円を免れ、

二、昭和四八年分の実際総所得金額が三九、二三七、九一九円(別紙(二)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、昭和四九年三月一四日前記京橋税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一四、六九二、一九一円でこれに対する所得税額が五、二一九、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額一九、六七八、〇〇〇円(別紙(四)所得税額計算書参照)と右申告税額との差額一四、四五八、一〇〇円を免れ、

三、昭和四九年分の実際総所得金額が三八、一五四、二〇〇円(別紙(三)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、昭和五〇年三月一三日前記京橋税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が九、八四二、六九〇円でこれに対する所得税額が二、一四六、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額一七、四三二、四〇〇円(別紙(四)所得税額計算書参照)と右申告税額との差額一五、二八五、六〇〇円を免れ、

第二、被告会社は、東京都目黒区五本木一丁目一六番一六号に本店を置き飲食業を営業目的とする資本金一〇〇万円の有限会社であり、被告人植野美枝子は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人植野美枝子は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

一、昭和四七年五月二三日から同四八年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二四、五九〇、八二九円(別紙(五)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、同四八年六月三〇日、東京都目黒区中目黒五丁目二七番一六号所在の所轄目黒税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三、六一四、七七九円でこれに対する法人税額が一、〇六四、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右被告会社の正規の法人税額八、七七四、三〇〇円(別紙(七)法人税額計算書参照)と右申告税額との差額七、七〇九、七〇〇円を免れ、

二、昭和四八年五月一日から同四九年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三七、一七四、七八〇円(別紙(六)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、同四九年七月一日、前記目黒税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二、三六九、六九三円でこれに対する法人税額が六四五、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右被告会社の右事業年度の正規の法人税額一三、三八一、〇〇〇円(別紙(七)法人税額計算書参照)と右申告税額との差額一二、七三五、七〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

(なお以下の標目の中に甲○とあるは検察官請求証拠目録書記載の番号を示すものとする)

判示第一事実のうち

全般にわたり

一、被告人の当公判廷における供述及び検察官に対する供述調書

一、松元康子の収税官吏に対する各質問てん末書

一の事実(四七年分)につき

一、甲<1>収税官吏上妻力夫作成の売上調査書(売上)

一、甲<3>同じく雑収入調査書(雑収入)

一、甲<5>同じく仕入調査書(棚卸及び仕入)

一、甲<14>同じく給料賃金等調査書(給料賃金)

一、甲<20>同じく料理飲食等消費税調査書(料理飲食税)

一、甲<8>同じく昭和四七年分必要経費調査書(租税公課以下その他の経費)

一、甲<21>同じく雑所得調査書(雑所得関係)

一、押収にかかる昭和五一年押第六二四号の符四号所得税確定申告書一袋(公表額及び申告事実)

二の事実(四八年分)につき

一、甲<1>前掲の売上調査書(売上)

一、甲<3>同じく雑収入調査書(雑収入)

一、甲<5>同じく仕入調査書(仕入)

一、甲<25>同じく旅費交通費調査書(旅費交通費)

一、甲<26>同じく接待交際費調査書(接待交際費)

一、甲<9>収税官吏赤羽修作成の(株)ましやからの購入品調査書(修繕費消耗品費)

一、甲<6>税理士長田邦福作成の上申書(消耗品費、福利厚生費、スカウト費、退職手当)

一、甲<13>収税官吏赤羽修作成の減価償却資産調査書(減価償却費、消耗品費)

一、甲<14>前掲の給料賃金等調査書(給料賃金)

一、甲<15>収税官吏石崎忠昭作成の支払利息調査書(支払利息)

一、甲<27>収税官吏上妻力夫作成の家賃調査書(家賃)

一、甲<28>検察事務官松尾久作成の報告書(〃)

一、甲<20>前掲の料理飲食等消費調査書(料理飲食税)

一、甲<29>京橋税務署長作成の証明書(青申取消益)

一、収税官吏上妻力夫作成の昭和五一年五月七日付報告書(給与所得)

一、押収にかかる前同押号の符五号所得税確定申告書等一袋(雑費、公表額及び申告事実)

一、右同押号符一号の元帳一綴(〃)

三の事実(四九年分)につき

一、二の事実について掲げた甲<1><3><5><25><26><9><6><13><14><15><27><28><20><29>の証拠のほか

一、甲<17>収税官吏上妻力夫作成の貸倒金調査書(貸倒金)

一、甲<30>同じく支払手数料調査書(支払手数料)

一、甲<31>同じく配当所得調査書(配当所得)

一、押収にかかる前同押号の符六号所得税確定申告書一袋(公表額及び申告事実)

一、右同押号の符二号元帳一綴(〃)

判示第二事実のうち

全般にわたり

一、被告会社の会社登記簿謄本

一、被告人の当公判廷における供述及び検察官に対する供述調書

一、植野正の収税官吏に対する各質問てん末書

一の事実(四八年四月期)につき

一、甲<53>収税官吏石崎忠昭作成の売上調査書(開業準備中)(売上高)

一、甲<54>収税官吏上妻力夫作成の売上調査書(売上高)

一、甲<55>収税官吏石崎忠昭作成の仕入調査書(仕入高)

一、甲 柴田全作成名義の照会回答書(料理飲食税)

一、甲<57>収税官吏石崎忠昭作成の給料手当調査書(給料手当)

一、甲<58>同じく交際接待費調査書(48/4交際接待費)

一、甲<60>同じく旅費交通費調査書(旅費交通費)

一、甲<61>同じく通信費調査書(通信費)

一、甲<62>同じく水道光熱費調査書(水道光熱費)

一、甲<63>同じく消耗品費調査書(消耗品費)

一、甲<64>同じく修繕費調査書(修繕費)

一、甲<65>同じく衛生調査書(衛生費)

一、甲<66>同じく指名料払い戻し調査書(指名料戻し)

一、甲<67>同じく契約金調査書(契約金)

一、甲<68>同じく諸雑費調査書(諸雑費)

一、甲<112>植野正の検察官に対する供述調書四項(〃)

一、甲<71>収税官吏石崎忠昭作成の受取利息調査書(受取利息)

一、甲<72>同じく雑収入調査書(雑収入)

一、甲<73>同じく支払利息調査書(支払利息)

一、甲<74>同じく求人費調査書(求人費)

一、甲<75>同じく福利厚生費調査書(福利厚生費)

一、押収にかかる前同押号符三号総勘定元帳48/4期分(公表額)

一、同じく符八号法人税勘定申告書一袋(公表額及び申告事実)

二の事実(四九年四月期)につき

一、甲<54>収税官吏上妻力夫作成の売上調査書(売上高)

一、甲<76>収税官吏石崎忠昭作成の売上原価調査書(仕入高)

一、甲<56>柴田全作成名義の照会回答書(料理飲食税)

一、甲<77>収税官吏石崎忠昭作成の給料報酬調査書(給料手当)

一、甲<78>同じく交際接待費調査書(交際接待費)

一、甲<79>同じく旅費交通調査費(旅費交通費)

一、甲<80>同じく消耗品費調査費(消耗品費)

一、甲<81>同じく衛生費調査費(衛生費)

一、甲<82>同じく印刷費調査書(印刷費)

一、甲<84>同じく車輛経費調査書(車輛経費)

一、甲<85>同じく求人募集費調査書(求人募集費)

一、甲<86>同じく受取利息調査書(受取利息)

一、甲<87>同じく支払利息調査書(支払利息)

一、甲<88>税理士長田邦福作成の上申書(貸倒損失)

一、甲<89>収税官吏石崎忠昭作成の福利厚生費調査書(福利厚生費)

一、押収にかかる前同押号符一〇号銀行帳一綴(支払手数料)

一、同じく符一一号銀行帳一綴(〃)

一、同じく符一二号普通預金通帳(〃)

一、同じく符三号総勘定元帳49/4期分(雑収入及び公表額)

一、同じく符九号法人税確定申告書一袋(未納事業税、公表額及び申告事実)

(法令の適用)

被告人植野美枝子につき

判示第一の一乃至三の各所為は、いずれも所得税法二三八条に該当するところ所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科し、判示第二の一、二の各所為は、法人税法一五九条に該当するところ所定刑中いずれも懲役刑を選択する。以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条、一〇条により最も重い判示第一の一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項により右懲役刑と併科することとし、同条二項により判示第一の一乃至三の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を主文の刑に処する。

また、罰金刑の換刑処分については同法一八条を、懲役刑の執行の猶予については、被告人がその非を悔い、深く反省しているものと認められるので同法二五条一項をそれぞれ適用する。

被告会社シヤイ商事有限会社につき

判示第二の一、二の各所為は、いずれも法人税法一五九条、一六四条一項に該当するが、これらは刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した額の範囲内で、被告会社を主文の刑に処する。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村勲)

別紙(一) 修正損益計算書

植野美枝子

自 昭和47年1月1日

至 昭和47年12月31日

<省略>

別紙(二) 修正損益計算書

植野美枝子

自 昭和48年1月1日

至 昭和48年12月31日

<省略>

修正損益計算書

植野美枝子

自昭和49年1月1日

至昭和49年12月31日

<省略>

計算書

<省略>

別紙(四)

所得税額

植野美枝子

<省略>

別紙(五) 修正損益計算書

シヤイ商事(有)

自 昭和47年5月23日

至 昭和48年4月30日

<省略>

別紙(六) 修正損益計算書

シヤイ商事有限会社

自 昭和48年5月1日

至 昭和49年4月30日

<省略>

別紙(七)

法人税額計算書

シヤイ商事有限会社

<省略>

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