東京地方裁判所 昭和51年(行ウ)93号 判決
一 請求の原因1の事実は、いずれも当事者間に争いがない。
二 そこで、本件不受理処分に原告主張のような瑕疵があるか否かにつき判断する。
1 本件不受理処分の理由が、本件原出願は本件第一次変更出願と同時に取り下げたものとみなされるので、本件第二次変更出願は変更の客体を欠く無意味な出願であるというものであることは、当事者間に争いがない。
そこで先ず、本件において、出願の変更の効果、就中本件原出願の取下げの効果がいつ発生したかにつき検討する。
実用新案法第八条第一項の規定(昭和四五年法律第九一号による改正前のもの)による出願の変更をする権利がいわゆる形成権に属するか否かはしばらく措くとして、同条第四項は、出願の変更があつたときはもとの特許出願は取り下げたものとみなす旨規定しているところ、その趣旨は出願人が一個の技術的思想につき二重に出願人たる地位を有することにより重複して保護されることのないようにすること及びもとの特許出願をあきらめ出願の変更にかかる出願に換えたとみることが出願人の意思にも合致すると考慮したことなどにあると考えられるから、右の規定の趣旨及び手続一般を支配する確実性の原則を併わせ考慮すると、出願の変更の行為があれば、これによつて直ちにもとの特許出願につき取下げの効果が発生するものと解するのが相当である。そうすると実用新案法第八条第四項の規定に基づき、本件原出願は本件第一次変更出願がなされたと同時に取り下げられたものとみなされ、したがつて本件原出願による法律関係は右取下により消滅に帰したものである。
原告は、本件第二次変更出願の出願時に本件原出願の取下げの効果が発生したと主張し、その根拠を掲げているが、いずれも首肯するに足りない。かえつて、原告の主張は、本件第一次変更出願につき格別の理由を示すことなく本件原出願の取下げの効果が発生しないとしながら、一方本件第二次変更出願については出願と同時に右の効果が生じたとするものであつて、些か便宜的にすぎるうえ、右の主張においては、出願の変更の効果がいつ発生するかの規準が不明確であり、また本件第一次変更出願から本件第二次変更出願までの間については、本件原出願と本件第一次変更出願が併存することになるなど不合理である。他に前記判断を覆えすべき論拠はない。
それであるから、本件第二次変更出願が提出されたときには、すでに本件原出願は存在せず、本件第二次変更出願をもつて本件原出願を変更するものと解する余地はないから、変更の客体を欠く無意味な出願であることを理由とした本件不受理処分をもつて違法とするのは当らない。
2 そこで進んで、本件第二次変更出願が本件第一次変更出願の補正として受理されるべきものであるか否かにつき検討する。
思うに、実用新案法第八条第一項の規定(前記改正前のもの)による出願の変更にかかる出願は、もとの特許出願とは別個独立の新たな出願であつて、もとの特許出願がその同一性を保有しつつ出願形式のみを変更するものではなく、ただその出願の時期がもとの特許出願の時まで遡及するという効果を伴うものであるにすぎず、したがつて、もとの出願についてした手続の効力がそのまま変更後の出願に承継されるものではないと解するのが相当である。そして、実用新案法第九条第一項において準用する特許法第四三条第一項の規定によれば、優先権の主張は出願と同時にしなければならないものであり、出願の変更の場合にも同様に解すべきであるから、原告としては、本件原出願が優先権の主張を伴うものであつたにせよ、本件第一次変更出願の際に改めてその主張をしなかつたものである以上、後日に至つてこれを補充、追完することは許されない筋合であつて、本件第二次変更出願が本件第一次変更出願の補正として許容される余地はないものというべきである(なお付言するに、実用新案法第八条第三項の但し書は昭和四五年法律第九一号によつて新たに追加されたものであるが、出願変更の場合における優先権主張をなすべき時期を右法改正の前後で別異に解すべき理由はない。)。したがつて、本件第二次変更出願が本件第一次変更出願の補正として受理されるべきであつたとする原告の主張は、本件第一次変更出願の取下書が提出されたにかかわらず、本件においては、本件第一次変更出願がなお維持、継続されているものと解すべきかどうかの点を含め、原告主張のその余の点につき判断するまでもなく理由がない。
三 以上の次第であつて、本件不受理処分にはこれを取り消すべき瑕疵があることを原因とする原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却する。