東京地方裁判所 昭和52年(特わ)2131号 判決 1977年12月12日
本店所在地
東京都千代田区内神田一丁目一六番六号
中央電信株式会社
(右代表者代表取締役小松崎)
本籍
東京都世田谷区代田四丁目七三三番地
住居
東京都世田谷区代田四丁目四番五号
会社役員
小松崎
昭和九年三月二三日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官五十嵐紀男出席のうえ審理をつげ、次のとおり判決する。
主文
被告人中央電信株式会社を罰金一、二〇〇万円に被告人小松崎を懲役一年にそれぞれ処する。
被告人小松崎に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人中央電信株式会社(以下「被告会社」という。)は、肩書地(昭和五二年七月三一日以前は東京都千代田区西神田一丁目四番一三号)に本店を置き、各種電信機器及び電子機器の製造販売等を目的とする資本金二、〇〇〇万円(昭和五一年一〇月三〇日以前は一、〇〇〇万円)の株式会社であり、被告人小松崎(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金、有価証券を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和四八年一一月一から同四九年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五、九八六万八、三一七円あった(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年一二月三〇日、東京都千代田区神田錦町三丁目三番地所在の所轄神田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、七四二万二、九七七円でこれに対する法人税額が五、四〇万五、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五二年押第二〇三七号の符号四)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二、二三三万九、九〇〇円(税額の算定は別紙(三)の一計算書参照)と右申告税額との差額一、六九三万四、四〇〇円を免れ、
第二 昭和四九年一一月一日から同五〇年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が一億二、一七四万五、二四八円あった(別紙(二)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年一二月二九日、前記神田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が、三、七〇七万〇、二四四円でこれに対する法人税額が一、三三〇万九、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号五)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額四、七一六万三、五〇〇円(税額の算定は別紙(三)の二計算書参照)と右申告税額との差額三、三八五万四、二〇〇円を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
第一 判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、
一、被告人の当公判廷における供述及び検察官に対する供述調書(乙一)
一、田部井照一、小松崎徳治の検察官に対する各供述調書(甲二、三)
一、登記官作成の登記簿謄本(甲一)
第二 別紙(一)、(二)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち
(イ) 「売上高」(各<1>)につき、
一 大蔵事務官作成の売上除外調査書(甲五)
(ロ) 「期首商品たな卸高」、「当期仕入高」及び「期末商品たな卸高」(各<2><3><5>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外賃貸機器及び簿外在庫調査書(甲六)
一 小松崎徳治の大蔵事務官に対する昭和五一年一〇月二二日付質問てん末書(甲四)
一 押収にかかる「当期予想」と題する書面写一綴並びに昭和四八年一〇月期法人税確定申告書等一袋及び同修正申告書等一袋(昭和五二年押第二〇三七号の符号一乃至三)
(ハ) 「外注加工費」(各<4>)につき
一 大蔵事務官作成の支払手形および外注加工費調査書(甲七)並びに架空外注加工費調査書(甲九)
一 被告会社代表取締役作成の「中央通信工ード(株)に対する外注加工費の支払について」と題する上申書(甲八)
(ニ) 「給料手当」、「賞与引当金繰入」(別紙(二)<6><7>)及び「退職給与引当金繰入」(各<8>)につき、
一 大蔵事務官作成の架空給料手当調査書(甲一〇)
一 被告会社代表取締役作成の「修正申告書の提出について」と題する申述書(甲二七)
(ホ) 「交際接待費」(各<10>)及び「交際費損金不算入額」(別紙(一)<38>、同(二)<37>)につき、
一 大蔵事務官作成の交際接待費調査書二通(甲一一、一四)
一 被告会社代表取締役作成の「簿外資金の流出について」、「有価証券(ゴルフ会員券)の取得資金源泉及び決済状況について」並びに「取引先に対する工作資金について」と題する各申述首(甲一二、一三、一五)
(ヘ) 「諸手数料」(別紙(一)<20>、同(二)<21>)につき、
一 大蔵事務官作成の諸手数料調査書(甲一六)
(ト) 「諸税公課」(別紙(一)<24>、同(二)<25>)につき、
一 大蔵事務官作成の未納事業税調査書(甲一七)
(チ) 「受取利息」(別紙(一)<26>、同(二)<27>)につき、
一 大蔵事務官作成の受取利息調査書(甲一八)
(リ) 「雑収入」(別紙(一)<28>)につき、
一 大阪府東府税事務所作成の回答書(甲二〇)
(ヌ) 「支払利息割引料」(別紙(二)<30>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外借入金及び同支払利息調査書(甲二二)
(ル) 「価格変動準備金繰入」(別紙(一)<33>)及び「価格変動準備金積立超過」(別紙二の<35>)につき、
一 神田税務署長作成の証明書(甲二一)
(ヲ) 「為替差益」(別紙(一)<37>、同(二)<36>)につき、
一 前掲大蔵事務官作成の売上除外調査書(甲五)
第三 同右各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、
一 押収にかかる昭和四九年一〇月期、同五〇年一〇月期各法人税確定申告書(前同号の符号四、五)
(法令の適用)
法律に照すと、判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告会社については情状に鑑み同法第一五九条第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内において罰金一、二〇〇万円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重した刑期範囲内において懲役一年にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 半谷恭一)
別紙(一)
修正損益計算書
中央電信株式会社
自 昭和48年11月1日
至 昭和49年10月31日
別紙(二)
修正損益計算書
中央電信株式会社
自 昭和49年11月1日
至 昭和50年10月31日
別紙(三)の一
税額計算書
(三)の二