東京地方裁判所 昭和52年(特わ)300号 判決 1977年7月25日
裁判所書記官
福島近
本籍
和歌山県西牟婁郡串本町潮岬一、三八一番地の一
住居
東京都渋谷区千駄ケ谷三-三-二三
原宿ペアシテイ五〇一号
職業
会社役員
鈴木源吾
明治四〇年一〇月一二日生
右被告人に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官河内悠紀出席のうえ審理をとげ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年および罰金三、五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
ただし、この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、和歌山県西牟婁郡串本町串本一、八七四番地所在のアラフラ真珠株式会社の代表取締役であるほかインドネシア共和国アンボン市所在のマルク真珠開発株式会社の取締役副社長であるが、自己の所得税を免れようと企て、右海外会社から配分されたいわゆる販売超過利益等を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ
第一 昭和四八年分の実際総所得金額が一二五、九九二、二四二円(別紙(一)の修正損益計算書参照)あつたにもかかわらず、昭和四九年三月一三日、田辺市上屋敷町一一四番地所在の所轄田辺税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一六、三〇〇、〇〇〇円で、これに対する所得税額が二、三三五、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額七四、四四八、三〇〇円と右申告税額との差額七二、一一二、九〇〇円を免れ(税額の算定は別紙(四)の一計算書参照)
第二 昭和四九年分の実際総所得金額が六八、四五四、六二八円で、これに妻久恵の配当所得一、七五〇、〇〇〇円を合算すると、主たる所得者の総所得金額とみなされる金額は七〇、二〇四、六二八円(別紙(二)の修正損益計算書参照)であつたのにかかわらず、昭和五〇年三月一三日、前記田辺税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が二三、六六三、一〇〇円で、これに対する所得税額が三、二六〇、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の合算所得税額から妻久恵の資産所得にかかる税額を控除した正規の所得税額二九、六五一、二〇〇円と右申告税額との差額二六、三九〇、五〇〇円を免れ(税額の算定は別紙(四)の一計算書参照)
第三 昭和五〇年分の実際総所得金額が一四〇、三八九、一四一円でこれに妻久恵の配当所得四、二〇〇、〇〇〇円を合算すると主たる所得者の総所得金額とみなされる金額は一四四、五八九、一四一円(別紙(三)の修正損益計算書参照)であつたのにかかわらず、昭和五一年二月二五日、前記田辺税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が三〇、六九一、六四一円で、これに対する所得税額が四、九六三、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の合算所得税額から妻久恵の資産所得にかかる税額を控除した正規の所得税額七七、六一〇、三〇〇円と右申告税額との差額七二、六四六、九〇〇円を免れ(税額の算定は別紙(四)の二計算書参照)
たものである。
(証拠の標目)
判示冒頭の事実および全般にわたり
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する各供述調書(三通)
一、被告人の収税官史に対する各質問てん末書(八通)
一、松沢満の検察官に対する昭和五二年二月二日付供述調書
判示第一の事実につき
別紙(一)の修正損益計算書に掲げる科目別当期増減金額欄記載の数額について
<給与収入について>
一、新宮ガス株式会社代表者辻本寛三作成の昭和五一年九月二一日付証明書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
<販売超過利益配分金・技術員派遣提供報奨について>
一、収税官史佐多教右作成の回答書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
<為替差損について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
<現地費用について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
一、収税官史高林啓作成の昭和五一年一一月一八日付質問てん末書
<雑益について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、収税官史高林啓作成の昭和五一年一一月一八日付質問てん末書
<資金提供謝礼>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、鈴木森三の収税官史に対する昭和五一年一一月二九日付質問てん末書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月四日付検査てん末書
<利息保証料について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月四日付検査てん末書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月五日付検査てん末書
判示事実のうち別紙(一)修正損益計算書に掲げた公表金額及び過少申告の事実について
一、大蔵事務官吉田和男作成の被告人の昭和四八年分の所得税確定申告書にかかる証明書
判示第二の事実につき
別紙(二)の修正損益計算書に掲げる科目別当期増減金額欄記載の数額について
<賃貸収入・権利金について>
一、鈴木久恵の収税官史に対する昭和五一年九月二〇日付質問てん末書
<固定資産税について>
一、高崎一彦作成の昭和五一年一一月五日付「税の納付状況照会に対する回答」書
<減価償却費について>
一、橋爪信治の昭和五一年一一月二六日付上申書
<配当収入について>
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月五日付検査てん末書
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
<給与収入について>
一、新宮ガス株式会社の昭和五一年九月二一日付証明書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月五日付検査てん末書
<販売超過利益配分金について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月五日付検査てん末書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
<技術員派遣提供報奨について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
<立替金謝礼について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、収税官史高林啓作成の昭和五一年一一月一八日付検査てん末書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月五日付検査てん末書
<為替差益について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
<現地費用について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
一、収税官史高林啓作成の昭和五一年一一月一八日付検査てん末書
<雑損について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
<資金提供謝礼について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、鈴木森三の収税官史に対する昭和五一年一一月二九日付質問てん末書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月四日付検査てん末書
<利息保証料について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月四日付検査てん末書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月五日付検査てん末書
<妻の配当所得について>
一、検察事務官一色潔作成の昭和五二年六月二三日付捜査報告書
判示事実のうち別紙(二)修正損益計算書に掲げた公表金額及び過少申告の事実について
一、大蔵事務官吉田和男作成の被告人の昭和四九年分の所得税確定申告書にかかる証明書
判示第三の事実につき
別紙(三)の修正損益計算書に掲げる科目別当期増減金額欄記載の数額について
<賃貸収入について>
一、鈴木久恵の収税官史に対する昭和五一年九月二〇日付質問てん末書
一、鈴木森三の収税官史に対する昭和五一年一一月一〇日付質問てん末書
<固定資産税について>
一、高崎一彦の昭和五一年一一月五日付「税の納付状況照会に対する回答」書
<登記費用について>
一、宇佐美勇作成の昭和五一年九月二〇日付申述書
<減価償却費について>
一、橋爪信治作成の昭和五一年一一月二六日付上申書
一、宇佐美勇作成の昭和五一年九月二〇日付申述書
<利子収入について>
一、棒葉博保作成の昭和五一年一〇月二七日付証明書
<配当収入について>
一、収税官史高林啓作成の昭和五一年一一月一八日付検査てん末書
<給与収入について>
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月五日付検査てん末書
一、収税官史高林啓作成の昭和五一年一一月一八日付検査てん末書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
<販売超過利益配分金について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
<技術員派遣提供報奨について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
<立替金謝礼について>
一、収税官佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月五日付検査てん末書
一、収税官史高林啓作成の昭和五一年一一月一八日付検査てん末書
<為替差益について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
<現地費用について>
一、収税官史佐多教右の昭和五二年四月二一日付回答書
一、松沢満の収税官史に対する昭和五一年一一月二七日付質問てん末書
一、収税官史高林啓作成の昭和五一年一一月一八日付検査てん末書
<資金提供謝礼について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、鈴木森三の収税官史に対する昭和五一年一一月二九日付質問てん末書
<利息保証料について>
一、収税官史佐多教右作成の昭和五二年四月二一日付回答書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月四日付検査てん末書
一、収税官史中原公美作成の昭和五一年一一月五日付検査てん末書
<妻の配当所得について>
一、検察事務官一色潔作成の昭和五二年六月二三日付捜査報告書
判示事実のうち過少申告書提出の事実及び公表金額につき
一、大蔵事務官吉田和男作成の被告人の昭和五〇年分の所得税確定申告書にかかる証明書(給与所得控除の計算について)
別紙(一)、(二)、(三)の修正損益計算書に掲げた給与所得控除にかかる正当金額、当期増減金額の計算は別紙(五)の「給与所得控除計算書」のとおりである。
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するが、いずれの罪についても、その免れた所得税の額が五〇〇万円をこえるので、情状により同条二項を適用し、所定刑中懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、被告人を、懲役刑については同法四七条本文、一〇条によりもつとも犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一年に、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で罰金三、五〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、右懲役刑については、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 松沢智)
別紙(一)
修正損益計算書
鈴木源吾
自 昭和48年1月1日
至 昭和48年12月31日
<省略>
別紙(二)
修正損益計算書
鈴木源吾
自 昭和49年1月1日
至 昭和49年12月31日
<省略>
<省略>
別紙(三)
修正損益計算書
鈴木源吾
自 昭和50年1月1日
至 昭和50年12月31日
<省略>
<省略>
別紙(四)の1
課税総所得金額及びほ脱税額計算書
鈴木源吾
昭和48年分
<省略>
昭和49年分
<省略>
別紙(四)の2
昭和50年分
<省略>
別紙(五)
給与所得控除計算書
(1) 昭和四八年分
昭和四八年改正法(昭和四八年法律第八号)第七条第二項の規定による改正法附則別表第一により、給与等の金額六、一五二、五〇〇円以上は七一万円が給与所得控除となる。従つて給与所得控除には消長はない。
(2) 昭和四九年分
昭和四九年改正法(昭和四九年法律第十五号)第三条第一項の規定による改正法附則別表第五の附表により、給与等の金額が六〇、〇〇〇、〇〇〇円以上の場合は給与所得控除後の給与等の金額は、給与等の金額に九三%を乗じて算出した金額から九六万円を控除した金額である。そのため、本件の場合は
29,570,627円×93%-960,000円=26,540,683円
(同附表備考により、円未満の端数は切捨)
となり、従つて給与所得控除額は
29,570,627-26,540,683=3,029,944
正当額 申告額 当期増減金額
3,029,944-2,756,900=273,044
となる。
(3) 昭和五〇年分
昭和五〇年改正法(昭和五〇年法律第一三号)第五条第二項による改正法別表第七の附表により、給与等の金額が六〇、〇〇〇、〇〇〇円以上の場合は給与所得控除後の給与等の金額は、給与等の金額に九〇%を乗じて算出した金額から一〇五万円を控除した金額である。そのため本件の場合は
50,930,434円×90%-1,050,000円=44,787,390円
(同附表備考により、円未満の端数は切捨)
となり、従つて給与所得控除額は
50,930,434-44,787,390=6,143,044
正当額 申告額 当期増減金額
6,143,044-4,310,183=1,832,861
となる。