東京地方裁判所 昭和52年(ワ)2215号 判決
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【判旨】
二そこで抗弁につき判断する。
<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。
原告俊幹は、原告秀夫から被告の紹介を受け、昭和五一年五月頃同人に対し、台湾から建築用材を輸入する等について資金の援助を依頼した。被告は、以前から本件土地・建物を処分して資金を得ようと計画し、原告秀夫に売却方を依頼していたこともあり、自分もこの機会に融資金の一部を利用できれば、右依頼に応じ原告俊幹側で金融機関から融資を受けるために、本件土地・建物を担保に提供してもよいと考えた。そこで、被告は、原告俊幹の経営している訴外会社が訴外組合から融資を受けるための担保として、右原告に本件土地・建物につき根抵当権設定登記手続に必要な書類を交付した。前記のように、被告は、訴外会社が訴外組合から融資を得たときには、被告自身も右融資額の一部を訴外組合から事実上直接交付を受け、利用するつもりでいたところ、原告俊幹は被告に、右融資がおりる具体的な日時を知らせることなく、本件土地・建物に極度額三〇〇〇万円の根抵当権を設定し、自己及び原告秀夫が連帯保証をした上で、昭和五一年五月二〇日頃、訴外組合から訴外会社名義で二五〇〇万円の融資を受け、同組合に被告名義で額面五〇〇万円の定期預金をした。同月二四日、原告俊幹が被告に対し、右融資金の中から五〇〇万円を交付したところ、被告は、右融資金の半分は被告が利用する約束であつたと主張し、原告俊幹、同秀夫に強く抗議をした。更に、被告は訴外会社及び原告両名の弁済能力に不安を持ち、物上保証人である被告が訴外会社に代わつて訴外組合に対する債務を弁済した場合に生ずる求償債権を回収するために、原告秀夫、同俊幹に対し、事前に求償債権二五〇〇万円を支払うよう強硬に要求した。そして、昭和五一年五月下旬頃から原告秀夫、同俊幹と被告との間で、更には、被告の依頼した弁護士堀合辰夫を交えて数回話し合いがなされた結果、原告両名も本件求償債務二五〇〇万円をあらかじめ被告に対し、支払うことも止むを得ぬと考え、昭和五一年六月七日頃、原告俊幹が訴外会社の被告に対する本件事前行使に係る求償債務を引受け、右債務を旧債務とし、準消費貸借契約を締結し、原告秀夫、同和雄(原告和雄は本件処理につき全面的に兄である原告俊幹にまかせていた)は右債務につき連帯保証及び物上保証をする。右債務の弁済方法は既に原告秀夫が被告に対し、本件融資金の中から昭和五一年五月二四日に支払つた五〇〇万円、同様に被告に交付してあつた訴外会社振出、昭和五一年六月二五日満期日の額面五〇〇万円の約束手形を右準消費貸借上の債務の弁済に充てるものとして、昭和五一年五月二四日五〇〇万円、同年六月二四日一〇〇万円、同月二五日五〇〇万円、同年七月三〇日一〇〇万円、昭和五二年四月三〇日一三〇〇万円を支払うとの合意が原告ら三名及び被告との間で成立した。また右の頃、前記のように被告は従前から本件土地・建物を処分する計画を有していたこともあり、本件紛争を抜本的に解決するために、被告が本件土地・建物を原告俊幹に売却し、原告秀夫、同和雄が右代金支払債務を連帯保証する旨の合意も、原告三名及び被告の間でなされた(右のような事情から、右準消費貸借上の債務を弁済すれば、それは同時に右売買契約上の代金の支払いの効果を持ち、右両契約が完全に履行された場合には、被告は物上保証人たる立場から脱却し、また従来からの希望通り本件土地・建物の売買代金を得ることができることになる。)。そして、堀合弁護士の助言もあり、右準消費貸借及び売買契約を公正証書に作成することにし、原告俊幹、同秀夫は、白紙委任状並びに印鑑証明書各三通宛及び原告和雄の署名、捺印した白紙委任状並びに同人の印鑑証明書各三通を堀合弁護士に交付した。堀合弁護士は、同事務所の事務員をして原告俊幹、同秀夫両名の面前で右白紙委任状に執行認諾を含む本件公正証書を作成する権限を委任する旨記載させたが、原告両名は右記載につき何等異議を述べなかつた。そして、右委任状、印鑑証明書を利用して、本件公正証書及び前記売買に関する公正証書が作成され、更に本件の債務の支払を担保するために原告秀夫所有の東京都世田谷区桜上水の土地・建物、原告和雄所有の東京都大田区北千束の建物につき停止条件付所有権移転請求権仮登記及び抵当権設定仮登記がなされた。
以上の事実によれば、本件公正証書は有効に作成されたものというべきである。<中略>
なお、本件公正証書は、昭和五一年五月二〇日被告が原告俊幹に二五〇〇万円を貸付けた旨記載されているのに反し、右証書の目的とされた実質上の契約は、前記のように物上保証人である被告において求償権をあらかじめ行使することを原告らが容認し、右事前の求償債務を目的として昭和五一年六月七日頃締結された準消費貸借契約であるが、弁論の全趣旨によれば、右日時頃原告俊幹、被告間には右以外には債権債務関係は存在せず、他と誤認混同するおそれがないこと、両契約は消費貸借と準消費貸借との違いはあるが、当事者、金額、弁済期等が同一であることを考えると、右両契約には同一性があるものと認められる。
(川上正俊 満田忠彦 石井忠雄)