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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)3703号・昭51年(ワ)5073号 判決

〔本案事件〕

原告(反訴被告)

正和溶工株式会社

右訴訟代理人弁護士

雨宮正彦

右輔佐人弁理士

瀧野秀雄

被告(反訴原告)

長尾哲也

右訴訟代理人

高橋力

右輔佐人弁理士

中村義一

〔主文〕

一  被告(反訴原告)は特許番号第七四〇二九〇号、同第八二一〇〇六号の各特許権に基づいて、原告(反訴被告)が別紙目録記載の「スポツト溶接機へのナツト供給装置」を製造販売することを差止める権利を有しないことを確認する。

二  被告(反訴原告)は、原告(反訴被告)が別紙目録記載の「スポツト溶接機へのナツト供給装置」を販売するについて、それが特許番号第七四〇二九〇号、同第八二一〇〇六号の各特許権を侵害する旨を、原告(反訴被告)の取引先その他の第三者に対し、陳述又は流布してはならない。

三  被告(反訴原告)の反訴請求を棄却する。

四  訴訟費用は、本訴、反訴を通じ、全部被告(反訴原告)の負担とする。

【判旨】

第一本訴請求について

一特許権に基づく差止請求権不存在確認請求

1 被告が本件第一、第二各特許権の特許権者であること、本件第一、第二各特許発明の題書に添附した明細書の特許請求の範囲の欄の記載がそれぞれ原告主張のとおりであること(ただし、本件第一特許発明の特許請求の範囲の欄の記載2中、「供給ナツト同じ断面形状」とあるは「供給ナツトと同じ断面形状」の、また「非磁性体製スピンドル摺動自在に」とあるは「非磁性体製スピンドルを摺動自在に」の、更に本件第二特許発明の特許請求の範囲の欄の記載中、「通孔端スピンドル6」とあるは「通孔端においてスピンドル6」のそれぞれ誤記と認める。)、原告が原告製品を製造販売していること並びに、原告製品の構造及び原告製品のナツト供給方法が別紙目録記載のとおりであることはいずれも当事者間に争いがなく、被告が、原告製品は本件第一、第二各特許発明の技術的範囲に属するとして争つていることは本件口頭弁論の全趣旨により明らかである。

2ないし5 <事実認定省略>

以上によれば、原告製品は本件第二特許発明の技術的範囲に属しない。

6 してみると、被告が本件第一、第二各特許権に基づいて、原告が原告製品を製造販売することを差止める権利を有しないことの確認を求める原告の請求は理由がある。

二不正競争防止法第一条第一項第六号に基づく請求

1 原告が、ナツト及びスポツト溶接機用ナツト供給装置の製造販売等を営む株式会社であり、被告が、長尾製作所の名称の下で個人営業として、スポツト溶接機用ナツト供給装置の製造販売を営んでいる者であることは当事者間に争いがない。

右事実によれば、原告は被告との関係で不正競争防止法第一条第一項第六号にいう、競争関係にあるものということができる。

2 <証拠>を総合すれば、次の事実を認めることができる。

(一) 原告は、昭和五一年一月初旬ころより、ダイハツ工業株式会社との間で原告製品の売買取引の交渉を行い、その際原告製品を試用のために、一時、同会社へ提供していたところ、同会社は、原告製品の試用の結果が良好であつたところから、原告製品を数台購入する方針を立て、その旨を原告に伝えたが、その後被告より、原告製品が被告の有する特許権に抵触する旨警告されたため、原告製品の購入を差し控え、また試用のため提供を受けていた原告製品を原告に返還したこと。

(二) 被告は、昭和五二年二月ころ、原告製品の買受先である東洋興産、三浦工業、呉鉄工所ほか数か所を訪問して原告製品が被告の有する特許権に抵触する趣旨の陳述をしたこと。

(三) 被告は、代理人をして、昭和五二年三月一一日付内容証明郵便をもつて、原告の取引先である株式会社末冨商会に対し、同社による原告製品の販売が本件第二特許権を侵害しているから、その販売を直ちに停止すべき旨の警告をなさしめたこと。

以上の事実が認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。

ところで、前記一においてすでに判断したところによれば、原告製品は本件第一、第二各特許発明の技術的範囲に属しないのであるから、被告が原告の取引先あるいは原告製品の販売先(買受先)に対してなした、原告製品が右各特許発明の技術的範囲に属することを前提とする趣旨の右警告あるいは陳述が真実に反していることは明らかであり、しかも右警告あるいは陳述が原告の営業上の信用を害するものであることも右警告あるいは陳述内容自体から明らかである。

したがつて、前記認定の(一)ないし(三)の行為は、不正競争防止法第一条第一項第六号にいう、他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を陳述する行為に該当する。しかして、前記認定(一)の事実及び本件口頭弁論の全趣旨によれば、原告は被告による右虚偽の事実の陳述行為により営業上の利益もまた害されたものと認められる。

3  そして、被告が、前記認定のとおり、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を陳述し、かつ、現在も原告製品が本件第一、第二各特許発明の技術的範囲に属すると主張して争つていること及び本件口頭弁論の全趣旨を総合すれば、被告は原告が原告製品を販売することが本件第一、第二各特許権を侵害する旨を、将来においても、陳述しあるいはこれを流布するおそれがあること及びこれによつて原告の営業上の利益が害されるおそれがあることが認められる。

4  してみると、原告の被告に対する不正競争防止法第一条第一項第六号に基づく請求は理由がある。

(秋吉稔弘 塚田渥 水野武)

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